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【コラム】「さらば米国」こそが超富裕層の生き残り策−M・ルイス
12月5日(ブルームバーグ):宛先:上位1%層用件:革命との戦いについて提言者:戦略委員会
まずは祝杯をあげよう。
公共施設である公園に陣取っていた暴徒は排除された。一部の変人奇人や犯罪者がその代表だと見なされるようになったわれわれの敵は、自分たちが何をやっているかが分かっていないことを露呈した。達成可能な単一の目標に照準を定めることに失敗したからだ。
数週間前の初回の報告書でわれわれは、ウォール街の大銀行が大衆による金融ボイコットに対して脆弱(ぜいじゃく)だという懸念を表明した。銀行はたばこメーカーやアパルトヘイト時代の南アフリカ共和国籍の多国籍企業よりもさらに脆弱だと思われた。ボイコットは銀行取り付け騒ぎへの恐怖を呼び起こす公算が大きく、その恐怖は事実を作り出す可能性がある。
しかし、下位99%が考えたウォール街への攻撃は、ニューヨーク証券取引所を取り囲んで大声で叫ぶことだった。
われわれは1つの戦いに勝ったが、この戦争は終わりには程遠い。
多勢に無勢
われわれの主任クオンツ(定量的データを扱う金融アナリスト)が言うように、「われわれの方がどれほど優れていようと、われわれ1人に対して敵は常に99人」ということだ。さらに気になるのは、主任が最近行った世論調査によると、われわれの仲間の多くは自分がそうであることに気付いていない。上位1%のうちの半分が、自分を下位99%の仲間だと思っている。自分が何者であるか、階級闘争のどちらの側に立っているかも知らずに、年34万4000ドル(約2700万円)以上を稼げる人間がいるということは、1%クラブとしてはメンバー資格を本物の金持ちのみに限定すべきだということだろう。この点については次回の報告で論じる。今は目先の問題に集中しよう。彼らがわれわれの金に手を出すのをどうやって防ぐかだ。
われわれは2つの差し迫った脅威を特定した。
第一は野心的な若者とカネの関係の変化だ。下位99%組が現在、リーダーシップを欠いているのには理由がある。大勢のダメ人間を組織できる能力のある人間は全て、ウォール街で働いているからだ。大半はモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックス・グループのアナリストプログラムに携わっている。しかしそのような職はもう存在しない。少なくとも、人生の意味を考えることから一つの世代全体を遠ざけるのに十分なほどの数はない。
エリートの蜂起
ウォール街にいるわれわれの味方は傷を負い、力をそがれ、米国の若者たちから理想主義を取り除くという仕事を果たせない。しかし、彼ら以外に誰にこの仕事ができるだろう。委員会としては、全てのエリート大学が蜂起の温床となることを覚悟している。
第2の脅威は、下位99%が自分たちの経済生活を理解する時に抱く不安定なイメージだ。ちなみに、下位99%はイメージで物を考えることをわれわれは発見した。
長年にわたり、相対的に生存能力の低いグループは成長と潤沢を想起させる言葉によって自分たちを慰めてきた。上げ潮やパイの拡大、トリクルダウン理論(富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透=トリクルダウン=する)などだ。われわれのポケットにある1ドルを彼らは恐らく、自分たちの数セントになるとの期待を持って眺めていただろう。ところが彼らはこのイメージを心から追い出し、食料が徐々に減っていく救命ボートという新しいイメージに置き換えてしまったようなのだ。彼らは今や、われわれのポケットにある1ドルは彼らのポケットから減った1ドルだと考えている。命の危険を感じている下位99%が、ますます必死になり厄介な存在になっていくことは必至だ。彼らの個人的振る舞いに対する上位1%組からの苦情は既に、フランス革命後の最高水準になっている。
時限爆弾
戦略委員会はこの展開を、止めることのできない歴史の流れだと考えている。下位99%は無効化処理が不可能な時限爆弾だ。例えば宝くじの大当たりなどによって時々彼らの気を散らさせることが可能だろう。だからわれわれはヘッジファンド界に対して当たりくじを買ってしまうのをやめるよう通達を回した。下位99%はまた、例えば移民や連邦政府などわれわれ以外に怒りを向けることもあり得る。われわれはこれを奨励することができる。あるいは、彼らを怖がらせて一時的に従わせることすら可能かもしれない。われわれは護身用の唐辛子スプレーをロング(買い持ち)にしている。
しかし最終的には、彼らがよりうまく組織され、われわれの金融状況をよりよく認識するようになるのは時間の問題だと思われる。これを妨げるためのわれわれの取り組みは時間稼ぎにすぎず、遅かれ早かれ彼らはわれわれを攻撃し、その効果は今よりもはるかに大きくなるだろう。
結論
これらを考慮し、委員会は次の結論に達した。われわれは米国社会を去らなければならない。また、それを彼らに知らしめなければならない。あまりにも長い間、われわれは彼らとわれわれが一体だと考えてきた。同じ法律と同じ儀式に縛られ、同じ懸念を共有していると思っていた。富める者と貧しい者のこのような社会的関係は不自然で持続不可能なばかりでなく、恥ずべきことだ。われわれのうちの誰が、ルイ14世やロシアの皇帝、あるいはクロイソス(紀元前6世紀古代小アジアにあった国リディアの王。巨万の富を誇っていたが、ペルシャ帝国のキュロス王に破れ捕らわれの身となる)の前で頭を上げていられたというのか。
現代のギリシャは、当委員会の見解では今日の世界で最高の例になる。一般のギリシャ人は同国の金持ちをめったに煩わさない。その理由は単純に、一般人は金持ちがどこにいるか知らないということだ。ギリシャの下位99%にとって、同国の上位1%は透明人間のようなものだ。
仮初めの関係
税金も払わず住所もなく、同じギリシャ国民と何の関係も持たない。大衆は金持ちに何も期待しないので、金持ちが大衆の期待を裏切ることはなく、時には期待を上回ることすらある。この結果、ギリシャの一般人がギリシャの金持ちについて心配するのは、金持ちが時々はギリシャを訪れるのをやめてしまうことくらいだ。
われわれも生き延びるためには、このような関係を下位99%との間に築くべきだ。われわれは彼らばかりでなく自分たちに対しても、われわれと彼らの間のかかわりは仮初めのもので、ほとんど事故のようなものであり、従って彼らはわれわれに対して何も要求する権利がないという認識を育てなければならない。
小さな第一歩として委員会は、大衆に対して彼らと何のかかわりも持ちたくないのだという気持ちとそれが可能であることを最も有効に示した上位1%メンバーに授与する年間の賞を創設することを提案する。われわれは勇敢にもカリフォルニア州の税金から逃げ出したネバダ州インクラインビレッジの住民に敬意を表してこの賞をインクライン賞と命名する。第1回の受賞者としては、インターネット通販最大手、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)を推薦する。
同氏が持っている宇宙開発会社の宇宙ロケットは大気圏外に達する前に爆発したかもしれないが、爆発前に少なくとも、われわれが伝えたいと望んでいるメッセージを地球に送った。
われわれのメッセージは「さらば!」だ。(マイケル・ルイス)
(マイケル・ルイス氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストで作家です。最新作は「Boomerang: Travels in the New ThirdWorld」。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
更新日時: 2011/12/05 10:56 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LVMP2A0D9L3601.html
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