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危ない日本国債を40兆円抱え込む生保は大丈夫なのか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/28689
2011年12月06日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
「ギリシャ、イタリア、スペインに続き、フランス国債の格下げが行われれば、欧州は壊滅的な打撃を受ける。しかも、アメリカでも財政赤字解消の交渉が議会で決裂したため、米国債の格下げもありえる。
欧州とアメリカで同時に金融危機が起これば、海外でも資産を運用している生命保険会社の経営が苦しくなるのは確実です」(国際ジャーナリスト・田中宇氏)
ギリシャ危機に端を発したユーロ危機は、イタリア、フランスといったユーロ圏の強国にもソブリンリスク(国の信用に対するリスク)をもたらしている。さらにこれがアメリカにも飛び火するとなれば、こうした危ない国の国債を保有している日本の銀行や生命保険会社は大丈夫なのか、気になる人は多いだろう。
すでに対策を取っている第一生命では今年7月末時点で約3000億円保有していたPIIGS国債を半分以下にまで減らした。
「外国公社債について、今年3月末と9月末を比較すると、全体で含み損益は改善しています」(第一生命広報部)
ただ、残念ながらPIIGS国債を売ったところで、生保各社が抱える不安要素はまったくといっていいほど解消できない。生保各社は銀行や損保各社とならび、日本国債を大量に保有している。政府債務残高(つまり国債)がGDP比で約212%という借金大国にもかかわらず、日本国債が安定していると言われてきたのは、主に国内の金融機関が持っているからだとされてきた。
しかし、本誌先週号でも指摘したように、それは幻想に過ぎない。フジマキ・ジャパン代表の藤巻健史氏が語る。
「日本国債の95%が国内で消化されているから、国債の暴落はないと言う人は、実態を知らない人です。太平洋戦争のときに発行された国債は100%日本人が買っていたはずですが、ハイパーインフレで紙クズ同然になりました。それにいまのような状況で、どこか一社でも『日本国債は危ないかも』と言って売りに出れば、一気に売り崩しが始まります。さらに、国債のマーケットは、値段は今日決めて、決済は将来という先物債のほうが大きい。つまり、いまは日本国債を持っていない海外のヘッジファンドでも、先物債ならいくらでも売れる。一度、売り崩せると見られたら、怒濤のように日本国債が売られるでしょう」
では、実際に各生保はどれくらい日本国債に依存しているのか。本誌が大手生保4社に聞いた、各社のPIIGS国債と日本国債の額を比較すれば一目瞭然だ(前者がPIIGS国債、後者が日本国債の額)。
■日本生命 3000億円台前半、約13兆円
■第一生命 約700億円、約11・1兆円
■住友生命 保有せず、約7兆円
■明治安田生命 約600億円、約11・6兆円
生保の資産運用先
http://gendai.ismedia.jp/mwimgs/e/f/300/img_ef6873f2f9ac17682c2d759a0b982f4e78451.jpg
大手4社だけで実に40兆円以上の日本国債を抱え込んでいるのである。この額は、日本政府が毎年発行する新規国債の額に等しい。
生保全体でも運用資産の実に4割までが、日本国債で運用されている。しかも、こちらはPIIGS国債と違い、売られるどころか、ますます依存度が高まっているのである(上の図参照)。
その理由はいたって簡単。昨年から欧州危機が囁かれ国債や株式が下落、日本の株式市場も東日本大震災の影響で下落傾向だ。生命保険という長期の保障を顧客に約束する商品の性質上、リスクは極力抑えなければならない。リーマン・ショックで世界的に株価が下落し、生保業界が大ダメージを負った反省もある。そこで運用するなら、とにもかくにも安定している日本国債で、というわけだ。
■契約者保護もままならない
日本国債の危うさに気付き始めたメガバンクは1年物、3年物といった短期国債にシフトしつつある。対照的に、生保は日本国債のなかでも長期国債を中心に運用している。これも長期安定を望むからである。
「日本国債を、安定的にインカム収益の得られる『円金利資産』の中核資産と位置づけております」(日本生命)
「リスク性資産から超長期国債を中心として確定利付き資産へのシフトを進めている。また、生命保険の商品の性質上、長期の運用をする必要があるため、基本的に短期の国債にシフトさせるという傾向はない」(第一生命)
確かに日本がずっと安泰なら、国債ほど安全なものはない。だが、20年や30年といったスパンで、日本が今後もなんとかやっていけると考えるのは楽観的に過ぎないだろうか。
元住友生命副社長で日本個人投資家協会副理事長の木村輝久氏は「生保が大量に抱える日本国債が問題視される時期は必ず来る」と前置きして、次のように解説する。
「高齢化が進む日本では個人預金の額が今後減っていくでしょう。その点、大手銀行は個人預金を元手に日本国債を購入しているのでバランスが取れるし、いざとなれば国債を手放せる。対照的に、高齢化社会は生保にとっては保険金を支払うウェートが増すわけで、簡単に国債を手放すわけにはいきません。
銀行などが国債を手放したとき、外国の金融機関が(投機目的でなく)国債を買ってくれるならいいのですが、年間GDPの2倍の借金を抱える国の国債など買ってくれません。そうなれば国債暴落です。大手生命保険各社は、欧州のソブリンリスクよりも、日本国債を大量に持っているリスクを深刻に受け止めるべきでしょう」
ちなみに、生保が破綻したら生命保険契約者保護機構によって、契約そのものは継続されることになっている。受取額が減るなどの不利は覚悟しなければならないが、それでも支払われればまだマシ。同機構は生保各社の負担金によって運営され、過去には東邦生命が破綻しただけで赤字に陥り、昨年度末にようやく初めて1500万円の剰余金が出たという脆弱な組織だ。大手が潰れるようなことになれば、機構そのものの存続が危うい。
そうなれば、国債同様、保険証書が紙クズになってしまう可能性も大いにあるのである。
本誌が再三取り上げているように、国の年金はもはやアテにならない。そのうえ、自分や家族を守るための生命保険までパーになれば、丸裸も同然だ。こうした不都合な事実には目をつぶり、日本がずっと安泰でありますようにと祈るのか。少しでもリスクを下げるため、保険会社を分散したり、終身保険などの長期契約を見直すのか。決断のために残された時間は、そう多くはない。
「週刊現代」2011年12月10日号より
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