http://www.asyura2.com/11/hasan74/msg/352.html
Tweet |
http://jp.wsj.com/US/Economy/node_354117
****デジタル革命とグローバル化で消える中間職
景気後退の正式終了宣言から、はや1年半がたった。
11月30日には、ニューヨーク5番街にほど近いロックフェラーセンターのクリスマスツリーが点灯し、ホリデーシーズンの幕開けである。
小売業界が年最大の黒字になる11月25日のブラックフライデー以来、タイムズスクエアの大型アパレルチェーンの店内には、「50%オフ」「大セール」の文字が躍る。年末商戦の滑り出しが好調とあって、平日でも、どの店もまずまずの入りだ。
だが、所得が伸び悩むなか、金融危機時の負債削減志向で5%台に上がった貯蓄率が再び下降に転じていることやクレジットカードの使用額上昇などを考えると、来年以降、個人消費の下ぶれリスクがあるという指摘も多い。
米給与計算サービス関連会社、オートマチック・データ・プロセシング(ADP)の最新調査によれば、11月の米民間部門雇用者数は、市場の予想を大きく上回り、前月比で20万6000人増を記録した。わずかながら雇用が回復している兆しはみえるが、全米の失業者1400万人の約43%を占める長期失業者(600万人)や中流層の収入を楽観視するのは早計だろ
民主党は、高失業率を「需要不足」のせいとし、金融・財政政策によるテコ入れを主張。共和党は、2014年から始動予定の医療保険制度改革や誕生1年の金融規制改革法による「不透明性」が、企業に採用を控えさせていると言う。
だが、9%台(前後)で高止まりする失業率をみると、どちらも説得力に欠ける。米労働市場が10年以上前から問題を抱えていたことは、11月28日付本紙コラムも指摘するところだ。要は、90年代初頭から米経済の「何か」が変わったことで、十分な雇用が生まれなくなったのである。
2000年に67%を超えていた労働参加率は、07年12月の景気後退入り時点で62.7%にまで落ち込んでおり、今も64%にとどまっている。景気が回復しても、高度スキルや専門性を持たない長期失業者の多くが労働市場からはじき出されたままだという向きも多い。
その最大の原因が、中流ホワイトカラー職の減少だ。10月に発売された人気の電子書籍『レース・アゲンスト・マシーン(機械との闘い)』(エリック・ブリニョルフソン・マサチューセッツ工科大学経営大学院教授、アンドリュー・マッカフィー氏の共著)によれば、問題は、大不況でも大停滞でもなく、経済の「大構造改革」が始まったことにあるという。
同書は、加速する技術革新が仕事を奪い、第二次世界大戦後の高度経済成長期に拡大した中流ホワイトカラー層の仕事が消えていくと分析。情報化時代にあっては、変化に追いつき、自律的に高度スキルを身につける力のない人たちが失業に追い込まれると、警鐘を鳴らす。
*****加速する労働ダンピングと格差拡大
『貧困から繁栄へ』の著者であるアーノルド・クリング氏によれば、米国では、1910年に約5%のシェアを占めていた中流層の「事務職、および事務関連の仕事」は、産業化時代に急増し、50年代には、労働市場の根幹を成すまでになった。だが、80年の19%強を境に減り始め、ITバブル真っ盛りの2000年には、約17%にまで低下する。その代わりに増えたのが、技術系や事務系の専門職など、高度スキルを要する職種である。
★84年、アップルが鳴り物入りでマッキントッシュ第1号を発売するころには、コンピューターや次世代通信の発達が、電話会社や銀行など、ほぼすべての業界に影響を与え始めていた。そして、89年、東西冷戦に終止符が打たれ、共産圏が市場に参入。資本家が世界の労働者を手中に収めたことで、先進国は、グローバリゼーションによる労働ダンピングと格差拡大へと突き進む。「中流層・冬の時代」の幕開けである。
米国では、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した1999年を境に、安定したブルーカラーの仕事が急減し始めた。★グローバリゼーションで米国が手にした富の3分の2が、仕事にあぶれ、貧困に陥る人たちを支えるためのフードスタンプ(連邦政府による低所得者層向けの食料配給カード)など、セーフティーネット・コストとして消えるという試算も出ている。
今や米国では、大手出版社が、制作や事務などの部門をインドや国内の下請けにアウトソースすることなど日常茶飯事だ。そして、一般管理職や事務職の中流層が、また一人、また一人と仕事を失う。雇用喪失が「生産性の上昇」を意味する以上、★グローバリゼーションやデジタル革命で消えた中流層の仕事は、景気が回復しても戻らない。
*****雇用成長もハイ・アンド・ローの二極化
実際、米国で、景気回復が始まってから生まれた雇用の大半が、ファストフードの食品加工やレジ係、小売店の販売員など、時給が約13.5ドル以下の低賃金労働である。一方、不況で消えた仕事の6割(390万人)は中流層レベルのものだ。筆者の周りでも、2〜4年にわたって仕事が見つからない元中間管理職の長期失業者が目立つ。
ワシントンDCのシンクタンク、米国進歩センターが昨春発表した報告書「米労働市場における雇用機会の二極化」によると、ハイテク化やグローバリゼーション、労組の弱体化などにより、★先進国では、ほぼ間違いなく同様の現象が起こっている。93〜06年にかけて、欧州連合(EU)16カ国を調査したところ、どの国でも、中流層の仕事が低下したという。
その一方で、低賃金労働が増加した国は11カ国に上り、高給の仕事も、13カ国で増加がみられた。★つまり、「中間レベルのスキルを必要とする仕事」を犠牲にすることで、雇用の成長が成り立っているわけだ。消費でも仕事でも、ハイ・アンド・ロー化が進んでいることが分かる。
デジタル革命とグローバリゼーションにより、住宅ローンや消費者ローンなどの引き受け業者は、個人の「信用度」を一瞬にしてはじき出すネット企業に取って代わられ、データ入力の仕事は、海の向こうの「適度に学歴が高い」安価な人件費の働き手へと消えていった。経済が上向いても、生み出される雇用の大半は、高度スキルが必要なハイエンドの仕事か低賃金労働である。
前出の報告書によると、中流層の雇用拡大の目安となる営業職は、79〜89年にかけて54%増を記録した。だが、次の10年間では14%増と、成長率が急減。99〜07年には、わずか4%の増加にとどまった。
本コラムを書きながら、ふと頭によぎったのが、米作家アーサー・ミラーの戯曲『セールスマンの死』(1949)である。人間的魅力を武器に営業マンとして成功するも、産業化時代の荒波にもまれてリストラされ、住宅ローンを保険金で相殺するために自ら死を選ぶベテラン営業マンの悲哀を描いた名作だ。
そのクライマックスで、最後までプライドを捨てない父親に向かって、息子がこう言い放つ。
★「親父も俺も、しょせんは一山いくらの人間なんだ!」
米国は、時代を超えて、同じ悲劇を繰り返すのだろうか――。
(肥田美佐子)
東京生まれ。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、国際労働機関(ITC-ILO)の報道機関で第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘される。
***********************
■米雇用統計:識者はこうみる
http://jp.reuters.com/article/jpeconomy/idJPTJE7B100A20111202?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0
[ワシントン2日ロイター] 米労働省が発表した11月の雇用統計は、失業率が8.6%と、前月の9%から改善し、ほぼ2年半ぶりの低水準となった。市場予想は9.0%だった。非農業部門雇用者数は12万増となり、エコノミスト予想とほぼ一致した。
雇用統計に関する識者の見方は以下の通り。
●雇用の質さほど良くない、大半が臨時雇用の可能性
雇用者数は概ね予想と一致する内容だった。伸びが目立ったのは人材派遣だった。そのため、雇用の質という点では、望ましいとされるほど良好ではないと言える。多くの雇用が臨時雇用とみられる。時間当たり賃金が低下しているのもそのためだ。(ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのシニアエコノミスト、マーク・ビットナー氏)
●労働力人口減少で失業率低下
失業率が低下した背景には、労働力人口の大幅な減少が一因として挙げられる。労働力人口の減少は通常、失業中の人が職探しをあきらめることを示し、失業率の低下要因となる。 来月には失業率がまた悪化する可能性もある。野村証券(ニューヨーク)の首席エコノミスト、デービッド・レスラー氏)〜抜粋。
.
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。