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緊迫度増すユーロ=ユーロにとって重要な10日間
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2011年12月02日(金) 真壁 昭夫「通貨とファイナンスで読む世界経済」:現代ビジネス
11月30日、日銀、FRB(米国連邦準備理事会)、ECB(欧州中央銀行)、カナダ中銀、英中央銀行、スイス国立銀行が、金融市場への流動性注入を一段と強化することを目的に協調策を実施することを合意した。今回の措置は、ユーロ圏の信用不安問題の深刻化に伴い、同地域の金融機関の資金繰りを支援することを狙ったものだ。
具体的には、世界の主要中央銀行6者がドル・スワップ協定によって多額のドル資金を調達し、それを当該国の金融機関に貸し付けることになる。そうした措置によって、年末にかけてのドル資金調達に問題を抱えた金融機関を助けることが期待できる。金融市場は今回の措置を歓迎し、世界の主要株式市場が一時、大幅に値を上げるなどの反応を示している。
今回の主要中央銀行の措置は、ある意味では、今まで金融市場が求めていた政策を実現したといえるだろう。例年、クリスマス休暇によって欧米の金融機関の業務活動が低下する年末にかけて、銀行間取引の資金需給、特にドル資金の需給がタイトになる。
今年は、それに加えてユーロ圏の信用不安問題の拡大によって、ユーロ圏を中心に世界の金融機関がドル資金を調達しにくい状況になりつつあった。そうした状況を放置すると、金融市場で一部の金融機関の経営悪化などの問題が顕在化することが懸念された。
■今回の措置は金融当局の緊急対応策
そうした懸念を押えるために、世界の主要中央銀行が足並みをそろえて、緊急対応策の一つとしてドル資金の供給強化を決めたのである。今回の措置には主に二つの効果が期待できる。一つは、実際にドル資金の供給強化がなされるため、各金融機関の資金繰りを助ける効果だ。
そうしてもう一つは、今回、世界的な協調体制が組まれたことによって、「今後、ユーロ圏内でも主要国の協調体制ができるだろう」という期待感が醸成されたことだ。金融市場は初動動作として醸成された期待を歓迎し、株式市場が大幅に上昇するなどの反応を示している。
一方、冷静に考えると、ユーロ圏の信用不安の問題は、元々、ギリシャやイタリアなどの財政状況の不安が問題の根源になっている。それを払しょくできない間は、本当の意味で問題を解決したことにはならない。その為、問題解決は、当該国の財政赤字の削減を実現できるか否かにかかっている。主要中銀が緊急措置としてドル資金の供給強化を行ったとしても、それは問題の本質的な解決にはならないのである。
■12月9日のユーロ首脳会議が一つの目途
問題は、12月9日に開催されるユーロ圏首脳会議までに、信用問題の根本を解決するための協調体制が構築できるかどうかだ。ユーロ圏の信用不安問題がここまで拡大すると、既にギリシャやイタリアなど個別国が対応できる範囲を越えている。その為、ユーロ圏諸国が協調体制を組んで、問題解決に向けた具体的な政策を考えなければならない。
つまり、対立が予想されるドイツとフランスなどが歩み寄って、協調して信用不安問題に対応することが必要不可欠なのである。今までのユーロ首脳会議の様に両者の意見調整ができず、しっかりした解決策を打ち出すことができないと、ユーロ圏の問題は一段と拡大する可能性が高い。そうなると、最悪のケースではユーロ圏の解体や再編成の可能性も出てくる。
それは、世界の金融市場を不安定化させ、実体経済を大きく落ちこませることにもなりかねない。それは、世界経済にとって大きなマイナス要因になる。リーマンショックを超える痛手になることも考えられる。さらには1930年代の大恐慌の再発を心配する声さえある。ユーロ圏の政治は、何としてでも、そうした状況を避けなければならない。
真壁 昭夫(まかべ・あきお)
1953年神奈川県生まれ。76年一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行入行。ロンドン大大学院修了。メリルリンチ社ニューヨーク本社出向、みずほ総研主席研究員などを経て、05年信州大学経済学部教授。07年行動経済学会常任理事、10年FP協会評議委員などを務める。 主要著書等:「日本がギリシャになる日」(ビジネス社)、「行動経済学入門」(ダイヤモンド社)、「実戦 行動ファイナンス入門」(アスキー新書)、「下流にならない生き方」(講談社)、「ファイナンス理論の新展開」(共著、日本評論社)、「行動ファイナンスの実践」(監訳、ダイヤモンド社)、「国債と金利をめぐる300年史-英国・米国・日本の国債管理政策」(東洋経済新報社) 、「はじめての金融工学」(講談社現代新書)、「日本テクニカル分析大全」(共著、日本経済新聞社)、「リスクマネーチェンジ」(共著、東洋経済新報社)、「最強のファイナンス理論-心理学が解くマーケットの謎」(講談社)、「行動ファイナンス」(監訳、ダイヤモンド社)
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