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病院と介護施設の充実が日本経済を浮揚させる 実需のある分野にカネとヒトを投入することが経済の基本  日経BP
http://www.asyura2.com/11/hasan74/msg/235.html
投稿者 ダイナモ 日時 2011 年 11 月 20 日 12:33:22: mY9T/8MdR98ug
 

成熟した日本社会

 日本はこの15年間ほとんど成長できずにきた。米英独仏といった日本と並ぶ先進国の中で、日本ただ一国だけが成長できないでいるのだ。

 何も手をこまねいていたわけではない。15年間で230兆円にも上る財政政策を実施したし、ゼロ金利政策や量的緩和という金融政策もとった。できるだけのことはやった。しかし、これまでに実行した政策はすべて効果に乏しく、結局約1000兆円という国債残高と、金利操作をしても流動性コントロールの利かない“流動性の罠”状態だけが残った。

 一方で、日本の人口減少と高齢化は2010年から急速に加速化していく。2010年から2020年までの10年間で総人口が444万人減る一方、65才以上の高齢者は650万人増える。2030年までの20年間では総人口は1200万人減少し、高齢者は730万人増加する。

 財政政策はほとんど兵糧が尽き、金融政策も効力を失っている現状を考えると、万策尽きた状態に見える。この後は急速に増える高齢者に対する年金支出と医療・介護負担の重さに耐え切れず、国民経済はさらに活力を失い、沈んでいくばかりという暗い将来像が頭をよぎる。

 いや、そんなことはない、と私は考える。


今の状態ではカンフル剤は効かない

 これまであれこれとやってはきたものの効果がなかったのは、それらの政策がどれも日本社会が抱える問題の核心に迫るものではなかったからである。言うなれば、これまでの様々な政策は、高齢化(成熟化)して基礎体力が落ちている体にカンフル剤を打つ類いのものばかりであった。

 高齢化した体は基礎体力自体が落ちているためにカンフル剤は効かない。だが、別の処方によって復活させることは十分可能であると私は考える。以下、カンフル剤がなぜ効かなかったのか、そして日本経済を回復させるためにはどのような政策が適しているのかについて説明していこう。

 これまでの経済対策は、乗数効果が1.0程度しかないと言われる公共事業を積み増したり、雇用調整助成金を配ってリストラを抑制したりと、旧来の産業構造を守り従来のやり方を繰り返すばかりの対策だった。例えば、日本には現在99もの空港があるが、そのうちの少なからぬ地方空港は1日数便の就航しかない。しかもほとんどの便はガラガラで空港施設の維持費と相まって赤字が積み上がっていくばかりである。この例に見るように、需要の無いところで強引に公共事業を展開しても、経済成長は見込めない。そればかりか、財政赤字を拡大するだけでかえって経済の重荷になってしまう。


需要の無いところでの経済政策は無理スジ

 これまで、「経済政策と言えば公共事業、そして公共事業と言えばインフラ整備」という70年代までのやり方を延々やり続けて来たことが、90年代以降の日本社会においては根本的にスジ悪だったのである。

 補足しておくと、実体経済への刺激策がスジ悪の分野でしか行われなかったからこそ、金融政策も利かなくなってしまったのである。金融は実体経済の動きをスムーズにするのが本来の機能である。確かな潜在需要が存在するところに、公共事業を行って潜在需要が顕在化するきっかけを与えれば、経済活動は活発に回り始める。こうしたケースでは経済の回転が上昇するにつれて資金需要が発生するので、金融政策が経済の回転を増幅するのである。逆に、ニーズが見込めず収益の目途が立たない事業に対しては、いくら人為的に金融を緩和しても資金は動かないし、経済は活発化しない。

 経済は需要から、なのである。

 もし、今の日本において国民全員が生活に満ち足りていて、何も需要が見当らないのならば、経済の成長は不可能かもしれない。しかし国民全員が本当に満ち足りているのならば、そもそも経済を成長させる必要はないのだから、経済政策の心配をする必要は無いことになる。


日本人の不満と不安

 こう考えると、答えの方向性が見えてこよう。日本経済を活性化させるには“満たされていない需要”を探せばよいのである。ニーズの無い分野にカネを注ぎ込んだりスジ悪の刺激策を打つのではなく、国民が満ち足りていない分野=実需の存在する分野に対して刺激を与え、実体経済の活動として現実化すればよいのである。

 今の日本で国民はすべてに満ち足りているかというと、もちろん、そんなことは全くない。不満と不安でいっぱいである。

 何に対して不満と不安を抱いているのか? 老後の生活に対する不安、老後の医療や介護に対する不満である。この不満と不安は国民の声を集めたアンケート(「国民生活に関する世論調査」)に明らかである。2010年のアンケートによると、国民が最も不満と不安を感じている項目は社会保障の充実と高齢化対策である。リーマンショックの影響でひどく落ち込んでしまった景気と並んで、問題意識が高い。しかもこのアンケートは高齢者に限っての話ではない。20才以上の全年齢層を対象にしたアンケートなので、老後の心配をしているのは国民全体の問題意識なのである。

 これほど強い不満と不安があるということは、言い換えると、その不満と不安を解消するための強いニーズが存在しているということである。ガラガラの飛行機を1日に2便か3便飛ばすための空港を造るカネがあったら、高齢者の医療・介護サービスを提供できる施設と仕組みを整えたほうがよいのである。


空港を止めて病院と介護施設を作るとすると……

 ちなみに地方空港を一つ造るコストが2000億円〜3000億円程度だとすると、同額のカネがあれば立派な医療施設を20〜30カ所も造ることができる(300床規模の最新総合病院が約100億円)。特養と呼ばれる高レベルのサービスが可能な介護施設であれば200〜300カ所も造れるのである(30人収容の最新の特養老人ホームが約10億円)。

 ちなみに2005年、「日本の基幹インフラはほぼ整備され尽くした」という判断の下に、道路公団が民営化された。しかし、これ以降も政府は毎年約8兆円以上の道路予算を投入し続けている。高速道路向けの歳出はいまだに毎年伸び続けている。この予算の半分だけでも医療・介護に振り向けていれば、毎年200カ所の総合病院と2000カ所の介護施設が作れたわけである。もしこういう政策の転換が早い時期に行われていたならば、国民の不満と不安の声はかなり違っていたはずである。


「実需のある分野に資源を投入する」という経済の基本原則

 重要なポイントは、明らかに需要が存在するこうした分野に資源を振り向けることが、経済の回転数を上げ経済成長にもつながるという点である。

 高速道路を伸ばし、地方空港を開設しても、その結果がガラガラの高速道路と、空席の目立つ1日2〜3便のフライトでは、経済効果は小さい。建造のための鉄やコンクリートの消費と、建設工事従事者の賃金にお金が落ちて、それで終わりである。「こんなことなら最初からお金を労働者に直接配った方が経済効果は大きい」と揶揄されるゆえんである。

 一方、医療施設や介護施設を造れば、多くの利用者を見込める。当然、そこに医療・介護サービスを提供するための継続的な雇用が生まれる。そして利用者が対価を払い、働く人は収入を得ることができる。これこそが実体経済の活性化なのである。

 経済を活性化させるための大原則は、「実需のある分野に資源(カネとヒト)を投入して、財・サービスを生産し、需要を満たすこと」である。この基本的な原則に添った経済政策さえやれば、冷え切った国民経済のエンジンは回り始め、財・サービスの生産と取り引きは活発になり、経済成長が実現する。さらには、現在多くの国民が感じている不満や不安が緩和され、国民が感じる生活の豊かさや幸福度が上がることになる。

 このシンプルな方法論こそが、今の日本経済が抱えている問題のツボを突いた処方箋である。また、これから迎える超高齢化社会に対する社会基盤整備にもなるのである。


国民経済の中での出と入り

 ここで、ある疑問を持つ人がいるかもしれない。医療・介護サービスの現状は、国庫的にも事業主体的にも深刻な赤字である。こうした施設やサービスを大幅に拡充すれば財政破綻を早めるだけではないのか、という疑問である。

 こうした疑問や反論は的外れである。

 要は、国民のカネを何に使うのかというのがこのイシューの本質である。成熟を迎えた今の日本では、国民のカネをダムや空港ではなく、医療や介護サービスの充実に使った方が、大きな経済効果が生まれる――シンプルな理屈である。そのカネを税金や社会保険料で徴収して国が病院や介護施設に支払うのか、利用者が直接可処分所得を使って支払うのかは、医療・介護事業が日本経済を活性化させるかどうかとは別問題である。

 その時の料金の水準や公的負担の割合によって利用範囲や費用負担の按分は変わってくる。だが、国民の経済活動として成り立つかどうかとは別問題である。

 多くの老人が住んでいる町を例に考えてみよう。そこに100億円を投じて高速道路を造っても誰も使わない。この場合は100億円が無駄になるわけである。しかし、その100億円で介護施設つきの総合病院を造ったならば、連日、多くの老人がお世話になるであろう。その場合は、100億円の投資がその町の経済を活性化させたことになる。そして病院の費用を老人が払うのか、町の人全員が税金を負担して払うのかとは関係なく、その病院には活発な経済活動が発生する。

 またその時の料金水準が低すぎて病院が赤字になってしまったら、老人の負担水準を上げるか、町の財政からの補助を増やせばよいだけのことである。大切なことは実体のある経済活動が発生するかどうかであり、費用配分の話は調整で解決できるのである。


経済、少子高齢化、国民の不満と不安を包括的に解決する

 この15年間ありとあらゆる財政政策、金融政策をやっても効果が無かったのに、病院と介護施設を造りさえすればうまくいく――というと、少々拍子抜けされるかもしれない。しかしこの病院と介護施設を充実させる政策は、実は、今の日本経済が抱える多面的で深刻な問題に的確にミートしたものである。人口と経済の成熟、投資の減退と金融の停滞、雇用の縮小、そして何よりも先に挙げた国民の最大の不満・不安という様々な問題の解決にきちんとつながっている。

 次回は、新しい国家ヴィジョンの実現の要ともなる「医療と介護の充実」政策が様々な問題を解決することを解説する。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110920/222706/

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同意です。
 

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コメント
 
01. 2011年11月20日 20:27:31: 65dFTDNYWw
20年前の「しんぶん赤旗」の主張かと思った。

ドル建てでカウントすると、日本経済はこの2〜3年で2倍に成長してますけどね。

なのに日に日に「貧困感」が蔓延しているのは、やはり格差拡大が原因なので
しょうな。

社会主義国家は破綻したけどマルクスは正しかったということですかね。
ベルリンの壁崩壊の瞬間、次は資本主義の暴走と崩壊だろうとを直感した人
も多かったとは思いますが。


02. 2011年11月20日 22:03:00: lhypksVtog
 本当に馬鹿な記事だな。
ジジババ下宿が供給過剰になってるのが分からないのかね。
団塊の世代が死んだら供給過剰間違いなし。
こんなバカマスゴミが価格指定という独禁法例外であるってのが日本の病根だ。
これじゃ国民が賢くならず国際競争力がなくなる。

03. フシギ空間 2011年11月20日 22:44:05: OmtZW.QhVGmO2 : 78FCvGQYfA
>またその時の料金水準が低すぎて病院が赤字になってしまったら、
>老人の負担水準を上げるか、町の財政からの補助を増やせばよいだけのことである。
>大切なことは実体のある経済活動が発生するかどうかであり、
>費用配分の話は調整で解決できるのである。

野党時代の民主党のマニフェストの現実のようです。
民主党が馬鹿正直にここまで書いていれば、政権与党には成り得なかったでしょうけどね。

とはいえ、この投稿が本気で書かれたものならば、馬鹿正直ではなく、ただの馬鹿。
老人の負担水準上げれば、老人は使わなくなるでしょうし、
町の財政から補助を増やせば町の人の税金が上がり、町の人は町外に引っ越すことでしょうね。
さて、町はどこから補助のための財源を捻り出すのでしょうか?


04. 2011年11月21日 05:34:15: l9187iKIKw
ダイナモさんへ
アイデアは分かりますが、二三の点で矛盾があります。まず、病院や介護施設は公的医療保険や介護保険のスキームに乗っているので、雁字搦めの赤字体質です。空港と同じです。利用するのも地方のお金のない年寄りや、お金があっても使えるシステムになっていないのでストックがフロー化しない都会の年寄りばかり。お金が流れないのです。さらに公的医療保険制度や介護保険制度が続く限り、お金があっても年寄りにはお金を使わせない、厚労省の仕切りの中で運営しておけ、という話ですから話になりません。
もしお話をご趣旨のようにするのであれば、公的保険制度から切り離した仕組みにしなければ、意味がないと思います。混合診療を認め、病院も株式会社運営を認め、金融資産1億円以上の年寄りが利用する病院や介護施設を建てるというなら、果たして金持ちの年寄りが利用するか否かは別として、可能性はあるでしょう。
経済は需要だ、と書いていましたが、公的制度下ではまともな需要供給のロジックは働きません。社会主義経済なのです。

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