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2011年11月19日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011111902000042.html
懸案だった労働者派遣法改正案が大幅に修正され今国会で成立する可能性が強まった。社会問題化した“派遣切り”再現を防ぐ規制策が骨抜きになりかねない。労働者保護の原点に立ち戻るべきだ。
二年前の政権交代を機に民主、社民、国民新三党の合意でまとまった労働者派遣法改正案は、ねじれ国会の影響でずっと継続審議となっていた。民主党はこのほど自民、公明両党と改正案の修正で合意した。
主な修正内容は、現行改正案で原則禁止とした「登録型派遣」と「製造業派遣」の規定を削除するほか、偽装請負など違法派遣があった場合、派遣先企業が労働者に直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用制度」の導入を、三年後に延期するとしている。
また短期(日雇い)派遣の禁止では、期間を二カ月以内から一カ月以内に緩和する。
一方、派遣会社に対しては派遣料金と派遣労働者の賃金との差額の比率(マージン率)を明らかにすることなど、情報公開の義務付けを残すことになった。
修正内容には驚くばかりだ。これでは現行案が目指す派遣労働者の処遇改善は到底困難だ。
派遣法改正案の成立を急ぐのは来年の通常国会で、社会保障と税の一体改革の一環として契約社員などの待遇改善をはかる「有期雇用法制」や、厚生年金の支給開始年齢引き上げにともなう高年齢者雇用安定法の改正など、重要法案がめじろ押しのためという。
だが現行案は雇用政策を転換させる一里塚となるものだ。労働者派遣法は一九八五年「派遣事業の適正な運営確保と派遣労働者の就業条件整備」を目的に制定されたが、相次いで緩和された結果、労働者保護が薄れてしまった。
派遣という働き方が問われたのはリーマン・ショックの時だ。失職したとたん仕事も住居も失う。全国に出現した“年越し派遣村”は大問題となった。不安定雇用の削減・解消が大切なのだ。
派遣会社の中には禁止業務である建設現場に労働者を送り込んだり、データ装備費と称して多額の手数料を徴収するなど違法・不法行為が目立っていた。
製造業への派遣禁止は残すべきだ。すでに自動車など主要企業は派遣から期間工採用など直接雇用への転換が進んでいる。
連合が修正案を容認する姿勢を打ちだしたことは残念だ。これでは「すべての労働者の処遇改善」のスローガンが色褪(あ)せる。
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