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えらいこっちゃ! 日本経済"非常事態"宣言 逆襲する超円高"1ドル=70円"で真っ赤になる企業
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/26330
2011年11月14日 週刊現代 :現代ビジネス
トヨタ ホンダ ソニー パナソニック 新日鉄 一流企業が「どうにもならん!」
「このままじゃ、本当に潰れちまうよ」「手の打ちようがない、やれることにも限界があるんだ」・・・・・・。一流企業の幹部たちはこう本音を漏らす。出血だけでは済まされない「超円高地獄」が姿を見せた。
■「限界を超えています」
超円高の猛威が、意外な企業を直撃している。
セブン-イレブン、イトーヨーカ堂などを擁するセブン&アイ・ホールディングス。海外から安く商品を仕入れることができるため、小売業は円高ではトクをするというのが定説だったが---。
「米国セブン-イレブンインクが100%子会社であるため、決算への影響を避けられない。業績好調ですが、当社は年間の想定為替レートを1ドル=79円としており、年間で1200億円の為替差損を織り込んでいます。営業利益の9割超を国内で稼いでいるのに、円高の影響を受けているんです。4兆~5兆円規模の年間売り上げがあるので、全体に与える影響はそれほど大きくはないのですが・・・・・・」(セブン&アイ・ホールディングス広報センター)
鉄鋼業界もやられている。一般にはあまり知られていないが、鉄鋼業界は円高対応力が高いと言われてきた。それなのに新日本製鉄、JFEホールディングスがともに、連結経常利益の見通しを予想から数百億円規模で引き下げたのだ。それも前回予想を発表したのは7月末。たった3ヵ月での下方修正の裏で何があったのか。
「鉄鋼事業は輸出がメインですが、一方で原材料の鉄鉱石や石炭は海外から輸入するので、輸出入の収支から見て為替の影響はプラスマイナスが相殺されるはずでした。ただ、今回は自動車業界などユーザーに大きな影響が出ているため、回りまわって本体の売り上げにマイナスの影響が出てきています。しかも海外に拠点を移すユーザーが増えているため、当社も海外への製品輸出が増え、その分、円高で利益が削られているんです」(JFEホールディングス総務部広報室)
超円高は日本の一流企業に、軒並み、襲いかかっている。
中でも影響が大きいのは自動車・電機の二大製造業だ。「最強企業」と賞賛を浴びた巨人・トヨタでさえ、足元をすくわれている。
「超円高下でのモノづくりは限界を超えています。弊社の(豊田章男)社長も繰り返し語っているが、『この円高水準では、日本で生産して輸出するのは難しい』という言葉に尽きる。この円高水準はそれほど深刻だということです」(トヨタ自動車広報部)
クルマは奥が深い---。豊田章男社長は「モリゾウ」名義で記すブログで、こんなつぶやきを残した。10月26日にドライバーとして富士スピードウェイを走行した際、気温や路面状態が違えばクルマの反応が変わることを感じて書かれた一文。ただ業界関係者は違う含意≠読み取った。
「これまでも円高でキツくなるたびに、頑張って画期的なクルマを作って乗り越えてきた。それなのに頑張れば頑張るほど、円高は進んでいくじゃないか。どんなにいいクルマを作っても、1円円高になれば100億円以上が吹き飛ぶんだぞ。もう疲れた、努力が水の泡だ」
豊田社長はこんな本音を吐露したのではないか。ブログが書かれたのは政府・日銀が為替介入を行った翌日の夕刻。当局の目論見もむなしく、再びの円高へ為替相場が動き始めた時だったため、そんな深読み≠ェ囁かれた。最近では豊田社長が弱音を吐くシーンもよく見られる。「とにかく円高がきつい」「1ドル=70円台が続くと復興の基盤すら失いかねない」・・・・・・。
ただ苦しいのはトヨタに限った話ではない。10月以降大手企業の決算発表が相次ぐ中、経営トップや財務担当役員が当初業績予想の見直しを語るシーンが繰り返されている。
600億円の黒字予想(2012年3月期)から一転、900億円の純損失に転落することを発表したのはソニー。円高要因だけで、営業利益が650億円も減った。2011年4~9月期の連結決算(米国会計基準)で営業利益が前年同期比23%減となった東芝も、円高が原因で失った売上高が1460億円。東日本大震災の影響で失った500億円の3倍近い額となっている。
パナソニックはテレビ事業の大幅縮小を決定、テレビ工場の処理など構造改革費用を計上するため、決算も最終損益(米国会計基準)が4200億円の赤字になると発表した。前期が740億円の黒字だから、1年で約5000億円が吹き飛んだことになる。下方修正ラッシュ---。そして一流企業が続々と真っ赤な決算に堕ちた。
「当社はドルに対して1円円高になると38億円の営業減益、ユーロだと17億円となります。当社役員も『日本で生産するのは難しい』と明言しているように、グローバルでビジネスをやっていこうとした場合、当然、円高は響いてくる」(パナソニック広報)
■輸出企業が全滅する
円高がこれほど決算に影響するのはなぜか。
「企業は想定為替レートを設定して、為替ヘッジを行っている。ただそこから1円でも円高になると業績を直撃する。たとえばトヨタは想定レートから1円高い相場が1年続くと、年間の営業利益が約300億円も目減りすると言われる。ホンダや日産でも約150億円と大きい」(証券アナリストの植木靖男氏)
こうした事態を受け、企業は円高対策に急アクセルを踏んでいる。ただ一朝一夕に行えるものではない。新聞やテレビは「海外進出を急げ」とせかすが、海外移転には「3つの罠」があることをご存知ないのか。
第一の罠は「スピード」。猛烈な勢いで進む円高を相殺する速度でこれを進めるのは不可能だ。企業のナマの声を聞いて頂きたい。
「弊社が強化しているインフラビジネスは『10年プロジェクト』もあるほど、事業を中長期的に捉えなくてはいけないものです。75円の円高になったからといって、すぐ生産拠点を海外へ移すということはできません」(日立製作所広報)
「たとえば日本で仕入れていた部品を中国で仕入れるようにした場合、図面があったとしてもテストを経て、使えるようになるまで1年ほどかかります。では1年後に円安になったらどうするかという問題も生じるわけで、工業部品は『為替がこう動いたから、こうしよう』という簡単なものではない。それなら2社に手配すればいいかといえば、設備投資がかかり、コストが高くなれば今度は韓国車に負けてしまう」(本田技研工業広報部企業広報グループ)
第二の罠は「技術力の低下」。東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員の中川功一氏は日本企業の海外進出事例を調査、30社以上の一流企業からヒアリングを行ってきた。その結果、3分の1以上の会社が語ったのは、「海外が生産のメインとなったとき、本国拠点の重要性がむしろ高まる」というものだった。
「ある液晶関連部材会社の幹部は『いま日本で作っている材料は中国でも十分生産できるが、3~5年後に市場で評価されるモデルを生み出せるのは日本国内でしかない』と言っていた。また日本での量産をやめたがゆえに、タイ工場のオペレーションが上手く立ち行かなくなり、数十億の赤字を計上してしまった大手電機メーカーもある。『当時はもうタイで大丈夫だと思っていたが、2~3年後には技術の不足を痛感することになった』とその幹部はぼやいていた。最先端製品を生み出す技術力は国内の優秀な人材に頼らざるを得ない。円高対策は海外生産・販売で戦って稼ぐことが第一だが、うまく対応できている企業事例はまだ見つかっていない」(中川氏)
第三の罠が「会計処理」。冒頭のセブン&アイの事例で見たように、いくら海外で稼いでも、現地通貨を円に戻すときに円高だと利益はグッと目減りする。
企業はこうした事態を百も承知。そこで人員削減、コストカットなどに手をつけようとしているが、実はこれにも限界がある。
「日本企業はリーマン・ショック後に、出来る限りのコストカットを実施してきたため、もう余白≠ェ少ない。好業績を出した企業は、売上高は伸びていないのに、コスト削減で利益を出したところも多い。合理化しすぎた企業を円高が襲っているから、なおのこときついのです」(製造業コンサルタントの出川通氏)
そこで企業は当座の為替対応力を高めようと、想定レートを見直す作業を急いでいるのだ。たとえば三菱重工、東芝、神戸製鋼は85円想定だったのを80円に、パナソニックやNECにいたっては83円を76円、80円を75円と「戦後最高値水準」に設定し直した。
ただ円高は止まることを知らず、70円も視野に入ってきている。そうなればパナソニック、ソニーなどは赤字額がさらに拡大して、決算は真っ赤っかになる計算だ。しかも---。
「ドルが暴落するときは、同時にユーロも落ちる。ユーロの想定レートを120円台にしている企業は多く、そこで受ける為替差損が大きい。往復ビンタをくらって、決算が真っ赤になる企業が続出する・・・・・・」(ある電機メーカー幹部)
日本企業はとんでもない隘路にはまってしまった。
「週刊現代」2011年11月19日号より
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