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世界中の金融マンが固唾を呑む ギリシャ破綻はこの日だ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/25498
2011年11月09日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
欧州の片隅の弱小国が、世界の命運を握ってしまった。台本がどう変わっても、ハッピーエンドはあり得ないギリシャ悲劇。混乱をきわめる内情と、秒読み状態に入った崩壊へのシナリオを大予測。
■100%デフォルトする
史上最大の時限爆弾に、刻々と爆発のときが近づきつつある。そうなれば世界経済は炎上し、致命傷を受ける。その爆発とは、膨大な赤字を抱えるギリシャのデフォルト(債務不履行)、つまり国の破綻である。
ギリシャがデフォルトすると、ギリシャ国債は紙クズ同然になり、大量に保有している国や金融機関は大ダメージを受ける。ポルトガルやイタリア、スペインなど、財政危機に陥っている他の国も連鎖破綻する可能性が高まる。やがて、ユーロという通貨そのものも崩壊するかもしれない。
EU(欧州連合)はそれを防ぐべく、最近までギリシャに何度も巨額の融資をしているが、事態は一向に好転しないどころか、悪化する一方だ。第一生命経済研究所主席エコノミスト・永濱利廣氏はこう明かす。
「すでに、ギリシャがデフォルトに陥るのは100%間違いないという状況になっています。今後の問題は『どこまで秩序立ったデフォルトにするか』という点に移っているのです」
もはやギリシャの崩壊は避けられない。その衝撃に世界は耐えられるのか、まさに空前の試練が襲いかかろうとしている---。
なぜギリシャが抱える赤字は、ここまで膨らんでしまったのか。最大の原因は、労働人口の4人に1人と言われる、異様なまでの公務員の多さである。彼らは民間よりかなり高い給料を取り、年金も現役時代の給与の約9割分を受け取れるとされる。そういった人件費、あるいは人数自体をカットしようとすると、公務員は激しいデモやストで対抗し、政治家たちはそれに屈してしまうのが常だった。
アテネ在住ジャーナリスト・有馬めぐむ氏は言う。
「官公庁だけでなく、その周辺にも何をしているのかよくわからない外郭団体が山ほどあって、税金泥棒のような高級官僚が多く群がっているんです。たとえば、設立目的が『干上がった湖の研究』『ペットボトルの大きさの考察』といった意味不明の団体には、月に100万円程度の、とんでもない額の給料をもらっている官僚たちもいます」
多くの公務員は、朝7時に出勤して、14時には帰ってしまう。あとは昼寝と食事と酒を楽しむ優雅な生活だ。職場は、お世辞にも勤勉な雰囲気とは言えず、市民へのサービスを担当する役所も概ね態度が悪い。窓口の職員の多くは無愛想で、市民が用事を頼んでもパンをかじったまま返事をしなかったり、同僚と雑談に興じながらタバコを吸い続けたりしている。禁煙法が施行されているのだが・・・・・・。
「ビザの変更手続きで市役所に行ったとき、パソコンに簡単な内容を打ち込むだけなのに、最初、間違いだらけのことを入力されました。『2020年まで有効』を『2010年まで』と打ったり、日本人の私を『ロシア人』にしたり(笑)。役所ではこういうことが多いんです」(有馬氏)
■国家的「借金踏み倒し」
このように、ろくに働かなくても高給を保証される公務員の立場が、最近ではずいぶん脅かされている。デフォルトの危機が迫る中、EUなどから「融資してほしかったら財政赤字を縮小せよ」という条件を突きつけられ、ギリシャ政府はそれを呑んだのだ。こうして増税に加え、これまで聖域だった公務員のリストラがようやく始まった。
アテネの30代の男性警察官が打ち明ける。
「確かに我々のような公務員は恵まれています。これまで手当を含め、約1700ユーロ(約17万8000円)の月給をもらっていました。しかし最近では手当などが削られ、ボーナスも4分の1になった。また、公務員だけではありませんが、国民全員が従来の税金に加えて、給与の2%を税金に取られることになり、新たに不動産税も課される。最近、生活は本当に苦しくなっています」
この警察官の職場では、人が減っても人員が補充されず、彼は休日も私服でパトロールに当たっている。ギリシャに約10年住んでいる日本人女性も言う。
「13%だった消費税が一部23%になる、郵便小包の受け取り時に4ユーロ(約420円)取られる、ときどき数十万円単位の追徴課税をされる・・・・・・など、ここ最近で、出て行くお金が5割増しになりました。夫(ギリシャ人)は民間人で、『このままだと生活できなくなる。不安で夜も眠れない』と言います。夫の親の年金も2割カットされました」
こういう事態が進んだ結果、各地で、給与が何ヵ月も支払われないケースが続出。失業率は20%近く、アテネの繁華街でも4割ほどの小売店が閉店に追い込まれて、シャッター街のようになっている。
犯罪も激増。特に近年、アルバニアなど近隣諸国からの移民が犯罪グループを結成し、ロシアマフィアから買った銃を使って強盗やレイプを働く事件が目立つという。逮捕されるまで、高級住宅地を中心に50件以上の強盗とレイプを重ねた凶悪犯もいた。アテネの有名な観光スポット・オモニア広場周辺でも、ドラッグをやって昼間からフラフラしている者が増えた。
取り締まろうにも、警察にはパトカーのためのガソリン代がなく、手をこまねいて犯罪を見ているしかない。「たまりかねた市民たちが、自衛のために、窓につける鉄格子をどんどん買っている」(有馬氏)という。
こうして社会が混乱を増す中、追いつめられた人々は、史上最大規模の激しいデモを行った。10月19日から20日にかけて、「これ以上の緊縮財政を許さない」とする国民約20万人が集まり、街を破壊するなど暴動のようなデモを展開したのだ。これをアテネで取材した「ニューヨークタイムズ」ローマ支局長のレイチェル・ドナディオ氏は言う。
「従来もギリシャではよくデモがありましたが、今回のデモはまったく性質が違います。今までおとなしかった多くの中間層も参加しているのです。弁護士、裁判官、教師、医師、船員、鉄道員、航空管制官、退役軍人・・・・・・と、官民あらゆる人々がゼネストに参加し、デモで政府の緊縮財政に反対の叫びを上げていた。
彼らは店の窓を壊し、警官隊に石を投げ、殴り、ゴミ箱に放火するなど非常に暴力的で、ギリシャ人たちも『こんなデモは前代未聞だ』と言っていました。こんな無秩序な状況が生じること自体、ギリシャが国として破綻寸前にあることの表れでしょう」
では、ギリシャの運命はこれからどうなるのか。金融アナリストの島本幸治氏が説明する。
「ギリシャのデフォルトについては今、少しでも遅らせたいと考えている欧州の政策当局と、悠長に待っていられないというマーケットの攻防が水面下で繰り広げられています。もはやギリシャが借金を全額自力で返済することは不可能で、実際に7月、返済額を21%減らすことが決定済み。ここからさらに減額幅が増え、10月27日のユーロ圏首脳会議では50%で合意しましたが、さらに大きくなる可能性もあります」
貸した側にすれば、返ってくるはずのお金が半分以上も踏み倒されるとなれば、存亡にも関わる。それでもギリシャに回復≠フ見込みがない以上、EUが早めに道筋を立てて破綻させ、ユーロから切り離せば、損失は莫大になるが広がらずにすむ。その場合、ギリシャの通貨はユーロからドラクマに戻ることになる。
一方で、EUが無理をしてでもギリシャを抱え続ければ、ユーロの信認はとりあえず維持される。ただし、ずっと融資などでギリシャを支えなければならず、財政と金融の危機は終わらない。どのみちデフォルトが不可避なのであれば、あまりズルズルと長引かせない方がよさそうだ。
スガシタパートナーズ代表の菅下清廣氏も言う。
「債務の5割を棒引きしても、ギリシャが立ち直る保証はない。さらなる棒引きが必要になるでしょう。それなら自己責任でユーロから離脱させ、ドラクマに戻させる方が、世界経済への悪影響は少ないので、最後はそうなると思います。となると、その時期に合わせてデフォルトさせることになりますが、さまざまな手続きを考えると、遅くても'12年6月までということになるでしょう」
■12月に破綻の可能性大
国際政治経済学者で参院議員の浜田和幸氏も言う。
「ギリシャがデフォルトするのは長くて1年以内。ただし、ギリシャなど財政危機の国を支援する『欧州金融安定化基金(EFSF)』の負担の配分について、ドイツとフランスが合意できなかった場合は、もっと前の時期に、準備もなく突然死%Iなデフォルトになる可能性もあります」
また関係者の中には、一見ギリシャと関係のなさそうな「フランス国債」という要因に注目し、さらに早期のデフォルトを予測する見方もある。外資系金融機関のアナリストが言う。
「10月半ば、格付け機関ムーディーズが、フランス国債の格付けを引き下げる方向で検討を始め、その結果を3ヵ月以内('12年1月半ばまで)に発表することになりました。もしフランス国債が、現在のトリプルA(最上級)から引き下げられると、EFSFに資金を出すのは事実上ドイツだけになってしまう。それではギリシャを支え切れないので、3ヵ月以内にデフォルトとなる可能性があります。特にギリシャの国債償還期に当たる今年12月がそのタイミングではないかと、金融マンたちは固唾を呑んで見守っています」
要するに年内、あと2ヵ月の間にギリシャが破綻してもおかしくないというわけだ。そうなると金融界は大混乱に陥り、冒頭に述べたような他国の連鎖破綻やユーロ消滅につながりかねない。そこまで行かなくても、ギリシャ破綻のインパクトと規模はリーマンショックのそれを大きく上回る---と前出の専門家たちは口を揃える。ジパング経営戦略本部シニアアナリストの増田悦佐氏は言う。
「ギリシャの破綻が事実になった時点で、欧州経済は深刻な収縮過程に入ります。フランスやドイツも悪化し、10年後や20年後に仮にいったん持ち直したとしても、欧州の長期的な没落は止めようがありません。一方、米国の金融依存経済も中国の過剰投資経済も衰退していくので、世界中が最悪の不況期に突入すると思われます」
人類が経験したことのない大恐慌が、いよいよ本格的に幕を開ける---。
「週刊現代」2011年11月12日号より
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