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「オリンパス」をどうしたらいいのか
http://diamond.jp/articles/-/14779
2011年11月9日 山崎元のマルチスコープ :ダイヤモンド・オンライン
■新たな展開
怪しいとは思っていても、何が問題なのか、もう1つよくわからなかったオリンパスの過去の一連の問題が進展を見せた。
11月8日、オリンパスは第三者による調査委員会の報告内容として、巨額であり不自然だとの指摘を受けていた過去の買収および買収のアドバイザリー・フィーが、過去の証券運用に関わる損失の処理に関わるものだったと公表した。
ネットの世界では、早い段階で、オリンパスの問題の背景には、同社の証券投資の損失隠しがあるという噂が広がっていたが、今回の公表は、この噂を追認するものとなった。
筆者も、オリンパスの旧経営陣の対応の様子を見て、買収に関わる支出は不自然だが、彼らが私的に着服しているような様子とは見受けなかったことから(一応は、「会社のために」何かを隠しているように見えた)、こうした可能性を疑っていた。
もっとも、現時点で、これらの支出に関して私的な着服などの犯罪が一切ないと決めつけられるものではない。
同社の高山修一社長は、過去の含み損の先送りに関わってきたのは、菊川剛前会長、すでに解職された森久志副社長、山田秀雄常勤監査役の3名で、事実の解明が進んだ時点で彼らへの処分を検討するとしている。
処分がこれら3人だけでいいのかは大いに疑問だが、菊川前会長も含めて処分の対象にすることを明確化したのは、一歩前進だろう。
この問題は、世間的には、買収に関わる過去の不透明な支出の責任追及を行おうとしたマイケル・ウッドフォード前社長が、逆に解任されたことから始まった。
ウッドフォード氏が問題にしたのは、英国の医療機器会社ジャイラスの買収の際にアドバイザーを務めた2社に、買収金額の3割以上の約600億円を支払ったことと、いずれも売り上げ数億円の小規模な国内ベンチャー企業3社に合計700億円以上の資金を投じて1年も経たないうちに、500億円以上を減損処理したことなどだった。
オリンパスの経営陣は、これらに関していずれも、支払額はビジネス的な判断として当時適当なものだったと述べ、手続きにも問題はなかったと説明していたが、これらの説明の相当部分は、どうやら嘘だったようだ。
■オリンパスの株式をどうしたらいいか
新たな発表を受けて、11月8日の株式市場では、オリンパスの株価はストップ安(前日比300円安)の734円を付けた。時価総額は2000億円を割り込んだ。
問題の全貌がまだ見えていないので、不確定な点が残っているが、長年にわたって損失を隠しながら先送りしてきたという発表が事実なら、悪質な粉飾決算であり、上場廃止になる公算が大きい。
上場廃止となると、換金が難しくなるので投資家の売りが殺到する可能性があるから、売りが集まるのは仕方がない面がある。
ただ、決して同社の株を買うことをお勧めするわけではないが(もちろん「売り」も勧めていない)、2012年3月期の予想経常利益がざっと350億円、純利益で180億円(「東洋経済会社四季報」秋号による)と予想され、世界の内視鏡シェアの約7割を持つ同社の株式が、この価格というのはいかにも安い。上場廃止を覚悟してでも、同社株を買い集める投資家がいてもおかしくない。
詳しい状況はまだよくわからないが、オリンパスは1990年代から損失を先送りしてきたようであり、その額は決して小さくない。
いずれも上場廃止となったが、経営規模に対するインパクトという点では、結局50億円強の不適切な利益計上だったライブドア社のケースよりも、ざっと3000億円の損失を通称「飛ばし」によって先送りしていた山一證券のケースに近い。山一は本来市場を守るべき証券会社だったということもあり、上場廃止だけではなく、自主廃業となった。
オリンパスの株式をどう扱うかは、証券取引所が早急に判断しなければならない問題だが、同社を上場廃止にしなかった場合、今後の、あるいは他の上場企業が、「不正が後から露見しても、上場廃止にはならずに済むだろう」と考えて、正しいルールを守るインセンティブ(誘因)が薄れる悪影響が考えられる。もちろん、現在あるルールは尊重しなければならない。
しかし、特にライブドア問題や西武鉄道の件で問題視されるようになったことだが、上場廃止は、本来誤った情報に基づいて株式を買ったり、不適切な経営で株価が下がったりという経緯で、実質的には本件の最大の被害者であるオリンパスの現在の株主に対して厳しい処罰となる点は、問題だろう。
過去に問題のある取締役を選んでいたという点では、株主にも責任の一端があると考えることは一応できる。それが株式投資というゲームのルールだという意見にも一理はある。しかし、損失が対外的に隠されていた本件にあって、株主の責任をこれ以上問うのは酷だろう。
たとえば、(1)オリンパスを通常の取引ポストとは異なる特別なポストに一定期間置いて、投資家がこれまで通り売買できるようにしながら、(2)一定期間ファイナンスが行なえないなどのペナルティーと、(3)粉飾決算に伴う課徴金を会社に課して、(4)同社の取締役は会社に損害を与えたことに伴う個人的な賠償責任を負い、(5)不正に関わっていた役員・社員は刑事罰に服する、というような形が可能であれば、投資家の利便性を損なわずに、同時に、今後の不正に対する抑止力も失わない処置となるように思うが、いかがだろうか。
オリンパスのケースで、何とかこうしたことができないか。今回が不可能であるとしたら、次のケースが起こる前に制度を調整できないか。関係者は「大人の知恵」を絞って欲しいものだ。
■裏の当事者にも処分と規制を
ここまで事実が明らかになってきたことで、今回のオリンパスの問題は、(1)過去の経営陣による粉飾決算(意図的な損失隠し)によって会社・株主が被った損害、(2)損失隠しに伴って行なった操作によって会社が被った追加的損害、(3)そもそもの証券運用の失敗、(4)一連の問題による会社のイメージダウンの損害、といったことが「表の問題」として明らかになった。
しかし、そもそも損失を隠して、これを後から買収に関する支出を通じて埋める、という仕組みを、金融会社ではないオリンパスの旧経営陣が独力で考えられたはずがない。同社の粉飾決算には、状況と目的とを理解して仕組みをこしらえた金融業者の「共犯者」がいるはずだ。
また、この共犯者は、オリンパスの旧経営陣に対して無償の親切を提供したのではなく、相当の利益をこの案件から上げていたものと推察される。あるいは、ある段階からは、問題の露見を恐れていたはずの旧経営陣を半ば脅して、自分たちの利益拡大を図っていたかも知れない。
何はともあれ、オリンパスが行なった巨額の支出が、誰に、どうして、どう流れたのか、資金の流れを解明することが重要だ。
決算をごまかすためのデリバティブ商品の販売などの悪質な金融商売では、「困っている客につけこむ」ことが常道の1つだ。業界人は、「肉は腐りかけが美味しい」などと言う。
弱みを抱えた客に対して、法律に触れないぎりぎりのラインで「実質的なごまかし」を提供するサービスは、金融業者の得意技だし、収益性が高いことが多い。
今回のオリンパスの件では、金融業者の側で法律に触れる問題があった可能性が大いにあると思われるが、「実質的な粉飾の手伝いを、事情を知っていて行なう」商売は明確に違法となって、金融業者(会社)が損をして、個人(担当者)が刑事罰を受けるようにしたい。
いわば「ぎりぎり」をもう少し厳しくすることと、違法の判断がしやすいように「ライン」をより濃くはっきりと描くことが必要だ。違法行為の手助けをした金融マンが個人的に大いに儲かるような状況を放置しておくことは、不適切である。
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