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ローマ法王庁の「正義と平和評議会」が、「人々の利己主義的な振る舞いによる民主主義制度の根幹の弱体化を防ぐために、世界は「連帯の倫理」を必要としているとし、金融取引への課税や金融機関を監督する世界的な公的機関と世界中央銀行の設立などを呼びかけた」という。
ローマ法王庁も、日本や米国などの支配層と同じで、国民を慮っているそぶりのスパイスをふりかけながら、エグイ政策をしらっと打ち出すところだ。
ギリシャはECB(欧州中央銀行)が発行権限を持つユーロが入手できないために国家破綻の憂き目に遭っているが、“世界中央銀行”なるものが世界で唯一通貨の発行権限を持つようになったら、すべての国家と国民がそれに拝跪せざるをえなくなるだろう。
GDP比で先進国中もっとも高い公的債務を持つ日本は、“世界中央銀行” が発行権限を持つ通貨が手に入らないために、国内の国債ホルダーにさえ債務の履行ができなくなって破綻に至るかもしれない。その後は、国際金融関連機関から借入れた世界通貨を返済するため厳重な管理下に置かれることになるだろう。
転載したコラムは、日経新聞としては“あれっ”と思わせるような規制主義的内容になっている。
コラムで日経新聞社の末村篤特別編集委員が言う「経済の健全化には金融の規律と不均衡の是正が欠かせない」というのは正論に思えるものだが、現実は、“経済成長は、金融の放漫と国家(国民経済)間の不均衡に支えられている”のだ。
経済のダイナミズムとはそういう動因から生まれる。
日本が金融の規律を徹底したらどうなるか、米国が経常収支の不均衡を是正しようとしたらどうなるか、を考えるだけで、耳ざわりのいい正論でしかないことがわかるはずだ。
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[日経新聞11月1日P.15]
「一目均衡」
特別編集委員 末村篤
金融と経済の健全化の条件
欧州各国の首脳が金融・財政危機の収束に向け鳩首(きゅうしゅ)会談を繰り広げた先週、カトリックの総本山バチカン(ローマ法王庁)の正義と平和評議会が一通の声明を出した。
声明は、人々の利己主義的な振る舞いによる民主主義制度の根幹の弱体化を防ぐために、世界は「連帯の倫理」を必要としているとし、金融取引への課税や金融機関を監督する世界的な公的機関と世界中央銀行の設立などを呼びかけた。
バチカンの声明は、金融批判デモヘの共感の広がりなどとともに、世界的な思潮の変化の表れだろう。そこから読み取れる問題意識は1930年代に制定された米国の金融・資本市場法制の立法の趣旨に通じる。34年証券取引所法は金融規制の理由をこう述べる。
「広範な失業、取引活動・輸送、産業の混乱を引き起こし、公共の福祉に反する影響を及ぼすような全国的な非常事態は、証券の相場操縦、その急激で不当な変動、取引所および市場における過当投機によって引き起こされ、増大、延長される。非常事態に対処するため、連邦政府は国の信用に負担を課すような巨額の支出を余儀なくされる」
大恐慌の反省で生まれた銀行法(銀行・証券分離)、証券法(情報開示)、証券取引所法(不正禁止)の目的は今でも色あせない。
銀行業務と証券業務の癒着がバブルと不正の温床となる。会計や格付け情報は分かりやすくなければならず、投資家の理解を超えるような複雑な金融商品の組成、販売は慎むべきだ。規制機関はプロ同士の取引にも監視を強め、中央銀行は過剰な信用膨張を抑える勇気と手段が必要になる。
米国の銀行法廃止に象徴される自由化の背景にはイデオロギー化した「市場信仰」があった。金融の暴走が国の信用を脅かすに至った危機は、仮説にすぎない金融・経済理論とそれに基づく政策の修正を迫る。 「ディ・レバレッジ」(負債削減)と「リ・レギュレーション」(再規制)の本格化で、金融は原理原則へ回帰を強め、金融機関はビジネスモデルを転換せざるを得なくなる。政府の能力を超える巨大化や銀行・証券・保険に渡る総合化は見直され、金融の自己利益の追求を奨励した時代も過去のものになるだろう。
資産と負債を両建てで膨らませて自壊した金融の元をたどれば、国際収支の不均衡に行き着く。黒字国が稼いだ貨幣を赤字国に還流する資本取引は、債権国と債務国の資産と負債を積み上げ、二重の信用創造を促して財政規律も緩める。ユーロ危機は財政同盟を先送りした通貨同盟が金融と財政の規律を緩めて事態を悪化させた問題だ。本丸は基軸通貨国の債務累増による信用の膨張にある。
経済の健全化には金融の規律と不均衡の是正が欠かせない。経済危機を収束させるにも、信用創造を制御する世界的な規制機関や中央銀行の設立とともに、通貨制度を改革し不均衡拡大を防ぐ手立てが必要だ。
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