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http://www.gci-klug.jp/tomita/2011/10/23/014069.php
手ごわい米国債
2011/10/23 (日) 19:49
S&P500指数と構成銘柄の相関が、史上初の水準まで高まっている。これは、過大評価もしくは過小評価の株式が多数存在する状況を示唆しているが、個別銘柄のファンダメンタルズよりも、世界的な量的緩和のパワーが市場を席巻しているとも言えそうだ。債券に対する弱気派が再三にわたり警鐘を鳴らしても、米国債の価格が下落しないのも同じ理由による。
先週も米国の有力ヘッジファンドの幹部は、金利が史上最低水準に低下しているため、米国債投資は避けるべきだと発言。将来の米国財政への不安はさておき、税金やインフレ率を考慮すれば、マイナスのリターンしか得られない現状に対する投資価値上の判断だ。
しかし現実には、欧州債務危機により景気が低迷するとの見通しと質への逃避で、米国債価格は上昇を続け、第3四半期には、リーマンショック直後以来の下げ幅となった米国株を尻目に6.4%のリターンを実現した。債券のパフォーマンスが、昨年から弱気派の予想を裏切り続けてきた背景には、価格に反応しない買い手の存在がある。日本や中国は長期にわたり米国債を購入してきたが、2008年からはFRB自身も量的緩和で米国債購入を積極的に進め、市場における短期的な価格変動に影響されない公的部門の存在感が高まっている。
債券弱気派は、債券市場が価値を重視する投資家によって価格形成されるとの仮定の下で、現在の金利水準では債券の価値が極めて低いと判断している。しかし、中央銀行が債券市場の主要なプレーヤーとなっている現状では、その仮定は必ずしも正しくない。また多くの資産クラスの価格ボラティリティが高く、リスク資産のパフォーマンスが良くない状況では、米国債は格好の逃げ場を提供している。英エコノミスト誌は、すべての資産クラスが危険に見える状況を「隠れる場所がない」と表現した記事を掲載したが、米、英、独の債券利回りについては、日本の経験を踏まえたのか、まだ低下余地があると指摘。こうした状況で、標準的な債券弱気派の見通しは、なかなか実現しない。ピムコのビル・グロス氏がQE2 終了後の金利上昇を見込んで今春に米国債を売却し、最近その判断の誤りを認めた事は記憶に新しい。
米国が量的緩和姿勢を転換、中国も米国債購入を中断、「質への逃避」を求める資金が米国債以外に向かう−という条件が揃えば、価値を重視する弱気派の目論見通りなるかもしれない。米財務省が発表した最新の統計によると、米国債の最大保有国である中国が、8月に保有額1.14兆ドルの3.1%に相当する365億ドルを大量売却した事が明らかになった。しかし、海外公的部門の保有合計額は、4.57兆ドルと逆に2%上昇しているので、米国債を取り巻く環境は急には変わりそうもない。
債券が株式、商品をリターンで凌駕する状態が続いたが、株式は今月に入って上昇基調に転じている。S&P500は大幅上昇で先週を終えたが、ここ3ヵ月形成してきたレンジの上限を抜ければ、中国の動向も相俟って転換点を迎える可能性もある。
ブルンバーグは四半期毎エコノミストに、6ヵ月後の10年物米国債金利の予想を聞いているが、2002年に始めた104回の調査の内、100回が「金利上昇」が多数意見だったとビアンコリサーチは指摘した。しかし、上昇を予測した100回の中で、実際に金利が上昇したのは51回に過ぎない。将来の金利見通しには、こうしたバイアスが存在する事も意識しながら、米国債投資を考える必要がありそうだ。(了)
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