http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/688.html
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雇用問題の解決には新産業を興すしかないというのは、あまりに抽象的で有益性がない提言だが、
永続的な財政出動は無意味だから、可能な政策は規制緩和と減税と無駄な歳出削減で、新規産業が出てくるのを待つくらいだ
しかし労働人口は今後暫く減少するから、雇用総数を必ず増やさなければならないわけではない
もう少し現実的な対策としては、産業の労働生産性を高め、税負担を高め、社会保障を充実・効率化することで、生活水準を下げずに北欧のように凌いでいくことも可能だろう
http://diamond.jp/articles/-/14498
野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
製造業が国内に留まっても、雇用は減少する
「製造業の海外移転は阻止すべきだ」と言われるとき、理由として挙げられるのは、国内雇用に対する悪影響である。
確かに、海外移転が進めば国内の空洞化が進み、国内雇用は減少するだろう。しかし、問題は、この裏命題が成立するか否かである。つまり、「製造業が国内に留まれば、雇用は確保される」と言えるかどうかである。
形式論理学が教えるところによれば、裏命題と逆命題は等価であり、元の命題が正しくても逆命題が正しいとは限らない。したがって、「海外移転が進めば国内雇用は減少する」ことが正しいとしても、「海外移転が進まなければ、国内雇用は減少しない」ことは、論理的には保証されないのである。
以下では、過去のデータを分析することにより、「仮に製造業の国内生産が拡大したとしても、国内雇用は減少し続ける可能性が高い」ことを指摘する。
この問題に関する多くの議論は、形式論理学上の誤謬に陥っているのである。
製造業は90年代の初め以降、
雇用を減らしている
【図表1】には、雇用者総数と製造業の雇用の長期的な推移を示す。
製造業の雇用は、1970年代の初めまで増加を続けて、73年には1203万人に達した。しかし、石油ショックで停滞、ないし減少した。その後、78年頃をボトムとして再び増加し、92年に1382万人になった。しかし、これがピークであり、それ以降は減少している。
2010年における雇用者数は996万人だから、ピークに比べれば実に400万人近くも減ったわけだ。年間でいえば、20万人程度の減少だ。
では、製造業の雇用は、なぜこのように減少したのだろうか?
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原理的には、労働力供給面の制約と、労働力に対する需要面の変化が考えられる。
そこで、まず【図表1】に示す雇用者総数の推移を見ると、90年代の末頃からは増加は減っているものの、減少はしていない。5300万人から5500万人程度の範囲でほぼ一定であると見ることができる。
つまり、製造業の雇用減は、労働供給の制約によるものではない(このことは、人口動向からも確かめることができる)。製造業の労働力需要が減少したのである。
したがって、製造業が減らした雇用を、他の部門が引き受けたことになる。それはサービス産業である。とくに福祉と「その他サービス」の雇用が増加した。
では、給与面ではどのような変化があったろうか?
【図表2】には、製造業と産業全体の給与の長期的な推移を示す。
これを見ると、産業全体の給与水準は、90年代末からほとんど頭打ちである。製造業の給与は、2007年までは、緩やかにではあるが上昇した。経済危機後は下落している。
したがって、製造業においては、総人件費は減少したはずである(そのことを、後で見る)。
雇用を増加させず生産が増加し、利益が増加
ところで、この期間に生産はどう推移したか。
【図表3】に、鉱工業生産指数の推移を示す。
生産は1991年までは傾向的に増加した。しかし、その後は傾向的に増加することはなくなった。かといって、傾向的に減ったわけでもなく、周期的に変動するようになった。
しかし、上で見たように、雇用は92年以降傾向的に減少している。したがって、製造業が積極的に人減らしを行なったことになる。
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