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「週刊文春」10・20号の特集記事は、『「世界恐慌」本当の恐怖:日本は「貧困大国」に堕ちる!』というなんともおどろおどろしいテーマである。
タイトルとなっている「日本は「貧困大国」に堕ちる!」という“予測”は、とりわけ顕著になった01年以降の自民党政権・民主党政権と同種の政策を継続していく限り、間違っていない行く末だと考えている。
「サラリーマン可処分所得は10万円単位で減る」という話は、民主党の内紛と自民党・公明党を利用して子ども手当を沈没させたにも関わらず扶養控除の廃止などはそのままという財務省のハレンチな得意技が“成功”し、財政危機を煽ることで復興財源・社会保障財源という名目での増税が国民のある程度まで理解を得ていることに基づくものである。
(子ども手当には賛同しないが、経済的には、10年度から満額支給にしていたほうがずっとましだったと考えている)
記事のなかにはいくつか“煽り”に近い内容もあるので、それを指摘させていただく。
「生活できるラインを下回る所得者の割合(貧困率)は一六%を超え、実は世界四位まで悪化している」という表現があるが、16%で世界4位という指標は、相対的貧困率のことと推測するが、それは“生活できるラインを下回る”ことを必ずしも意味しない。
(OECDベースでメキシコ→トルコ→米国→日本というのが相対的貧困率の序列)
相対的貧困率は、世帯人員を考慮した可処分所得が全国民の可処分所得の中央値の半分に満たない世帯の割合だから、絶対的な貧困というより、再分配も考慮した「所得格差」を反映したデータと考えた方がいいものである。
国際比較で「金満国家」とされるような高所得レベルの国民経済では、高級乗用車を保有していながら統計的には「貧困世帯」と見なされることもありえる。
それゆえ、ある時点のデータよりも、「中間層の落ちこぼれ」経緯がわかる時系列データのほうに意味がある。
日本の相対的貧困率は、1985年の12%から2009年の16%へと上昇している。
この間、バブル→バブル崩壊→デフレ不況という経済状況の変移があり、失業率が86年2.6%から09年5.1%に上昇したことが相対的貧困率の上昇に少なからぬ寄与をしているはずである。
それと同時に、相対的貧困率のデータ特性(絶対値ではなく相対値)から、労働分配や税制といった所得分配構造の変化が大きく寄与していると考えられる。
記事でも書かれているが、「日本の企業が支払う給料の総額は、九八年の二百二十二兆八千億円をピークに十年以上減り続け、昨年はピークから二十九兆円も減った。
所得二百万円未満の割合は、九九年に一四.ニ%だったが、〇九年には一九.三%に激増。所得四百万円未満でみても、三四.七%から四六.五%まで十ポイント以上も増加している。」という一般従業員に対する給与水準の切り下げ過程が、相対的貧困率の上昇につながっていったことがわかる。
もう一つ、財政問題に絡む“煽り”的内容がある。
「貧困は国民に心理的な影響も与え、消費も引っ張る。「ここ数年、貧困が切実な問題になって来たのは、将来への不安が大きくなったためです。貯金しない若者は現在も数多くいますが、今以上に貧困を強く感じるようになれば、消費はさらに落ち込むでしょう。現在行われている格差を是正する社会保障は将来に負担を残す借金でまかなっており、もう限界です」(東京大学の佐藤俊樹教授)限界を前に現役世代は負担が増えるのが確実だ。」と書かれているが、「現在行われている格差を是正する社会保障は将来に負担を残す借金」というわけではない。
現在の借金は現在に対する利益や負担になるもので、借金が将来にマイナスの影響を与えるかプラスの影響を与えるかは、国民経済の動向や政策に左右される未確定のものである。
それは、日本や米国の金融機関が自分の不始末を国家社会に押し付け国家による救済(借金)を受けたことで立ち直り、救済(借金)を返済し、さらに高額報酬と高額配当まで手にしていることを考えればわかることだ。
もちろん、政府債務に依存するのではなく、企業などの経済主体が国民生活レベルの上昇に貢献する道が望ましいことは確かである。
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「週刊文春」10・20号P.26
『戦慄レポート
サラリーマン可処分所得は10万円単位で減る
貯金ゼロが33.9%
日本人の格差ここまで来た
高級自動車メーカーのランボルギーニ社(伊)が新車「アヴェンタドール」(四千百万円)を九月末に日本で発売した。
「現在、二十二台の予約が入っています。一台作るのに一カ月以上かかり、当社への納車は月一台ですから、最後の方は二十二カ月先です。フェラーリは若い方も乗られますがランボルギーニのお客様は五十代の経営者、医師が中心です」(正規ディーラー)
メリルリンチ証券の「ワールド・ウェルス・レポート2011」(世界の富裕層調査)によれば、百万ドル(約七千六百万円}以上の資産(自宅用不動産を除く)を持つ「富裕層」は日本で百七十四万人を数え、米国に次ぐ二位。〇九年は百六十五万人で意外な増加を示す。
「年収二千万円の人が一千五百万円に減っても、資産運用できる額が十分残り、資産は増えていくのです。日本人は富裕層でも保守的で、大半を定期預金している人が多いですが、最近は、海外に資産を移す人も増えてきました。人気はシンガポールです」(都内のコンサルタント)
同じ「自動車」でも、十一年目を迎えた都内の法人タクシー運転手(58)の収入は減るばかりだ。
「指輪の職人でしたが、海外で作る安物に負けるようになり、失業しました。運転手をはじめて最初の数年は月給が手取り三十万円を超え、何とかやっていけると思ったのですが、年々下がり最近は二十万円ソコソコ、同僚の三割は二十万円以下。中高年を雇ってくれるのはタクシー業界ぐらいで、先が見えません」
日本の企業が支払う給料の総額は、九八年の二百二十二兆八千億円をピークに十年以上減り続け、昨年はピークから二十九兆円も減った。
所得二百万円未満の割合は、九九年に一四.ニ%だったが、〇九年には一九.三%に激増。所得四百万円未満でみても、三四.七%から四六.五%まで十ポイント以上も増加している。
「貯金ゼロ」は全体の三三.九%。生活できるラインを下回る所得者の割合(貧困率)は一六%を超え、実は世界四位まで悪化している(国税庁資料等)。
寿命も短くなる
貧困は国民に心理的な影響も与え、消費も引っ張る。
「ここ数年、貧困が切実な問題になって来たのは、将来への不安が大きくなったためです。貯金しない若者は現在も数多くいますが、今以上に貧困を強く感じるようになれば、消費はさらに落ち込むでしょう。現在行われている格差を是正する社会保障は将来に負担を残す借金でまかなっており、もう限界です」(東京大学の佐藤俊樹教授)
限界を前に現役世代は負担が増えるのが確実だ。
大和総研の試算では、税制改正、厚生年金保険料の値上げ、子ども手当の見直しなどにより、年収八百万円の世帯(子供二人)の可処分所得は来年九万九千円、再来年はさらに五万二千円減る。この減額は収入が上がるほど増え、年収一千万円世帯だと、来年二十四万円、再来年はさらに十六万円減る。
一方、この十数年で日本の企業でもトップの報酬を増やす米国化が進んだ。大企業(資本金十億円以上)の役員報酬の平均は、一千三百二十万円(九八年)から一千六百六十万円(〇八年)まで増えた。ウォール街でデモが続く米国の問題は対岸の火事ではない。
「格差拡大は不満や故意を生み、犯罪の増加につながります。また最近の各国の研究から明らかになって来たのが、貧困層だけではなく、国民全体の寿命が短くなること。社会全体にストレスが掛かることが原因と考えられています」(武蔵大学の橋本健二教授)』
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