http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/594.html
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結局、政治・行政は企業活動へは、できるだけ介入しないのが一番
助けるのは法人ではなく、人間(経済弱者、子育て女性・・)だけで十分
しかし、現実には、そうはならない
という、いつもの話か
http://diamond.jp/articles/-/14364
第66回】 2011年10月14日 加藤祐子
円高は病か症状か 何をどう治療すべきか
英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週は円高に ついてです。円高だから日本経済は大変だという通説というか「よくある話」のほかに、問題は円高ではなく他の部分を変えれば円高問題はなくなるという説も ありました。(gooニュース 加藤祐子)
円高は病か症状か
今の日本経済が決して健康体ではないと仮定するとして、円高はそれ自体が病気そのものなのか、それとも別の問題の症状なのか……なんていう比喩を 使いたがるのは、たまたまこのところ米医療ドラマ「HOUSE」をまとめ観しているからですが、ハウス医師よろしくそこの診断を正しくしないと、治療を間 違う気がします。
日銀が10月3日に9月の企業短期経済観測調査(短観、英語ではBank of Japan Tankan Survey)は、企業の景況感が半年ぶりに大幅改善していることを示すものでした。これを受けて、3日付の英紙『フィナンシャル・タイムズ』は、「円高が日本の製造業に重圧」という見出し記事を掲載。「そりゃそうだよね」という、定説そのものの内容です。
いわく、記録的な円高のせいでトヨタ自動車は日本で車を作って輸出しても利益を出せなくなってしまい、昨年の同社は日本国内で3620億円の営業 赤字を計上したと。そしてマツダも日産も、「国内生産にどう影響するか明言しないまま、中南米に工場を新設すると発表」していると記事は指摘。影響を受け ているのはもちろん自動車業界だけでなく、「止まらない円高と世界経済の失速は、世界第3位の経済大国の景気見通しを圧迫している」と書いています。
日本の製造業は震災と津波の影響からは「予測よりはるかに早く立ち直った」けれども、「日本経済の輸出依存度は高いままなので、今のアメリカや ユーロ圏を脅かす諸問題に、日本も影響を受けやすい。そしてアメリカやユーロ圏の問題は円高によってさらに悪化している」とも記事は指摘。「世界経済はい ま危険な状態にあり、日本経済ももちろん影響をうけかねない。もしアメリカが景気後退に陥れば、日本もおそらく後に続くだろう」というエコノミストの見方 も紹介しています。
さらに、ロンドンのコンサルティング会社キャピタルエコノミクスは調査報告で、日本が「景気後退に戻ってしまわないようにするには、景気刺激策を追加するしかないと考える」と指摘しているとのこと。
同じく短観を受けて英BBCは、 大震災で日本の製造業は打撃を受けたが、サプライチェーンが戻りインフラが再建されるに伴い、工場の生産量は上がっていると説明。ただし、欧州の債務危機 やアメリカの経済問題の影響で数カ月後の見通しが不透明なため、先行き見通しはそれほど改善していないし、欧米経済への懸念から円高が止まらないため、輸 出依存型の日本の製造業にとってよろしくない状態だと解説。
言うなれば、フィナンシャル・タイムズもBBCも、きわめてスタンダードな正統派の解説をしているわけです。日本は当面、円高を何とかしなくてはならないと。
これに対して10日付のロイター通信記事が、別の角度から分析していました。「日本にとって、円高を抑えるより円高と共存する方が簡単だ(Easier for Japan to live with strong yen than tame it)」という見出し記事です。
トマシュ・ヤノウスキ記者は、円高を抑制しようとしても効果があると思っている日本人は少ないと切り出しています。「世界第3位の経済大国が今ほ ど輸出に依存しなくなり、円が投資家にとってのセイフヘイブンでなくなるように」する方法は、いくつか思いつくが、いずれも効果が出るには時間がかかる し、実施するには(日本には存在しない)政治的な合意が必要だと書きます。だから誰もが、相変わらずおなじみの行動しかとらないのだと。
(続きはこちら)
記事いわく、おなじみの行動とは、(1) 輸出業者は、国内に生産拠点を残すという愛国行動はコストがかかりすぎると警告する、(2) 当局は介入するか、介入するぞと脅した上で、痛み止めがわりに助成金やソフトローン(長期低利ローン)を提供する、(3) 市場はすべて織り込み済みで粛々と対応すること、だと。
記事では仏銀行ソシエテジェネラルの在京エコノミストは、円の為替レートが高いか 低いかとは関係なく「すべてはロビー活動」ゆえのことだと話しています。「官僚は企業に何が欲しいか尋ねて、企業はこれこれが欲しいと答える」。それを受 けて政府は、日本企業による国内生産拡大と海外資産獲得を助成するのであって、為替レートは実際は無関係なのだと。
企業は実際には政府助 成がなくても円高のチャンスを利用して海外資産獲得に動くし、政府助成があっても日本の製造業の「空洞化」は抑止できないとアナリストたちは見ていると、 記事は書きます。日本企業が生産拠点を海外に移すのは、円高だけがその理由ではなく、低い税率や安い労働力や成長市場との近さも要因なので、円高対策だけ とっても解決にはならないというのです。
(ちなみにこちらのAP通信記事は、楽天など日本企業が海外企業を次々と買収する「acquisition spree(買収三昧)」状態にあると書いています。ちなみに「shopping spree」とは買い物三昧であれこれ買いまくる意味の、よく使う表現状態です)。
ならばどうすべきかというと、短期的には政府は為替レートに汲々とするよりも、12兆円にもなる復興予算を経済につぎ込むべきだし、長期的には農産品などに市場を開放し輸入を促進し、輸出入を均衡させるべきというのが、この記事の提案です。
○その治療はなかなか厳しい
輸 入促進と内需拡大は、私が覚えている限り80年代くらいから言われ続けていることなので、この提案も「TPP」という三文字が頻繁にニュースに登場する昨 今でなければ、「何をいまさら」な感じがするものではあります。そして1980年代には必要性が声高には言われていなかった(と思う)ものの、バブル景気 による内需拡大で自ずと実現していたのが、外国人労働者の増大でした(当時を経験している人は、バブルとは切っても切れない建築現場や飲食店で中東や中南 米出身の外国人が大勢働いていたのを覚えていると思います)。
記事は、内需拡大と輸出促進のほかに、高齢化・少子化の進む日本にとっての 治療法は「周知だ」と書きます。社会的・政治的タブーを打ち破らなければ実現できないが、それでもどうすればいいのかは「周知だ」と。つまりは、外国人労 働者をもっと受け入れることと、伝統的な男女の役割の定義を緩めることだと。
後者について記事ははっきりとは書いていませんが、つまりは子育て中の女性がもっと労働力として市場に出る必要があり、そのためには保育ケアが今よりもっと安価に提供されなくてはならないというわけです。
ち なみに私が多少知っているアメリカやイギリスでは(そして在京のexpat=高額所得の欧米人の間では)、働く女性が出産後に比較的早く職場復帰できるよ うに保育・家事サービスを労働として有償提供するのは、多くの場合が外国人労働者だったりします。その全員が正規の就労ビザを持っているわけでは、決して ありません。つまり欧米では、女性の労働力活用は、外国人労働者の問題とセットになっているのです。
アメリカで、閣僚候補が不法移民の家 政婦を使っていたとか、ベビーシッターとして雇った外国人労働者について社会保障費や税金を払っていなかったとか、どこそこの金持ち夫婦が「au pair=家事手伝いをしながら外国語を勉強する人」を虐待したとか、そういうネガティブなニュースは後を絶ちません。外国人労働者を受け入れて、それに よって保育や火事サービス(さらには介護)を今より安価にしようとする場合、よほど注意深く制度設計して違反取り締まりを徹底しなければ、搾取が発生しか ねません。
欧米社会を揺るがす「移民問題」という一大問題を上手に回避して、日本が外国人労働者に本格的に国を開けるかどうか。もし日本経済の未来がそこにかかっているとしたら……それはかなりの難問のような気がしてなりません。
外国人労働者の受け入れ+出産した女性の再就業+内需拡大を実現すれば、日本にとって「最大の諸悪の根源(the biggest scourge)=デフレ」の対策になる。デフレこそが、慢性的な円高の原因でもある(デフレで購買力が上がる円に対して、ドルは購買力が下がり続けているので)。デフレを何とかしなければ、円高は続く。それが、このロイター記事の主張です。
つまり病気の比喩をしつこく使うなら、デフレこそが病で、円高は症状ということでしょうか。そして治療法は、内需拡大と女性の再就業と外国人労働者受け入れだと。
政治的・社会的タブーを打ち破らなくてはならないと記事は最初に釘をさしてある。まさにその通りです。良薬口に苦し、という言葉が浮かびました。
(来週のコラムはお休みします)
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◇本日の言葉
・spree = やりたい放題、○○ざんまい
・scourge = 不幸のもと、諸悪の根源
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◇筆者について…
加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊や爆笑問題と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」 と「モンティ・パイソン」の洗礼でイギリス英語も体得。オックスフォード大学修士課程(国際関係論)修了。全国紙記者、国際機関本部勤務を経て、CNN日 本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」(朝日新聞出版)など。
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