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日本、欧州そして米国に失業の嵐が吹き荒れている。
失業率が急上昇しているが、同時に多くの国で「財政危機」問題が進行しており、失業者に対するセーフティネットがこれまでのようには機能しない可能性が高い。
失業者への公的給付がそれなりの水準でそれなりの期間続くならば、失業者の精神的問題は別として、国民経済及び世界経済への打撃は緩和されるが、財政緊縮=財政再建が錦の御旗になっている現在それが危うくなっている。
この点で、08年のリーマンショック以降の失業者増大は、政治的にも経済的にもこれまでと違った“危険性”を孕んでいると言えるだろう。
政治的な“危険性”の兆候は、ウォール街から始まった金融界批判のデモであろう。
経済的には、「過大債務国家の国債危機」よりも、先進国における失業者の増大と失業手当給付削減のほうが実体経済に打撃を与えるという意味でより深刻だと考えている。
ある主要先進国で起きた購買力の低下はすぐに世界レベルで波及し、それがさらに最初の国民経済の購買力を減少させるという悪循環に陥る。
後ろで引用する記事の最初のもののなかにある、「日本の政策当局者は「新興国で中間層が台頭する一方、先進国では中間層から脱落する人々が増えている」と分析する」とか、「若年層失業率が比較的低いドイツも例外ではない。連立政権の幹部は同国でもこの数年で中間層から10%が脱落したと指摘し、「ミドルクラスの没落が民主国家の最大の問題になった」という話は、極めて深刻な事態を意味している。
この「ミドルクラスの没落」は、リーマンショック後の短期的不況に起因するものではなく、かつて阿修羅での投稿で示したように、“ゆがんだ新自由主義”経済政策に起因する構造的長期的なものであることに深刻さがある。
雇用の拡大(失業者の減少)は、“調整”(不況が底をつき回復に向かうこと)と中国を筆頭とした新興国の動きで達成される可能性が高いと思っているが、それは同時に「ミドルクラスの没落」を増進することになるだろう。肩書きや職種はともかく、失業前に得られていた賃金水準を大きく下回る再就職となる人が増加するはずだ。
そして「ミドルクラスの没落」は、アッパークラスの下位を少しずつ浸食することにつながる。安泰なのは、銀行家(オーナー)に代表されるアッパークラスのごく上位だけだ。
さらに、最初の記事で大きな問題とされている若年失業率の高さは、今後の世界を支える人々の多くから夢と希望を奪い続けていることを意味する。
これは、先進諸国の国家社会の在り様を根底から揺さぶる可能性がある。
それが改革といういい方向に出ればよいが、悪い方向に出れば、荒んだおぞましい国家社会に変容しかねないと思っている。
自ら富裕税を主張しているバフェット氏はわかっているようだが、低中所得者にお金を配っても、結局は供給主体(企業や金融会社)に回ってくるものであり、その循環こそが高額所得者や企業の利益の源泉であることを忘れた“ゆがんだ新自由主義”は、世界経済を破壊することになるだろう。
※ “ゆがんだ新自由主義”とは、金融家や多国籍企業が自己の利益を最大化する目的に利用する自由主義で、リーマンショックでもわかったように、自分の利益のためなら国家による救済という“社会主義”を正当化する考えを指す。
“ゆがんだ新自由主義”を推進している人たちは、「利益は自分のもの、損失は国家社会のもの」という不埒極まりない考え方をした恥知らずな連中である。
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[日経新聞 10月6日朝刊P.7]
若年失業急増 揺らぐ欧米:スペイン40%超 米国17%に上昇:是正訴えデモ激化
欧米で若年層の失業と所得格差の拡大が社会を揺さぶる問題として急浮上してきた。欧州では緊縮財政への反対デモが激化、米国でも格差是正を訴える若者らの運動が始まり混乱が広がっている。新興国とのコスト競争により企業の海外移転や賃金低下が進んでいた
ところに、欧州の債務危機が重なった。国民の反発は政府が危機克服に必要な政策を断行するのを難しくしている。
若年層の失業率の上昇は際立っている。欧州連合(EU)統計局によれば、スペインでは22007年に18%だった25歳末満の失業率が8月時点で46.2%に達した。各国ともリーマン・ショックが起きた08年から失業率の上昇に拍車がかかっており、EU27カ国では8月時点で500万人強(20.9%)の若者が失業している。米国の若年失業率も07年の10.5%から8月に17.7%に上がった。
若年層の失業率が際立っている
国名 25歳未満失業率 全体の 失業率
スペイン 46.2%(19.7) 21.2%
ギリシャ 42.9%(26.0) 16.7%
イタリア 27.6%(24.0) 7.9%
フランス 23.5%(20.3) 9.9%
英国 20.9%(12.2) 8.8%
米国 17.7%(11.3) 9.1%
ドイツ 8.9%(15.2) 6.0%
※ なぜか記事にはない日本のデータは投稿者が付加。日本は東日本大震災&原発事故で全国ベースの統計がとれていない。若年層の失業率は2010年平均・失業率は8月の暫定全国ベース。
日本 9.4% 4.3%
(注) 2011年8月の失業率(英国は6月)、EU統計局調べ。カツコ内はOECD調べの05年末
所得格差も拡大
所得格差の拡大も顕著だ。米国では上位1%の所得が全体の20%を超え、過去90年で最高となる一方、「貧困層」の人口は統計がある過去52年で最多となった。英国では上位10%と下位10%の資産格差が100倍超に広がったという。経済協力開発機橋(OECD)の調べでは、格差を示す指標(ジニ係数)が多くの国で悪化傾向にある。
背景には中国など新興国の台頭とコスト競争にさらされる企業による雇用や生産拠点の海外移転加速がある。グローバル化の波は社会の多数派で安定志向が強かった中間層に打撃を与えている。
OECDの今年の調査によると、「貧困層」(所得水準が国の家計全体の中心値の50%以下)の割合が各国で上昇。米国の17%を筆頭に日本、スペイン、イタリア、英国などで軒並み2ケタの水準に上がった。
日本の政策当局者は「新興国で中間層が台頭する一方、先進国では中間層から脱落する人々が増えている」と分析する。
若年層失業率が比較的低いドイツも例外ではない。連立政権の幹部は同国でもこの数年で中間層から10%が脱落したと指摘し、「ミドルクラスの没落が民主国家の最大の問題になった」と語る。
欧州不安に拍車
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのカセリ教授は「冷戦後、自由主義思想が広まり、格差を許容するような面もあったが、今、巻き返しが始まっている」と指摘する。債務危機に陥ったギリシャでは5日、政府の緊縮策に反対する官民労組の大規模なゼネストが始まった。政府が掲げる公務員給与や年金支給額の削減などの履行が危ぶまれ、欧州信用不安に拍車を掛けている。
欧州では不満の矛先を移民に向け、「職を奪われた」などと移民排斥を訴える極右勢力の台頭も目立ってきた。雇用問題に有効な手立てが見当たらぬなかで、「先進国が直面しているのは民主主義の危機」(仏の人口学者エマニュエル・トッド氏)との声も出ている。
(国際部 古川英治)
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[日経新聞10月8日付朝刊P.7]
米、失業の長期化深刻 「1年以上」3人に1人 格差拡大に拍車
【ニューヨーク=西村博之】米雇用の回復が遅れるなか、失業期間が長引く人たちが増えている。失業者の3人に1人は1年以上も職がない異例の事態。7日発表の米雇用統計では非農業部門の雇用者数が増加基調となったが、平均失業期間はさらに長期化した。失業が長引く間に技能などが失われ、長い目でみた米経済の生産性が低下し、経済成長の純化や格差拡大に拍車をかけるとの懸念が強まっている。
「仕事をくれ」。ニューヨーク市ウォール街近くの公園で続くデモで、20代の若者はそんな看板を掲げ抗議を続ける。「働く意志がある人が、こんなに仕事にあぶれているのは異常だ」。
米景気回復は丸2年が経過したが、雇用情勢は厳しい。7日発表の米雇用統計を受け、ニューヨーク株式市場で同日午前、ダウ工業株30種平均が続伸。ただ、上げ幅は100ドル程度にとどまり、反応は鈍い。
金融危機以降、失われた雇用は約800万人に対し取り戻したのは約200万人。高校や大学を出ても働き口のない若者が多く、デモはそうした不満も背景だ。
過去の景気回復局面と違い、今回はいったん職を失うと再就職が難しく、失業が長期に及ぶのが特徴。9月の平均の失業期間は前月比0.2週伸びて40.5週となった。戦後最長で金融危機前の約2.5倍の長さ。この結果、失業者約1400万人のうち、1年以上職がない人が約450万人と3分の1を占める。
背景にあるのは雇用のミスマッチ。住宅バブル崩壊で建設関係の失業者が大量に出たが、採用が比較的多いIT(情報技術)分野などの技能獲得は容易でない。金融などホワイトカラーは失業前の報酬にこだわり再就職を拒む例も目立つという。
米フォード・モーターなどが新規雇用を決めたものの、米郵政公社(USPS)が大規模なリストラに乗り出すなど雇用が大きく増える状況にない。「景気悪化で失業率が再び9%台半ばに上昇する可能性がある」 (米金融大手ゴールドマン・サックス)との指摘も出る。
足元では長期失業による所得減で消費が落ち込み企業の生産にも響く。
「住宅ローンの支払いが滞り自己破産が増える要因」(米銀大手)。中長期での懸念は経済の生産性低下だ。仕事から長く遠ざかると工場労働者なら技能が、営業マンなら人脈などが失われる。そのため企業は長期失業者の採用に尻込みし、問題はますます深刻になる。
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