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金本位制を望む人が多いように思う。
ペーパー・マネーに対する不信だと思うが、それを金本位制に結びつけるのは間違いだと思う。
*****金本位制の時代は・・
金本位制の時代は、すべての通貨が「金と交換が可能」であり、為替レートは「金を通じて」固定されていた。
どこの国でも、金を20g使って、金貨1枚を鋳造すれば、どこの国の金貨でも同じ価値を持つ。その金貨を円で呼ぼうが、ドルで呼ぼうが、交換価値は不変だ。
金本位制は、金と交換できる紙幣(=兌換紙幣)の発行量は、原則として「保有する金」の量と等しいのだが、「多くの人が同時に紙幣を金に交換要求しない」という前提で、
(1)金本位制の開始時には、必要以下の金しか保有していない
(2)その後も「金が国際的に流出入」するので、金が不足する状態の国が多かった、
というのが実態だった。
金本位制の時代においては、「金の保有量」は経済の健全性のバロメータと言われてきた。
*****経済調整が困難な金本位制
金本位制の下では、貿易赤字傾向の国(明治初め〜1931年の金本位制廃止までの日本)では、経済運営が困難だった。
経済が不調(=通常は貿易赤字の拡大)になれば、常に「金の流出」に悩まされた。輸入代金の支払いで、対外的に通用する通貨である「金貨や金塊」の所有権が海外に移転するからだ。
金の残高が減少したからといって、紙幣を減らすという事など事実上不可能だったので、流出防止のために「金利を引き上げて、紙幣の魅力を高める」しかなかった。しかしそれは、かえって経済を悪化させた。
この「かえって経済を悪化させた」に関しては、1998年のアジア危機に際して、金利を下げて経済を立て直すべき時に、IMFが、タイや韓国に対して金利を引き上げて通貨価値を維持するように命じたが、まさにIMFは金本位制の遺物を引きずっていたと言える。
金本位制では為替が固定なので、経済の好不調が引き起こす対外的な信用リスクの変動(=現在で言えば、ソブリン・リスク)は、金利の大幅な変動が一方的に受け止めるしかなかった。
今日的に言えば、景気安定のための金融政策が、貿易収支に縛られる、という困った状況を意味する。
貿易赤字であるかぎり、金利を高めにする必要があり、景気が悪くても、国内産業の金利コストは高止まりした。
*****不換紙幣&変動相場制で、経済政策の自由度を得た
1971年の「金とUSドルの交換停止=ニクソン・ショック」を経て、世界の通貨は「不換紙幣&為替レート変動相場制」に移行した。
経済運営という点では、金融経済政策の自由度が増した。
経済の好不調が引き起こす対外的な信用リスクの変動は、為替レートと、金利との2段構えで引き受けることができるようになった。
貿易赤字が増大して、対外債務の返済懸念などの対外的な信用リスクが悪化すると、人為的な抵抗を行わなければ、まずは為替レートが悪化する。
兌換紙幣・金本位制の時代のように、金利を引き上げて紙幣の魅力を高めて為替レートを維持しようという人為的な抵抗も1990年代までは見られたが、通用しないことが理解されたので、現在では素直に為替を下落させるケースがほとんどになった。 )
為替安が貿易の競争力を改善させるので、経済は徐々に回復する。この結果、対外的な信用が回復することを受けて、下落した為替レートは元のレベルに上昇する。
経済が不調の時は通常は金利を引き下げているので低金利が景気を刺激する。
それにも拘わらず、低金利&為替安でも経済が回復せず、貿易赤字が減らない状態が長期継続すると、対外債務返済懸念がかなりのレベルまで上昇する。
この段階に至れば、同国の債権やローンが投げ売られるので、債券価格の暴落=金利の大幅上昇が起こる。景気が悪くても金利が上昇するので、その国は再起不能に陥る。
このような事態になる国は、外人が所有する外貨建てのローンや債券が多いのが通例だから、外人が大量の債権売りを浴びせる。
外人には外債発行国に対する愛国心などといった邪念がないから、素直に脱出的売却を行う。
*****共通通貨ユーロに参加したギリシアは、経済政策が不自由に・・
ギリシアは、欧州17か国の共通通貨ユーロに参加してしまった。
★貿易相手国のほとんどがユーロ採用国なので、景気が悪化したり、貿易赤字が増大したりしても、為替レートを変動させることができない。
対外的な信用リスクを、為替と金利との2段構えで引き受けることが制度的に不可能だ。
★経済の不調⇒ 信用リスクの悪化⇒ 債権の投げ売り⇒ 金利の大幅上昇⇒ 経済悪化が加速⇒ 再起不能、という悪循環への一本道になってしまったのが、ギリシアの姿と言えよう。
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