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「東洋経済オンライン」野口悠紀夫の《日本の選択》2011年10月03日 「スマホも日本でガラパゴス化する」(週刊東洋経済2011年10月1日号)を下記に転載投稿します。
=転載開始=
スマートフォンの普及が日本では著しく遅れていると、前回述べた。2011年8月末時点での携帯電話契約件数は1億2654万であるが、スマートフォンのシェアは1割にも満たない。
日本でスマートフォンの普及が遅れている原因はいくつかある。第一は、日本企業が閉鎖的でインターネットのクラウド的利用をしていないため、スマートフォンをビジネスに活用しにくいことだ。前回述べたように、会社情報をGメールにのせることは多くの企業が禁じている。スマートフォンの大きな利点はGメールをどこでも見られることだが、それが禁じられていれば、スマートフォンの利用価値は大幅に減少する。
また、電波環境も悪い。無料のWi−Fiを使える場所はほとんどない。アメリカでは無料のWi−Fiが利用できるスポットがたくさんある。空港、公園、ホテルのロビー、スターバックスの店舗等々。
クラウド時代以前から、日本におけるインターネット利用環境は貧弱だった。ホテルの部屋に回線が来ていても、いまだに高い利用料金を取られる。アメリカのホテルやモーテルでは、高速回線を無料で使えるのが普通だ。クラウドの環境は社会インフラだ。それがないところでは、クラウド機器の利用は進まない。
スマートフォンが普及しないもう一つの理由は、「今の携帯電話のほうが便利」と考えている人が多いことだ。実際、日本の携帯電話は、さまざまな機能を持った世界でもまれな「高級機」なのである。しかし、これは日本の先進性を示すものではない。それどころか、日本の病理現象の結果なのだ。
■SIMロックと「ガラケー」
日本の携帯電話が「高機能」であるとは、さまざまなことができるという意味である。「おサイフケータイ」で財布代わりになったり、「ワンセグ」でテレビが見られる。私はこうした機能を一度も使ったことがない。必要ないからだ。私にとって重要なのは、PCとの間でデータの交換ができることである。それができれば仕事の効率は大きく上昇するし、できなければ役に立たない。
なぜこのような高機能を提供できるかといえば、顧客の囲い込みがなされているからだ。日本では、後で述べる事情により、機器と回線利用がセットで販売されている。ある機器を買った人は、特定の事業者が提供する回線しか利用できず、料金やサービス内容を見て他の回線に乗り換えることができない。
回線提供者の立場から見ると、利用者が離れないので、安心してさまざまなサービスを付与できる。その結果、日本の携帯電話は異常に高機能化し、異常に高価な機器となり、日本以外の国では売れない製品となった。日本の携帯電話が「ガラケー(ガラパゴス携帯)」と呼ばれるのはこのためだ。日本は世界標準からずれているのである。
携帯における囲い込みは、「SIMロック」という方式で行われている。現在使われている第3世代携帯電話(3G)では、電話番号やネットワークの情報が入っているSIMカードを端末に挿して使う。
現在の日本では、特定の端末は、特定の事業者のSIMカードしか使えないようになっている。この状態をSIMロックと呼ぶ。ロックされていない機器(ロックフリーの機器)も販売されているが価格が高い。
このため、端末を売れば必ず通信料金を確保できる。SIMロックが解除されればユーザーは端末と通信サービスを自由に組み合わせられるようになり、事業者を乗り換えたり、好みの端末を買いやすくなるが、それができないのだ。
SIM方式は、もともとはヨーロッパで一つの端末を多くの国で使うためにできたものだ。国境を越えても、SIMカードを替えるだけで同じ端末を使い続けられる。多くの端末はSIMロックなしで売られているので、購入者はSIMカードを購入し、買ってきた端末に入れることで電話として機能させる。
このため、ノキアはヨーロッパ全域を市場として、価格を下げることができた。そして、販売台数で世界のトップにたった(メーカーの順位は表のとおり)。
●携帯端末の世界販売台数とシェア
企業名 2011年度第1四半期(台) 2011年度第1四半期シェア(%)
ノキア 1億0755万 25.1
サムソン 6878万 16.1
LG 2399万 5.6
アップル 1683万 3.9
RIM(リサーチインモーション) 1300万 3.0
ZITE 982万 2.3
HTC 931万 2.2
モトローラ 878万 2.1
ソニー・エリクソン 791万 1.9
ファーウェイ・テクノロジーズ 700万 1.6
ほか 1億5477万 36.2
合計 4億2784万 100
(出所:ガートナー)
日本国内で販売されている端末はSIMロックされているものだけなので、海外で携帯電話を利用する場合にはローミングという仕組みを使う。この料金は非常に高い。もともとは国境を越えて使うために導入された仕組みが、日本では逆になっている。
「アジアとの経済統合を進めるべきだ」としばしば言われるが、現実はこのような状態なのだ。フィリピンとFTA(自由貿易協定)を結んでも、看護師試験で事実上排除しているが、それと同じことだ。
こうした状態はPCにもあった。かつて日本では、NECの9801が「国民機」と言われた。アメリカのPCは日本語で使うのに難点があったので、日本では国産機しか使えなかった。つまり典型的な「ガラパゴス現象」の条件があったのだ。しかし、この状態は、MS/DOSの登場で一挙に破壊された。今では、日本のPCメーカーは見る影もない。
■日本の競争は囲い込み競争
携帯電話と同じことが、スマートフォンでも生じる可能性がある。なぜなら、SIMロックはスマートフォンにも持ち込まれているからだ。
iPhoneの回線はソフトバンクモバイルが提供しているが、SIMロックがかかっていて、他社回線を利用することができない(海外で販売されているiPhoneはSIMロックフリーなので回線は自由に選べる)。ソフトバンクはiPhoneという超ヒット商品を日本で独占しようとしているのである。
この状態を打ち破ろうと、今年4月、NTTドコモがiPhoneなどでも使えるSIMカードを発売した。しかし、ソフトバンクがiPhoneのロックを解除しないと、ドコモの回線でiPhoneやiPadを使えるようにはならない。
日本にも競争はある。しかし、それは電波の質と価格の競争ではなく、利用者の囲い込み競争だ。これは一見したところ競争に見えるが、前回述べたクラウド大戦争とは本質的に異質のものである。なぜなら本来の競争は進歩をもたらすが、囲い込みは停滞とガラパゴス化しかもたらさないからだ。かくして日本ではスマートフォンにも、おサイフやワンセグ機能が盛り込まれるだろう。
2001年、ソフトバンクはADSL回線を導入してドコモの独占状態に穴をあけた。このとき、多くのユーザーは拍手を送ったことだろう。しかし、かつての革命の旗手は、今やSIMロックで地位を守ろうとしている。
ジョージ・オウエルは、『動物農場』で、動物たちが人間の支配に反抗して革命を起こしたが、結局、豚のナポレオンが独裁者になってしまう物語を書いた。これは私が高校生のときの英語の副読本だった。ハンガリー動乱の直後だったので、たいへん興味深く読んだ。そのときには、社会主義に未来がないとは想像できなかった。しかし、今は社会主義経済が消滅した理由がよくわかる。そして、競争が囲い込み競争だけになってしまう国に未来がないことも、よくわかる。
=転載終了=
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