http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/515.html
Tweet |
取り敢えず、日本の技術をこっそり組み込んだ原発を格安で輸出するのは難しくなったか
http://jp.wsj.com/World/China/node_318252?mod=MostPopularBlock
中国高速鉄道、海外技術の理解でつまずき
2011年 10月 3日 20:43 JST
【上海】中国は高速鉄道について、国の威信をかけた国産品だと自賛している。最も速く最も進んだ鉄道システムは、自国の優れた技術が並ぶショーケースだ、と。
7月23日の事故
しかし、同国の高速鉄道網は輸入部品でできている。列車同士の衝突を防ぐ信号システム部品もその1つ。同国エンジニアはこの信号システムを完全には理解できていなかったことが、国内外の鉄道業界幹部十人以上へのインタビューや企業文書の調査でわかった。
7月23日に浙江省温州市で発生した高速鉄道事故は、死者40人、けが人200人弱と、世界の高速旅客鉄道事故で最悪の部類に入る。中国政府は当初、信号の欠陥と人的エラーが原因としており、近く最終的な調査結果を発表する。
ただ、事故の厳密な原因はまだ確かでなく、そのため信号部品がどう絡んだかを知る方法はない。
中国による海外高速鉄道信号システム技術の利用状況を調査すると、同国工業化モデルに対する海外の不信感が浮き彫りになる。たとえば知的財産権が十分に保護されていないため、中国企業が最新技術を獲得しようとするときに複雑な事態が起こりうる。
主な信号システムを組み立てたのは、中国鉄道省が指名した企業の1つで北京を拠点とする和利時自動化駆動技術だ。消息筋によると、同社が供給した信号システムは、和利時が自家製品とうたっているものの、同社仕様に合わせて日立が作った電気回路が含まれているケースもある。
消息筋によると、日立は中国人エンジニアに技術を盗まれることを恐れ、内部構造を和利時に隠して部品を販売したことが分かっている。日立幹部らによると、この「ブラック・ボックス」設計のために、装置をコピーすることや、試験などで装置を理解することが一段と難しくなる。
日立のある幹部は、和利時のような企業がどうやって、日立のノウハウを詳しく知らないまま安全信号システムにその技術を取り込んだのか、謎だと述べた。
数十の装置、電気回路、ソフトウェアが複雑に組み合わさった鉄道信号システムは、運転手や発車係による安全な運行を助けている。列車が路線の無線標識を通過すると、通過した場所やスピードに関する情報が列車管理ネットワークにフィードされる。和利時の声明によると、同社は車中の自動列車保護装置(ATP)をはじめ、このシステムの主な部品を供給している。日立幹部によれば、同社は和利時にATPの主要部品を供給していた。
和利時からのコメントは得られていない。7月の衝突の2日後、同社は両方の列車に自社ATP部品が使われていたことを声明で確認。自社部品は「正常に機能していた」と訴えた。
海外企業と共同で高速鉄道プロジェクトの大半の装置を供給していた中国国有の別の信号メーカー、中国鉄路通信信号集団は、「悲しみ」を表す声明を同時期に発表。自らの責任を受け入れる意向を示した。
予算額が3000億ドルに近い中国高速鉄道は、既に北京・上海などの路線でジェット旅客機の所要時間に挑んでいる。最高時速は350キロを超えるとうたわれるこの鉄道は、中国が大型インフラプロジェクトで米国、欧州、日本と同等に扱われる将来を表す。中国は米ボーイングに対抗する飛行機や東芝傘下のウェスチングハウスに挑む原子炉を設計している。既に鉄道関連の輸出もあり、9月にはグルジアと高速列車用機関車の供給契約を締結した。
中国は、日本やドイツが10年以上かけて構築したより大規模な高速鉄道網を7年足らずで構築した。ただ、24の主要都市を結ぶ総延長1万マイル弱、15年がかりの高速鉄道網構築プロジェクトは道半ばだ。
4年前、当時の劉志軍・中国鉄道相は、「世界最高の技術を目指す」と宣言した。今年7月の衝突事故の数カ月前、中国共産党が同氏をはじめとする高官の不特定の汚職を告発し、同氏は解任された。同氏に取材を試みたが、居所がつかめなかった。
7月の列車衝突事故――悪天候のなかで高速鉄道が追突脱線事故を起こし、車両数両が65フィート(約20メートル)の高架から転落した――は、同プロジェクトを高度な技術と安全性重視と表現する中国政府の努力に影を落としている。中国の国家避雷技術基準委員会のディレクター、He Jinliang氏は7月に、主要インフラプロジェクトに対する業界団体の推奨にもかかわらず、中国鉄道省は高速鉄道路線の一部に避雷針やサージ電圧の保護装置を設置しない選択をした、と言及していた。
中国鉄道省はコメントを求める取材に返答していない。国営メディアと同省のウェブサイトを通して、同省は安全への注力を強調している。9月5日の声明で、同省は「同省幹部が率先してやり方を変更し、草の根レベルで問題の解決を試みるべきだ」と表明した。
先週、中国当局は上海市で起きた地下鉄の追突事故の後、安全公約を繰り返し表明した。地下鉄の運営会社によると、280人以上が負傷した今回の事故は信号系統のトラブルが原因とされる。
高速鉄道プログラムの開始当初から、中国政府は海外の専門知識を有した企業ではなく、和利時をはじめとする国内企業に目を向けた。和利時は、中国の最速列車に使用される特定のシグナル技術を提供できるわずか2社のうちの1社だと説明していた。中国鉄道省の規定のために、プロジェクトの入札への外国企業の参加は事実上、禁止されている。
和利時は高速鉄道に関しては経験がないにもかかわらず、信号システム、電気回路、ソフトウエアの中心的な供給元となった。そうしたシステムは、問題発生時に自動的に列車を停止させることにより、7月のような事故を防ぐはずのものだった。
列車関連企業の幹部らによると、特に中国の列車網の拡大ペースでは、信号部分の導入が難しい課題だ。フランスの高速鉄道TGVを運行するフランス国鉄SNCFの技術革新ディレクター、マーク・アントーニ氏は、「課題はパズルの一片一片をつなぎ合わせて理路整然としたシステムに作り上げることだ」と述べた。
和利時はもともと中国の中央省庁の一部で、1990年代に、「制御」――工場の組み立てラインをスムーズに動かす技術――に特化した民営企業となった。中国政府が高速鉄道網の建設を始めたのとほぼ同時期の2005年に、同社は初の注目に値する高速鉄道信号系統の契約を獲得した。
その1年後、和利時は米証券取引委員会(SEC)への届け出書類で、高速鉄道信号系統の重要性を軽視し、産業用制御の中核事業の「隣接」事業と表現していた。また、この分野は2006年のSECへの300ページに及ぶ届け出書類のなかで1回言及されただけだった。同社は特別目的買収会社(SPAC)を通した米ナスダック市場での株式公開を目指し、同書類をSECに提出した。
2008年終盤に中国政府は、外需低迷のなかで同国経済を支える目的もあり、高速鉄道の建設をスピードアップした。和利時は規制当局への届け出書類の中で、鉄道省に最速路線の信号系統を提供する「能力」を持ち合わせたわずか2社のうちの1社だと表明していた。
和利時は有数の技術企業となり、同社のピーター・リ最高財務責任者(COO)は2009年9月、アナリストとの会合で鉄道省による国産重視の政策が追い風になっていることを認めた。リ氏はアナリストの1人から競争を懸念しているかどうか問われ、「基本的に、外国勢は高速鉄道プロジェクトに単独では入札を許可されていない」と答えた。
和利時の発表文によると、鉄道省は2010年だけでも同社に1億ドル(約77億円)を上回る高速鉄道信号系統の契約を発注した。和利時の2011年6月期の総売上高は2億6284万ドルだった。
また、イタリアの機械製造大手アンサルドの広報担当者、ロベルト・アラトゥリ氏によると、同社が中国市場への参入を求めた際、中国鉄道省は和利時との提携という形を取るべきだと示唆した。
その後、2008年7月に和利時・アンサルドの企業連合は河南省鄭州市と陝西省西安市を結ぶ、当時の中国で最速の鉄道路線(459キロ)での信号制御システムを設計・建設・維持する9700万ドル規模の契約を獲得した。和利時はこの事業で2200万ドルを得た。
和利時によると、同社は日立と長期間にわたり付き合いがあるという。日立は和利時が信号事業を始めた2005年から、高速鉄道の信号部品を和利時に供給している。主な協力関係はATPシステムに関するものだ。和利時の文書によると、これは列車の先頭と最後尾の部分についている部品で、「安全を守る最後のとりで」だという。
この日立製の部品には仕掛けがあった。この件に詳しい日立の幹部2人によると、日立は業界で「ブラック・ボックス」と呼ばれる手法を採用し、日本語で言う「図面」を公表せず、設計上の秘密を守ったのだ。
ブラック・ボックス化することにより、装置をリバース・エンジニアすることが難しくなる。また、中国でのこの事業に詳しい複数の企業の幹部によると、問題が起こったときにそれを解決するのも難しくなる。
日立のある幹部は、図面を提供することは、相手企業を完全に信頼するということで、相手企業が他の市場で競争上の脅威とならないと判断したということだと語る。
日立が常に設計上の秘密を公表しないわけではない。同幹部によると、一般的な、複数の業者が参加し推進される大型鉄道プロジェクトでは図面を提供することもあるという。
日立の幹部によると、和利時との合意は、技術面での詳細を提供することが求められる技術移転契約ではなく、和利時が提供した詳細に基づいて部品を提供するという契約合意だったという。ただし日立によると、こうした種類の契約で一般的な、限定的な技術提供は行った。
日立のブランド・コミュニケーション本部、広報・IR部の紺野篤志氏は、日立が和利時に対して車上設備に使う一部の部品を納めていると認めたが、「その部品を使用して組み上げた中国産設備の詳細については把握していないため、コメントできない」と述べ、また「当社の部品については、技術的な内容も含めて説明をしており、先方は正しく理解しているものと考えている」と話した。
この件に携わったある欧州のエンジニアによると、和利時の部品の導入で、スムーズに進まなかったものが少なくとも1つはあったという。ATPの一部分で、ドライバー・マシン・インターフェースと呼ばれる和利時の車上コンピュータがフリーズし続け、古い情報を映し出したという。
このエンジニアによると、列車システムを微調整する際に技術的なバグが見られるのは珍しいことではないが、一時的な修正にとどめるのは珍しいという。開通式典のキャンセルという事態を避けようと、高速鉄道の運行は開始された。そして運転室には、コンピュータの時計の秒表示が動きつづけているか監視するという仕事に専念する要員を1人置いた。コンピュータが機能していることを確認するためである。
このエンジニアは、この問題はのちに解決されたと話した。
アルストムで中国事業の責任者を務めるドミニク・ポールケン氏は、中国と中国への鉄道装置の供給者は、まだ学習段階にあるという。ポールケン氏は先週、記者グループに対して「まず、技術を獲得する。次にそれを吸収し、続いてそれをマスターする必要がある」と話した。中国に関しては「10年かけて獲得した技術を、吸収してマスターするという問題だったと思う」と述べた。
アルストムは7月の事故が起こった際、合弁企業を通じて操車機器を供給していた。ポールケン氏によると、中国側が欠陥の可能性を指摘している信号技術に関しては、提供は行っていないという。
8月の株主への書簡で、和利時の最高経営責任者(CEO)であるワン・チャングリ氏は事故を「悲劇的」と表現し、和利時の機器に責任はないと繰り返した。中国最大の信号企業、北京の中国鉄路通信信号集団(CRSC)の一部門である、北京の北京全路通信信号研究設計院は事故の直後、「後悔の念」を表明し、「責任を引き受ける」とした。
CRSCは8月23日の文書で、55歳の馬騁会長が事故調査で質問を受けている最中に倒れて死亡したと述べている以外は、事故についての直接的な言及を避けている。
記者: James T. Areddy and Norihiko Shirouzu
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。