http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/510.html
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グローバル化が進んだ世界経済では、先進国での一時的なバラ撒き財政支出や減税では、景気拡大効果は持続せず、為替安とインフレ、そして将来の財政悪化・増税予想による実質消費減少のために、財政悪化というオマケをつけて、不況へと逆戻りする。
そしてバラマキの恩恵による既得権を人々は手放したくないため、歳出改革よりも、さらなる借金や、自分に害が及びにくい増税に賛成する。
成長戦略として借金(海外からのマネー、国債増発)に頼るのは、投資効率の悪い国の場合、国内産業の崩壊と、タダ乗り(公務員、高齢者・・)を増やすだけに終わるのはギリシャの失敗に限らない。
米国は高金利と金融規制緩和で海外から金を呼び込み、ドル高・借金バブル消費で経済成長したが、多くの国内産業は衰退し、バブルが崩壊した後では、膨大な失業者と一般大衆の所得低下、巨額の財政赤字と、弱い税収構造が残った。
そして海外へも不況と金融リスクを輸出した。
日本の場合、不動産バブル崩壊はローカルなものに留まったが、経済構造の変化では今、米国で進展していることと非常に類似している。
ちなみに不動産バブル崩壊は、消費と生産の停滞予測をきっかけとして、投資急減によって起こるため、先進国では少子高齢化進展による生産人口比のピークと一致することが多い。
日本の場合も借金余力のある間は財政再建は進まず、世界の金融・経済状況が変わった時に、急激に崩壊することになる確率は非常に高いだろう。
多重債務者にありがちなパターンだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110909/222543/?ST=top&rt=nocnt
ゲーム理論で説明する、財政改革が進まない理由 「ただ乗り」の気持ちが歳出削減を滞らせる
2011年10月6日 木曜日
小黒 一正
財政再建の手段として、通常、増税と歳出削減が考えられる。米ハーバード大学のアルベルト・アレシナ教授と伊ボッコーニ大学のロベルト・ ペロッティ教授は、財政再建を行った諸国を分析し、増税による財政再建よりも、歳出削減の方が成功しやすいと結論づけた。その場合、増税と歳出削減を「3対7」で組み合せることが成功法則の一つになると指摘している。つまり、もし10兆円の財政赤字縮減を目指す場合、3兆円の増税と7兆円の歳出削減が望ましい。この法則は有名で、一時は多くの新聞や雑誌が取り上げた。
財政再建に関する先行研究は、上記以外にも存在する。「オーストラリアやスウェーデンでは、歳出削減のために社会保障の抑制を試みた傾向がある」との指摘も多い。急速な高齢化に伴い、日本の社会保障費(年金・医療・介護)は毎年1兆円以上のスピードで膨張している。今のまま社会保障費が伸び続ける場合、10年で10兆円以上も膨張してしまう。日本の状況を考えた時、この指摘は重要である。
3対7の法則を見ると、歳出削減の方が増税よりも容易であるとの印象を受ける。この法則は日本にも適用可能であろうか。
既得権益ゆえに歳出削減は難しい
筆者は社会保障費の抜本的な削減を望ましいと思っているわけではないが、財政再建の成功法則を日本に適用するならば、社会保障費の抜本的な削減が不可欠であると考える。ただし、前回のコラムでも説明したように、民主主義というシステム上、一種の既得権益となっている社会保障費の抜本的な削減を政治が推進するのは相当の困難を伴う。例えば、若い世代の多くは医療費の削減に賛成するものの、年配の世代はむしろ増税によって医療費の維持を望む傾向が強い。その際、少子高齢化の進展により、年配世代の政治力が相対的に強い。
他方、社会保障費以外の歳出削減はどうか。
もはや日本財政が限界に達しつつあり、国民の多くが基本的に財政再建に賛同している。であるにもかかわらず、こちらも抜本的な削減ができない。
実際、政権交代前の民主党は、事業仕分けなどによる歳出削減によって16兆円の財源を確保すると公約に掲げていた。しかし、現実の成果は3兆円程度に留まっている。
他のプレイヤーに「ただ乗り」したい気持ちが歳出削減を遅らせる
このように歳出削減が進まない理由としては、様々なメカニズムがある。その一つとして、前出のアレシナ教授と米メリーランド大学のドレイゼン教授の「消耗戦」(War of attrition)」に関する議論が有名である。
この議論の主なポイントは、歳出削減などによって財政再建を進めようとする場合、その政策に関わる権益が、様々なプレイヤー(利益集団。例:官僚、医師会・農協・労働組合といった団体、勤労世代、引退世代)の間に分散している時、各プレイヤーは以下の2つの動きをする、ということだ。第1に、他のプレイヤーが自主的に既得権益を放棄して財政再建に取り組むことを期待する。第2として、自らが持つ権益は維持する誘因、つまり「ただ乗り」の誘因を持つというものだ。そして、この「ただ乗り」の誘因が財政再建を遅滞させると分析している。つまり、「総論賛成、各論反対」のメカニズムである。
この「ただ乗り」のメカニズムを簡単なゲームの図表を用いて説明してみよう。議論を簡略化するため、以下のケースを想定しよう。まず、経済にはプレイヤーがAとBしかいない。両者ともに政府支出から7の便益を得ている。財政再建を進めるためには、合計20の歳出削減が必要。
さらに、財政再建は経済成長を高める可能性を持つ、財政再建の先送り=過剰な公的債務の放置は経済成長を抑制する(ロゴフ仮説)と仮定する。財政再建を先送りして過剰な公的債務を放置し、最終的に財政危機に陥った場合には、経済が混乱し、各プレイヤーともに損失を被る可能性がある。これを数字で表すため、財政再建が達成できた場合、プレイヤーAとBは3ずつの便益を得ることができ、財政再生が達成できない場合はプレイヤーAとBは15ずつの損失を被ると仮定する。
以上の仮定でゲームを始めよう。20の歳出削減を図るため、両プレイヤーが▲10の歳出削減を承諾する場合には、両プレイヤーの利得は0(=最初の便益+歳出削減+財政再建の便益=7−10+3)となる。他方、プレイヤーBが、20の歳出削減をAのみに押し付ける場合、Aの利得は▲10(=7−20+3)、Bの利得は10(=7−0+3)になる。最後に、財政再建が先送りとなり、最終的に財政危機に陥った場合には、両プレイヤーの利得は▲8(=7−0−15)となる。
図表 歳出削減ゲーム
プレイヤーAの戦略
歳出削減を承諾 歳出削減に抵抗
プレイヤーBの戦略 歳出削減を承諾 (0、 0) (10、 ▲10)
歳出削減に抵抗 (▲10、 10) (▲8、 ▲8)
注:( )内の数字は、左がAの利得、右がBの利得
このような歳出削減ゲームでは、ゲーム均衡はどうなるだろうか。両プレイヤーが相手の意向を知ることなく行動する前提で、片方のプレイヤーが「相手のプレイヤーが歳出削減を承諾する」と予測する場合、歳出削減に抵抗する戦略を選択することが最適である(10の利得が得られる)。
他方、片方のプレイヤーが、相手のプレイヤーが「歳出削減に抵抗する」と予測する場合も、歳出削減に抵抗する戦略を選択する方が最適である。この時、8の利得を失うだけで済む。自らのみが歳出削減を承諾すると、相手プレイヤーのただ乗りによって10の損失を被る。
このため、ゲーム均衡は、両プレイヤーが財政再建に抵抗する(▲8、 ▲8)になってしまう。この背後にあるのは歳出削減の便益に対する「ただ乗り」の誘因にほかならない。
以上のゲームは、増税でも全く同じように成立する。基本的に、歳出削減が増税よりも容易とは限らない。社会保障費が毎年1兆円以上のスピードで膨張している今、このような視点も含め、財政・社会保障の再生を進めることが望まれる。
このコラムについて
子供たちにツケを残さないために、いまの僕たちにできること
この連載コラムは、拙書『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアムシリーズ)をふまえて、 財政・社会保障の再生や今後の成長戦略のあり方について考察していきます。国債の増発によって社会保障費を賄う現状は、ツケを私たちの子供たちに 回しているだけです。子供や孫たちに過剰な負担をかけないためにはどうするべきか? 財政の持続可能性のみでなく、財政負担の世代間公平も視点に入れて分析します。
また、子供や孫たちに成長の糧を残すためにはどうすべきか、も議論します。
楽しみにしてください。もちろん、皆様のご意見・ご感想も大歓迎です。
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著者プロフィール
小黒 一正(おぐろ・かずまさ)
一橋大学経済研究所世代間問題研究機構准教授。1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程終了(経済学博 士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、世界平和研究所主任研究員などを経て、2010年8月から現職。経済産業 研究所コンサルティングフェロー。専門は公共経済学。著書に『人口減少社会の社会保障制度改革の研究』(共著)、『世代間格差ってなんだ』(共著)などがある。
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