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先進国では、そろそろ緩和が拡大するが
財政拡張なしでは少なくとも先進国ではインフレ高騰にならないか
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/24458
病んだ英国経済への処方箋 蛇口を開き、締め付けを緩めよ
2011.10.04(火)
病に苦しむ英国経済には金融緩和と緊縮財政の軽減が必要だ。
世界経済の展望は、2008年秋以降で最も厳しく見える。バラク・オバマ米大統領は、ユーロ圏の危機が「世界を脅かしている」と発言した。欧州大陸への輸出に大きく依存する英国企業は苦しんでいる。
英国でも最大級の企業であるBAEシステムズは、欧米諸国で防衛費が削られていることを理由に国内で3000人規模の人員整理を計画している。英国経済はこの1年、ごくわずかに成長したが、その小さな勢いさえも失われつつある。失業手当の受給者数は、不安なほど急増している。
この暗雲を振り払うために、英国の政策立案者にできることはあるだろうか?
赤字削減計画に影を落とす景気減速
救いがあるとすれば、ユーロ圏の不安定な地域から慌てて逃げ出している債券投資家たちが、英国は財政再建に向けて正しい対策を講じていると確信しているように見えることだ。10年物英国債の利回りは2.5%まで下がっている。これはフランスを含む大多数のユーロ圏諸国よりも、倹約的なドイツの水準に近い数字だ。
英、0.5%利下げ ECBは据え置き
イングランド銀行は量的緩和に踏み切る構え〔AFPBB News〕
緊縮政策を推し進める英国政府は、経済再生の任務をイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)に委ねている。MPCは再び、紙幣を増刷して国債を買う量的緩和(QE)に踏み切る構えだ。
こうした非伝統的な政策も、米国と比較すると議論を呼ぶことははるかに少ない。米国では量的緩和をきっかけに、米連邦準備理事会(FRB)と共和党の政治家との関係が悪化している。
むしろ英国で政治的に困難なのは、財政政策に変更を加えることだ。
英国のジョージ・オズボーン財務相は、今議会において構造的財政赤字を一掃するという方針を頑なに堅持しており、財務相こそが景気回復を遅らせている張本人だという批判にさらされている。加えて、ユーロ圏への増大する懸念も、財政政策を多少なりとも緩めるよう求める圧力となっている。
ユーロ圏への懸念は、実際、英国に財政緩和の余地を与えるものでもある。ユーロ危機は世界第3位の債券市場であるイタリアまで波及した。つまり、安全だと考えられている先進国の国債の残高が劇的に縮小したということだ。英国債は安全な側にいるため、英国にはいくらかの余裕が生まれた。
英国の財政が懸念されていたよりは多少ましなことも、助けになっている。
英国の財政監視機関である予算責任局(OBR)の立ち上げに関わったジェフリー・ディックス氏の分析によれば、2010〜11年度の財政赤字は2年前の予想を400億ポンド(630億ドル)下回った。赤字見通しは着実に改善している(図参照)。
税収が好調であることが大きな要因だ。
現在はノーバス・キャピタルに所属するディックス氏によれば、今年度の当初5カ月間の実績を見る限り、財政赤字額は概ね、OBRが3月に予想した1220億ポンドまで減少する見通しだという。つまり、計画より少し早いペースで構造的な財政赤字を削減しているということだ。
しかし、不安定な経済情勢は、間もなく税収が減少し、社会保障の受給者が増加することを意味している。オズボーン財務相が掲げる主要財政目標はこうした「自動安定化装置」の影響を考慮に入れたものだが、それでも、2011年の痛みを伴う財政緊縮に加えて、さらに翌2012年の自由裁量予算で国内総生産(GDP)の1.6%に相当する緊縮を実行する計画は、今や厳しすぎるように見える。
緊縮財政の影響を緩和する方法
緊縮財政の影響を緩和する1つの方法は、学校の改修や道路建設などへの公共投資を増やすことだ。この方法だと、新たに投じられたカネが動くまでにある程度時間がかかるが、その一部が納税者に貯め込まれるだけになりがちな一時的な減税よりも確実な経済効果が期待できる。
また、この方法は経済学の正統派理論とも一致する。緊縮政策が実行されている間は、経常支出を削減する一方で、経済の潜在的な力を増大させる資本支出は維持すべきという理論だ。2012年の公共投資予算が、例えば50億ポンド増えても、債券市場が動揺する可能性は低い。
公共投資により、民間企業による補完的な支出が促される可能性もある。MPCの委員を務めるアダム・ポーゼン氏は、信用不足に関係した中小企業の投資不足が経済の弱さの一因だと考えている。中小企業は融資を受けるのに苦慮しているか、大手銀行を信頼していない。大手銀行は経営がうまくいかなくなった時に支援を続けてくれないと考えているのだ。
そこで、ポーゼン氏は中小企業への融資を目的とした政府系の銀行を立ち上げ、投資の不足分を補うことを提案している。同氏の見積もりでは、不足額は約300億ポンドだという。
問題の一因は、大企業が大金を貯め込みながら、それを使うことを恐れている点にある。しかし、信用が足りない中小企業も原因の1つだ。例えば自己資本20億ポンドの銀行を立ち上げれば、200億ポンドほどの融資が可能で、不足投資額のかなりの部分を補うことができる。銀行の立ち上げにかかる費用はそれほど多くない。その大部分は資本であり、利用が予想以下ならば戻すことができる。
すべての対策を合わせると、恐らくGDPの0.5%ほど財政赤字が増えるが、経常支出の削減分がいくらか相殺される程度だ。税収の減少を見込んでも、2012年の赤字はやはり、縮小ペースが落ちることはあっても、今年よりは小さくなるだろう。
量的緩和に踏み切るイングランド銀行
それでも、経済に活気を取り戻す任務の主要部分は、金融政策が担うことになる。MPCが先日行った会議の議事録によれば、恐らく11月頃に新たな量的緩和が実施される可能性が高いようだ。これは決して良いタイミングではない。10月と11月に報告される月間インフレ率が5%を超える見込みであるためだ。
ただし、インフレはこれがピークになる可能性が高い。バークレイズ・キャピタルのサイモン・ヘイズ氏は、2011年の付加価値税(VAT)増税とエネルギー価格の上昇分が年率計算から外れていくにつれ、来年はインフレ率が着実に下がり、12月までには目標の2%に落ち着くはずだと述べている。
イングランド銀行が独自に行った分析によれば、2009〜10年に実施した最初の量的緩和では2000億ポンドの国債を買い入れ、GDPを1.5〜2%押し上げることができたという。ヘイズ氏は、次の量的緩和はこれほど効果的ではないと考えている。その大きな理由は、他国の中央銀行が同調する可能性が低いためだ。
そのため、MPCは相当な金額を投じる決断を下し、最初に750億ポンドほど買い入れ、さらに追加するだろうと、ヘイズ氏は予想している。量的緩和によって大量の安全な債券が市場から消えれば、投資家はよりリスクの高い社債や株式に向かわざるを得なくなる。その結果、大企業の支出が増えるという流れが期待されている。
英国の政策立案者はあらゆる手を使って経済を刺激しなければならない。しかし、最終的に英国の運命を決するのは欧州かもしれないことは、彼らも承知しているのだ。
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