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「日本はダメだから中国進出」では勝てるワケがない
ニッセン佐村社長にインタビュー、日本企業が勝つヒントとは
2011年10月3日 月曜日
坂田 亮太郎(北京支局長)
私は2009年9月に中国の北京に赴任するに当たり、自分の取材テーマを「中国人に売る」と決めた。日本経済の中枢で働く日経ビジネスの読者諸氏に対して、中国大陸から発信する情報として最も需要があるテーマだと考えたからだ。
理由は簡単だ。人口が減り始めた日本で企業が成長するのは難しい。中国という広大なブルーオーシャンがすぐ隣に開けているのだから、レッドオーシャンの日本にとどまっている必要はない。多分にステレオタイプの論理ではあるが、それが日本の国益に資するという思いは今も変わっていない。
より直接的に言えば、経済的に豊かになった中国人から如何にカネを引っ張ってくるか。日本の企業人が頭を悩ます課題に対して、少しでも役に立つ情報を提供したいと考えている。
世界最大の人口を誇る中国は、既に様々な分野で世界最大の市場だ。例えば、中国インターネットネットワーク情報センター(CNNIC)によると中国のインターネットの利用者数は2011年6月末で4億8500万人に達した。これは米国の人口(約3.1億人)と日本の人口(約1.3億人)を足した数よりも、更に5000万人近くも多い。
中国は多様な消費者群の集まり
自動車販売台数は2010年に1800万台を超えた。2011年に入って伸び率は鈍化しているが、それでも日本の3倍近くの規模がある。ネットや自動車に限らず、携帯電話、ビール、シャンプーなどなど中国が世界一になった商品やサービスは枚挙に暇がない。
当然、この巨大かつ成長スピードが速い中国市場に対する企業の期待は高い。中国進出もしくは中国事業を強化する企業は製造業にとどまらず、小売りやサービスなどのいわゆるドメスティック色の強かった産業にも広がってきている。
だが、残念ながら成功例は多くない。
言うまでもなく、日本企業が提供する製品やサービスは技術や品質などの面で世界最高レベルと言っていい。そうした認識は中国の消費者の間でも広く浸透している。それだけのポテンシャルがあるのに、日本企業が期待しているだけの成果が得られないのは何故だろうか。
言葉の壁や商習慣の違いなど原因はいくらでも挙げられるが、突き詰めると中国市場の巨大さに目が眩んでしまっているのではないだろうか。日本市場は人口減少で先行きが怪しいから、とりあえず人口が日本の10倍以上の中国市場で販売すれば売れるだろう、と。そんな程度の意識だとしたら、成功はおぼつかない。何より日本の商品はレベルが高いだけに、もしこんな発想なら実にもったいない。
中国には13億人以上の人がいるが、それをひとくくりに捉えるのは余りに乱暴だ。よく知られているように、中国には56の民族が住んでいて、地方ごとに言葉も異なる。所得水準にも大きな隔たりがあり、日本では想像できないほどの格差社会が実在する。多様な消費者群の集まりが中国という巨大市場を形成しているのだ。だから、それぞれの消費者群に狙いを絞ったアプローチが不可欠である。
その意味で私が注目してきた企業がある。通信販売大手のニッセンだ。同社は私が日本を離れる前に最後に取材した企業で、2009年3月から中国検索最大手のバイドゥ(百度)と組んで中国でネット販売を本格化させていた(詳しくはこちら)。中国の検索市場で7割以上のシェアを持つバイドゥのトップページ下に「日本の窓」を置き、そこからニッセンの中国語サイトに客を誘導するというのがビジネスモデルだった。
「想定していたほど売れなかった」ワケ
中国のことをほとんど知らなかった私は、「これは大成功するに違いない」と思っていた。だが、ことはそう簡単には進まなかったようだ。このほど杭州市(浙江省)で2年半ぶりに佐村信哉社長にインタビューする機会があった。「契約期間が満了したのでバイドゥとの提携関係は解消した」と述べた佐村社長は、「想定していたほど売れなかった」ことも素直に認めた。
「日本の窓」からニッセンのサイトを訪れる人はたくさんいたが、商品の購入につながるケースは少なかったという。日本の文化やファッションに興味がある人は「日本の窓」をクリックするが、その人がニッセンの洋服や雑貨に興味を持ってやって来たわけではなかった。
ネットで買い物する場合、中国の消費者はあらかじめ欲しい商品を決めており、その商品のキーワードを検索して買うケースがほとんどだ。だから買う気がない人がいくらサイトを見たとしても、売り上げにはつながらなかったのだ。
だが、転んでもただでは起きないのがニッセン。2010年9月に海外向けのECサイトを独自に立ち上げており、若い女性を中心に中国の消費者にも徐々に名前が知られるようになってきた。それらの取り組みが評価されて中国電子商務協会が主催するネットビジネス大会において、2011年度のグローバルTOP10ネット起業家の1人として、佐村社長が日本から唯一選ばれた。
中国電子商務協会が選ぶ2011年度グローバルTOP10ネット起業家に選ばれたニッセンの佐村信哉社長
受賞後、興奮が冷め止まない会場で私は「これで中国事業を強化するきっかけになりますね」と佐村社長に水を向けた。意地の悪い私は暗に「国内にとどまっていても先行きは暗いから」的な答えを想定していたが、佐村社長から返ってきた答えはむしろ日本市場への期待だった。
「日本市場がダメだから中国市場向けを伸ばそうとしているんじゃない。確かに日本の人口は減っているけれど、ウチの売り上げなんて高が知れている。全体のパイが減ったからなどということは、業績が落ちた理由にならないんですよ」
「日本の20代〜40代までの女性のうち13〜14%が、ニッセンで1年間に1回以上の買い物をしてくれている。ところが男性の割合は2%しかない。これだけ見ても、日本でやることはまだまだたくさんある」
「日本もしっかり伸ばす。日本がダメだからと中国に逃げ込んだとしても、そんな企業がこの競争が厳しい中国市場で勝てるワケがない」
網は広く投げるが顧客は絞り込む
次々と繰り出される佐村節は痛快だった。そして佐村社長は、日本で培ってきたダイレクト・マーケティングこそが中国市場で強い武器になると語った。
どういうことか。背の高い人、体型が太めの人、あるいはコスプレなど特異なファッションが好きな人。こうした人は確かに存在するが、1つの商圏だけでは商売が成り立たないため、従来の小売業からすればメインターゲットにはなり得なかった。それでも日本全国に網を広げれば、たくさんの潜在顧客をかき集めることができる。
この手法を活用すれば、中国の多様な消費者群を相手にうまく商売ができるかも知れないと私は思った。ニッセンの親会社であるニッセンホールディングスは9月5日、中国で通信販売を手がけるビーナスベール(本社は英領ケイマン島、伊藤嘉一郎社長)と資本・業務提携し、年内にも中国でカタログ販売を開始する予定だ。
私のカンがまたも外れるかどうか分からないが、ニッセンの取り組みは引き続き注目していきたい。
このコラムについて
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
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著者プロフィール
坂田 亮太郎(さかた・りょうたろう)
日経BP社北京支局長。入社してから6年間はバイオテクノロジーの専門誌「日経バイオテク」で記者として修行、2004年に「日経ビジネス」に異動、以来、主に製造業を中心に取材活動を続けた。2009年から北京支局に赴任し現在に至る。趣味は上手とは言い難いがバドミントン。あと酒税の安い中国はビール好きには天国です。
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