http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/459.html
Tweet |
http://markethack.net/archives/51773082.html
先日、ウォールストリート・ジャーナルの朝番組、「The News Hub」を聴いていたら、ホストのケリー・エヴァンスが「ヨーロッパ合衆国(The United States of Europe)」という表現をさりげなく使っていました。
それを見た僕の感想は(とうとう来るべきものが来たな)というものでした。
現在のギリシャ財政問題に端を発したユーロ危機を解決するには、基本的には2つのアプローチしかありません。それらは:
1.ギリシャをユーロから叩き出すなどの方法でEUを小さくする
2.若しくはEUの統合の度合いを今以上に緊密にする
のどちらかです。言い換えれば、今以上に大きくするか、それとも小さくするか?しかないのです。
なお僕はこのうちのどちらの方法がより優れているという議論をする気はありません。なぜならそれぞれのアプローチには経済理論上の明らかなメリットが認められ、それなりに理屈に適った解決法だからです。
だからユーロ圏の人々が1.を選ぶか、それとも2.を選ぶかは彼らが「自分達はどんな市民になりたいか?」という価値観の問題に帰着するわけです。
若し、地縁や歴史を重んじる人なら「我々はヨーロピアンである前に、ギリシャ人である」式の考え方を当然するでしょう。
一見するとギリシャ人という自覚をヨーロッパの一員だという認識よりも後回しにすることは「ありえない」と感じる読者も多いかと思います。
しかしそれはかならずしもそうではありません。
その好例が日本です。
むかし日本人が「おらが国では、、、」と言った場合、それは薩摩や長州などの故郷を指し、日本人だという帰属意識より地縁的、歴史的な帰属意識の方が強かった時代があります。
でもそれは「海の向こうにはもっと大きな世界がある」という事を理解したとたんにより大きな括りでの帰属意識、言いかえれば国家意識に取って代わられました。それが自分の文化や利害を護る上で背に腹は代えられなかったからです。
これを現代に置き換えれば、中国の出現はヨーロッパをして「我々は競争してゆくためには単にEUではダメでむしろヨーロッパ合衆国にならないといけないのではないか?」と考えさせ始めていると言えなくもないのです。
そうでなければ先日のドイツ連邦議会での圧倒的多数による欧州金融安定ファシリティ(EFSF)の承認は説明がつきません。
ただEFSFは既に「余りにもパワー不足だ」と指摘されています。
だからEFSFをレバレッジするさまざまな方法が議論されはじめているのです。
EFSFにレバレッジをかける方法として:
1.EFSFを銀行にする
2.EFSFをノンバンクにする
3.EFSFを保険会社にする
という3つの方法が検討されています。
今のところはこれらはいずれもブレイン・ストーミングの段階です。
ただそれらに共通して言えることはEFSFが特別目的会社であるという構造上、どうしてもスキームが複雑になり、その分、脆弱性を内包せざるを得ないという点です。
だからEFSFではなく、単純にユーロ圏共同債を出した方がスッキリするという考え方もあるのです。
現在の欧州憲法ではユーロ圏共同債を出してよいという規定は無いし、各国の財政事情の足並みはバラバラです。このような状況でユーロ圏共同債を果たして出せるのでしょうか?
その実例は、実は存在します。
それはアメリカの南北戦争の後、アメリカが共同債を出した例です。
これを考案したのは米国の初代財務長官、アレキサンダー・ハミルトンです。
アメリカの各州は南北戦争の戦費を調達するために皆、思い思いに州債を発行しました。しかし戦争による疲弊でどの州も財政が破綻し、投資家にお金が返せなくなったのです。
そこでハミルトンは各州の紙切れ同然になった債券を連邦政府、つまりアメリカ合衆国が肩代わりし、さらに償却積立金と呼ばれるファンドを設立し、若し政府証券が額面価格を割った場合はその積立金で政府証券を買い支え価格の安定を図るということを打ち出しました。
当時の状況を現在の欧州にあてはめるとこうなります。
州債に相当するのがギリシャ国債、イタリア国債などの各国の国債です。
米国政府証券、つまり今日のUSトレジャリーに相当するのがユーロ圏共同債です。
当時のアメリカは憲法に財務省の存在は規定されていませんでした。だからオーガニック・アクトという補足的な条例で財務省が後付け的に設置されたのです。
現在の欧州憲法にも欧州財務省に相当する機関の規定はありません。
またバージニア州、マサチューセッツ州などの州単位の利害ではなく、アメリカ合衆国全体としての利害を考えようという主義の人々を連邦主義者、別名フェデラリストと呼びました。現在の欧州にもパン・ヨーロッパ的な価値観を標榜する人々は存在します。
これらを対比表にすると次のようにまとめることが出来るでしょう。
なお、僕はヨーロッパが一足飛びにユーロ圏共同債を出し、EU財務省を設置し、ヨーロッパ合衆国への途を歩み始めると議論しているのではありません。
これはとても時間がかかるプロセスだし、だいいちEUが現在の処にたどり着くまでに既に50年を要しているわけです。
また現在のヨーロッパにはアレキサンダー・ハミルトンに相当するような強力なリーダーシップが欠如しています。
********************* comment
世界政府=グローバリズムの雛形が、多民族国家=アメリカ建国のなかにあった。
財政危機のアメリカ各州を・・EU危機の渦中にあるヨーロッパ各国に重ね合わせると
物分りがいい。
アメリカ開拓民が求めた統一紙幣が・・ユダヤ商人銀行券=ドルであった。
汎欧州、EUグローバリズムの市民が求めた統一通貨が・・フランス系ユダヤ銀行券=統一通貨ユーロである。
世界政府主義者(政治経済地域共同体)=アングロサクソン・ユダヤ勢力は・・ポスト「世界政府紙幣」をめぐって・・米欧間で通貨覇権の経済内ゲバを演じている。
それが・・リーマン危機に端を発したEUでの財務危機である。
グローバリズムの暗渠には、経済合理性だけでは糊塗できない、国家・民族・個人の歴史的文化の偏差が存在する。
近代主義は、非定理に、存在が抱え込んでいる「内なる非近代」があるからこそ成り立つ・・自己矛盾性に依っている。
世界政府=グローバリズム化が拙速であればあるほど、内部矛盾が暴発するものだろう。世界中を震撼させている「ソブリン債務危機」は、短絡した物言いだが、ポスト冷戦が生んだ新自由主義・国際金融資本の「自業自得」ともいえる。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。