http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/431.html
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日本の大学は、世界的に見れば、かなりレベルが低い。
私学、特に文系の多くは長期的な生き残りは厳しいかもしれないな
http://grad-schools.usnews.rankingsandreviews.com/best-graduate-schools
http://homepage3.nifty.com/katu-kobayashi/doppo/rankingu_1.htm
http://diamond.jp/articles/-/14223
【第23回】 2011年9月30日鬼塚俊宏 [ストラテジィエレメント株式会社 代表取締役社長兼CEO]
『優秀な頭脳をめぐる争い〜グローバル教育が世界経済にどのように恩恵をもたらすのか?』The Great Brain Race : How Global Universities Are Reshaping the World――ベン・ウィルダヴスキー著
未訳の最新ビジネス洋書のエッセンスが詰まった書評レポートを、PDFファイルで閲覧・ダウンロード提供する本連載。今回取り上げるのは、『優秀な頭脳をめぐる争い』です。(書評レポート提供/エグゼクティブブックサマリー)
グローバル化する大学の生き残り戦略とは?
先進国では現在、少子高齢化の影響により、高等教育機関でも深刻な学生不足という事態を招いています。日本でも、全大学の受け入れ人数に対して定 員割れという状況が現在加速しつつあります。つまり、入学する学生が存在しなければ、授業料等の利益を創出することが出来ず、学校経営そのものにも大きな 影響を与えています。
こうした現状を踏まえ、高等教育機関では大きな生き残りのための対策が取られ始めています。
その対策の一つが、現在のグローバル化に伴う海外の各教育機関との提携や留学生の受け入れ等の事業による教育コラボレーションとも言える体制の強化です。
各国の大学にはそれぞれが固有の特色があり、当然その国の文化や環境を大きく反映しています。自国の中での定員の確保が激化している中で、他の教 育機関との差別化を図りながら入学希望者を増やしていかねばならないのは、日本のみならず、先進国において、また、開発途上国においても大切な事です。
では、具体的に、「グローバルな高等教育」ではどのような事がなされているのでしょうか。さらに、そこからどのようにして優秀な人材を排出する仕組みを構築しているのでしょうか。
本書「優秀な頭脳をめぐる争い」では、そうした大学のグローバル化について、各大学が行っている様々な施策について事例を基に紹介されています。
著者のベン・ウィルダヴスキーは、米国でも非常に有名な高等教育部門のスペシャリストであり、USニューズ&ワールド・レポートの教育編集者を経 て、その熟練した経験を買われ、ビジネスと教育の専門分野で数多く執筆を行ってきました。特にワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルの執筆 では、大変高い支持を得てきました。
「教育は誰にでも恩恵を与えることができる。よって、大学は入学する際の壁を出来る限り低くしなければならない」と主張する同氏は、世界経済や人 類の発展へと大きな影響を与える、非常に重要なものだと述べています。そういう意味で、教育に関わる人だけでなく、沢山の人々に是非ご一読頂きたい一冊で す。
http://diamond.jp/go/ct/booksummary/The_Great_Brain_Race.pdf
まずは3分間で理解する「本書の要点」
グローバル化によって高等教育はさまざまな形で変わっており、新しい経済モデルとして留学生の募集、海外キャンパスの設立まで行うようになっている
グローバル化により高等教育は「国際的取引の形」を取るようになった
社会変化や技術の進歩が、教育のグローバル化の中で大きな役割を果たしている。しかも、消費者および教育機関の両方にとって有益なものである
営利目的の機関は、教育を受ける機会の拡大においてますます重要な役割を担うようになっている
営利目的の大学は極めて実利主義であり、従来の大学よりも授業にテクノロジーを取り入れている
評判を高めるために新しい大学を創る国がいくつかある
教育は誰にでも恩恵を与えることが出来る。よって、大学は入学する際の壁を出来る限り低くしなければならない
この要約書で学べることとは?
@ 高等教育のグローバル化を促進しているもの
A グローバルな高等教育の形
B グローバルな高等教育がもたらす影響
先進国においては現在、少子高齢化の影響により、高等教育機関においても深刻な学生不足という事態を招いています。日本においても全大学の受け入れ人数に対しての定員割れという状況が現在加速を増しつつあります。つまり、入学する学生が存在しなければ、授業料等の利益を創出することが出来ず、学校経営そのものに大きな影響を与えていることも事実です。
実際のところ、そうした現状を踏まえ、高等教育機関では大きな生き残りのための対策が取られ始めています。
その対策の一つが、現在のグローバル化に伴う海外の各教育機関との提携や留学生の受け入れ等の事業による教育コラボレーションとも言える体制の強化です。
各国の大学にはそれぞれが固有の特色があり、当然その国の文化や環境を大きく反映しています。自国の中での定員の確保が激化している中で、他の教育機関との差別化を図りながら入学希望者を増やしていかねばならないのは、日本のみならず、先進国において、また、開発途上国においても大切な事です。では、具体的に、「グローバルな高等教育」ではどのような事がなされているのでしょうか。さらに、そこからどのようにして優秀な人材を排出する仕組みを構築しているのでしょうか。
本書「優秀な頭脳をめぐる争い」では、そうした大学のグローバル化について、各大学が行っている様々な施策について事例を基に紹介されています。
■「グローバルな高等教育」とは
マドラスにあるインド工科大学(IIT)は、高まりつつある重要な新しいトレンドの1つの例を示しています。それは、高等教育のグローバル化です。同大学の校舎は比較的人里離れた場所にありますが、エール大学などの有名な機関と国際的に提携しています。ブラウン大学から客員教授を招いており、卒業生はインフォシス社1やサン・マイクロシステムズ社2に就職したり、あるいはサウジアラビアのアブドラ国王科学技術大学(KAUST)、オックスフォード大学またはハーバード大学の大学院へ進学したりしています。
グローバルな高等教育は特定の形態を取っていますが、その種類は様々です。例えば、サテライト・キャンパスがあったり、短期留学プログラムを用意していたり、第三国での組織的提携などを行ったりしています。しかし、よく見ると、グローバル化により世界中の教育が再構築されていることが分かると思います。このような変化は以前にも起こっていました。中世の学生は欧州を旅してボローニャやパリ、オックスフォードの新しい大学で学びました。第二次世界大戦後、米国は沢山の留学生を招きました。しかし、今日の変化は今までのそれより速く、より強烈です。高等教育は世界的に競争が激しくなっています。もはや、米国の大学は米国の大学と、フランスの大学はフランスの大学と競争するだけではありません。学生は世界中の大学から選ぶようになり、既存の教育機関に多大なプレッシャーを与えているのです。
本文中のポイントついて
ポイント1:世界中の教育の状態が広範囲にわたる様々な形で変わって来ている。しかし、これは初めての現象ではない
ポイント2:知識を増やすことはゼロ和ゲームではない。知識の獲得は多くの場合、他の人に恩恵を与える
ポイント3:欧米の大学は、経済的成功への道は大学を通っていることに気が付いた世界中の社会から真似されている
ポイント4:米国の大学がサテライト・キャンパスの世界で大きな役割を担っている一方で、他の多くの国の機関も中東以外の地域でも存在感を大きくしている
1999年から2009年の間に、母国以外の国で勉強をする学生の数が50%以上増え、300万人近くに上りました。米国は英語を母語としない学部生の22%を招いており、英国は12%、オーストラリアは11%を同様に招いています。米国は大学院生の獲得に強みを持っており、世界中の外国人大学院生のおよそ3分の2が米国に留学しています。そのほとんどがアジアの経済大国―インド、中国、韓国、日本、台湾―から来ています。留学は、技術的にも社会的にも以前より簡単になりました。また、第二次世界大戦後、米国での高等教育は、外交や国際提携の幅広い戦略の1つとなりました。つまり、留学する学生によりお金が費やされることになったのです。冷戦により科学研究に資金が大量につぎ込まれ、それによって様々な分野の大学の成長が促進されました。さらに最近では、大学は教育を市場と見なし始めています。これにより、米国以外からの学生を含め、優秀な学生をめぐる争いが激化しています。
高等教育のグローバル化が向かうところは世界の教育の再編成でありスタンダード化であるように思えます。他国との間での研究者や学生の交換、更にはサテライトキャンパスを他国に設置することによって、それぞれの国や教育機関との技術や教育提供レベルがより近いものになります。これは過去においても行われていたことですが、いわゆるグローバル化が進んでいる現在においては更に加速度をました交流が行われているのが現状です。
■グローバルな高等教育はどのような形をとっているか?
高等教育のグローバル化の最も基本的な形は、大学による外国からの学生の募集です。その次のレベルが、よく知られている「海外学習プログラム」あるいは「短期留学プログラム」と呼ばれる生徒が3カ月間あるいは1学期間を外国で過ごすプログラムです。近年、米国の大学の多くが他の国に分校を立て始めています。例えば、ニューヨーク大学(NYU)はアブダビに完全な教育学部を設立しようとしており、アブダビの街を世界における国際的な「知識の首都」にし、その学部の生徒を国際人に育てようとしています。この計画は確かな経済的サポートや教員陣からの支持を得てはいますが、NYUは言論の自由や女性の社会活動が制限されている場所にそのような大規模な拠点を立てるべきではないという批判もあります。
英国の高等教育研究所(Observatory on Borderless Higher Education)によると、2005年、世界中に分校はおよそ100校あり、それらは米国、オーストラリア、スコットランド、フランス(ソルボンヌを含む)の大学によって創られたものだと分かりました。また、米国の大学6校が協力し、カタールの教育都市に2,500エーカーの新キャンパスを作り、数多くのクラスを英語で教えています。ほとんどの生徒がかなり流暢に英語を話しますが、大学レベルでのライティングには苦戦しています。また、教職員は母国で教えるよりも長い時間、授業を行っています。しかしその分給与は高くなっています(家賃全額補助を加えれば、約2倍です)。授業は男女共同で行われ、この地域にとっては初めての試みです。この教育都市の経済的継続性には疑問が生まれていますが、それでも自由化を促進する力になっていると考えられています。
グローバル教育=留学という形でここでは紹介をしていますが、その目的はいわゆる「国際人の育成」にあるようです。そのために一定の機関を他国の一定の都市に集中させて、いわゆる国際人教育訓練とも言えるプログラムを構築し実践しています。勿論、文化習慣も全く異なる地でそれを行うことに反対意見もあるようですが、全く異なる環境の中で育成を行うことはある意味では学生の集中力を高めるには良いかも知れません。
■格付けと質
大学の格付けは多くの議論を呼んでいます。これは特に、格付けに頼り始めている顧客が世界的に増えていることが原因です。1960年代に元々は臨時として始まった格付けは今、より体系的になりました。大学の総学生数が影響力を持たなくなったことから、格付けはさらに必要性を増しました。消費者は格付けを快く受け入れていましたが、教育指導者達は多くの場合、格付けは表面的なもので正確ではないと考えていました。これを受け、格付けを作るプロセスはさらに変わり、教職員の給与や統一試験の結果など客観的データがさらに盛り込まれるようになりました。それ以来、幅広く引用されているUSニューズ&ワールド・レポート誌の格付けなど、格付けを作る手法はほとんど変わっていません。
本文中のポイントついて
ポイント5:中国は物理的に大学の数を増やしているだけでなく、いわゆる「頭脳の流出の逆の現象」を促進するために、海外にいる中国人を自国に積極的に招いている
ポイント6:おそらく、世界クラスの大学を作る世界的な争いの最善の最終的判断基準は、素晴らしい知識が拡大したかどうか、そしてそれはどのように起こったかによって決まるだろう
出版社や政府、教育組織が支援する格付けシステムが米国外で新しく生まれています。政府はそういった格付けを政策声明の中に引用し、大学は格付けから自分達の強みと弱みを学んでいます。しかし大抵の場合、組織のリーダーは様々な格付けシステムの中の順位を心配します。その為、大学組織が改善される一方で、格付けシステムには不備があると批判し、授業の質や入学生がどの程度進学準備をしてきたかなど、全体的な違いを生み出す要素を無視する現象が起きています。
高等教育がさらにグローバル化するにつれ、新しい格付けシステムが継続的に作られています。
一番良いのは、様々な要素を評価することです。しかし、格付けシステムの中には教育基準を無視し、ノーベル賞やフィールズ賞などの研究賞を最も受賞した大学を高く評価するものがあります。このような格付けは多くの場合、国家主義者の目標とされています。例えば、中国は「エリート機関」を作り、学部研究を拡大させることに全力を注いでいます。また、多くの国が外国人学者―特に米国の研究者―と提携することで研究キャンパスの活性化を図っています。さらに、2008年以降、韓国は8億ドルをつぎ込んで外国人学者を招いています。また、シカゴ大学やINSEADのシンガポール校など、共同教育課程制度を作る機関も出て来ました。その内のいくつかは失敗し(ウォーリック大学が計画したシンガポール校は実を結びませんでした)、他にも破綻したところがあります。ジョンズ・ホプキンス大学は、辛らつな批判にさらされ、シンガポールでの8年間のプログラムを閉じました。
KAUSTは「世界クラスの大学」を立てようという最も野心的な試みです。サウジアラビアは、エリート大学を創るという明確な目標を掲げ、ゼロからKAUSTを始めました。アブドラ国王はこの世界で6番目に資金援助を受けている大学の創設にあたり、
一気に100億ドルを寄付しました。また、KAUSTを経営しているのはサウジアラビアの国営石油会社であるアラコム社であり、学長にはシンガポール大学からハーバードで教育を受けた人間を雇いました。
大学の格付けに対しての言及がされていますが、果たして、「格付け」に何の意味があるのでしょうか?また、過去格付けの根拠が職員の給与やら試験の結果となっていますが、これがどうして結びつくのかが甚だ疑問です。高等教育のグローバル化はそうした過去の悪癖を取り除く一つのターニングポイントになるのかも知れません。つまり、そこで学ぶ学生がどのような知識をみにつけることができるのか。また研究者が社会に貢献する研究成果を生み出すのかが真の大学の格付けに反映されるものであると思います。
■営利目的大学の役割の重要性の高まり
営利目的の大学は、誰が高等教育を受けるかという点において、新しい決定的な役割を世界的に担うようになりました。最近まで、大学に「行くこと」はしっかりとした進学準備を行ってきた学生や、高等教育へ進むことを期待している親にとって「一流の証」でした。世界の大半では、このような背景がなくても、学生はキャリア志向で実利的な高等教育を受けたいと切望しています。
特に南米やアジアで需要が集中的に高まっています。人口が多いアジアの国上位8カ国では、1991年から2001年の間に中等教育への入学者が260%も増加しました。そのほとんどが営利目的の学校へ入学しています。教育への大規模な国際投資によって営利目的の教育機関の成長が促進されていると同時に、そのような学校の人気は高まっているのです。その理由として、多くの従来の学校とは異なり、営利目的の学校は効率よく教える為にテクノロジーを取り入れていることが挙げられます。
最近では、営利目的の高等教育の国際市場に企業が参入しています。このような組織は様々なアプローチを取っています。例えば、中南米(ブラジル、パナマ、コロンビア)に拠点を持つホイットニー・インターナショナルは、複数の大学の経営権を所有しており、中南米の大学と提携を結ぶことを考えています。ホイットニーは通信教育に力を入れており、それが急速な成長を支えています。また、インドやアジアにも進出する計画を立てています。また、教育プロバイダーであるカプランは統一試験の予備校として始まりましたが、ITや看護などの応用分野での高等教育も取り扱うようになりました。さらに、フェニックス大学を所有しているアポログループは、優良株投資会社であるカーライルグループと実質的なパートナーシップを結ぶことでグローバル教育に参入しました。
本文中のポイントついて
ポイント7:国際教育は今、教育以外の活動で知られている企業に巨額の資金源を与えている
ポイント8:多国籍企業が次々と業界を支配し始めたこの十数年の間、多国籍企業の横行が批評家達を失望させてきたが、それでも世界経済に大きな恩恵がもたらされた人やアイディアの大移動は勝者と敗者を生み出すだろう
米国の営利目的大学だけが、拡大している教育機関ではありません。シンガポールを拠点とするラッフルズ・エデュケーションは、オーストラリア、インド、マレーシア、香港にキャンパスを持っています。また、ローリエイト・エデュケーションもアジア、欧州、米国に150校以上のキャンパスを持っています。こういった組織は従来とは違った生徒を受け入れています。増加傾向にあるのは25才以上の生徒で、その多くが25才よりずっと年上です。彼らは働きながら定時制で学校に通い、多くの人がキャリアアップを目指して仕事に関連のある授業を受けています。営利目的の大学は研究以上のことはほとんどやりません。
このような営利目的の大学の拡大は、様々な場所で様々な影響を与えています。例えば、米国ではエリート大学のほとんどは私立で、公立の大学は昔から大衆教育を低価格で提供しています。
しかし、他のほとんどの国では公立大学がエリート校であり、入学出来る人は限定的で、労働階級や中流階級の生徒はほとんど入れません。このような国では、営利目的の大学が一部に置いてオンライン学習を提供したり、ネットでのやりとりを使って授業時間を増やしたりすることで、高等教育を受けるチャンスを平等にしているのです。多くの生徒がこの手段を選んでおり、中国では中等教育を通信教育で受けている学生の数が200万に上り、欧州や南米でもそれぞれ100万人に達しています。この数は今も増え続けています。2004年、米国人学生でオンライン学習を受けている人は100万人でしたが、2009年にはその数は200万人に達しました。
営利目的の大学とは学習効果を高められるためのテクノロジーを取り入れているというのはよく分かる話です。それによって学生の学習効果が目に見えて高めることが出来る事が理解できるのであれば、ステイタスやブランドで高等教育を受けるので
なく、そこで技術を磨いてキャリアを身につけたいというより教育に対してのモチベーションの高い学生を集めることができます。それはその国の人材育成においても広く貢献することになります。
■グローバルな高等教育は「知能の自由貿易」を生み出している
高等教育のグローバル化によって、教育そのものが「国際取引の形」を取るようになりました。
優秀な学生は国境を超えて大学を選び、すぐ利用出来ることを期待しています。現代の研究者はグローバルに研究を行い、外国で教えたり協働したりしています。また、大学の学生募集の様子も変わりました。特に高レベルの大学では変化が著しく、優良な大学は地元の優秀な生徒だけを欲しいとはもはや思っていません。世界中のリーダー達を育てたいと思っています。世界中の「超ハイクラス」のリーダー6,000人に対する調査の結果、30%がエリート大学20校のうちどれかに入学していたことが分かりました。また、発展途上国のリーダーは欧米のトップ大学で高等教育を受けたいと思う傾向にあることも分かりました。
専門家の中には、この現象によって「世界的なパワーエリート3」が生まれ、その権力層の人間同士が母国とよりも強い結び付きを持つようになる恐れがあると懸念している人がいます。また、そのようなトップ大学が貧困者を受け入れないことも心配されています。
上記のようなもっともな懸念事項によって、グローバルな高等教育の素晴らしい可能性が誤って判断されています。しかし、人は、母国を大切に思う気持ちを持ちながら「国際人」になることが可能です。優秀な学生を引き付けることに力を注ぐことで、エリート大学は最終的にさらに民主的になるでしょう。しかし、インドや米国では、従来は入学が認められなかった人々に対し、大学に入学する自由を与える教育水準を認める政策によって、教育システムの中に新たな緊張が生まれています。また、中国では厳しい大学入学試験が設けられました。この入学試験は暗記学習に焦点を当てたもので、中国自体はそのような教育手法から離れているにも関わらず、設けられました。
国際的競争が激しい他の業界同様、教育業界でも既存の機関が政府保護を求めることがあります。この「教育保護主義」はインドなどで出現し、国外からの投資が劇的に増加しインドの学生は海外に留学しているにも関わらず、外国の学校に対する障壁を長きに渡って作っています。インドの高等教育大臣であるカピル・シーバルは、緊迫した空気の中、外国の大学を受け入れようと試みていますが、状況は規制問題や社会変革(特定の社会階級に対する定員の設定など)で複雑化しています。インド政府は外国機関がインド人の教員を雇うことを禁止し、インド人学生による非インド系企業でのインターンシップは単位として認めていません。
本文中のポイントついて
ポイント9:学生、教授、そしてアイディアが世界中を循環することに対する規制がかつて無い程少なくなっている中、このような知能の商取引を「知能の自由貿易」と呼ぶことが出来るだろう
ポイント10:他の自由貿易と同じように、教育市場での人やアイディアの大移動は勝者と敗者を生み出すだろう。
ポイント11:21世紀の人間の試み全てと同じように、高等教育のグローバル化が終わることは考えられない
ポイント12:国際社会で競争に勝つためには、近代経済は必ず高等教育を取り入れなければならない
教育を規制する国内法の中には、自国の文化を極めて重要なものとする考えに焦点を当てたものがあります。インドや英国、オーストラリアやベルギーでは、自分の国の学生が入学できるよう医大の生徒枠を確保する為に禁止令を出したり、定員を定めたりしており、それによって「国内の職」を保護し、国の医療の質の高さを維持しています。また、米国はテロリズムと関連のある地域(中東やパキスタン)や、時によっては中国などの経済的ライバル国からの生徒に対する規制を強化し、試験の数を増やしています。他にもあまり筋の通っていない規制もあります。例えば、ドイツでは「ドクター(医師)」と呼ばれても良い人を定める規制が存在します。規制がどの国で生まれたものであれ、バリアが高ければ高いだけ、外国人生徒から見てその国は魅力を失います。これにより、優秀な外国人生徒を求めているトップ大学は、国の政策と対立することになるのです。
米国はH-1Bビザ(エイチワンビー:非移民就労ビザ)の発行数を制限しました。これにより、米国で新しい企業を始めたり、拡大する業界で仕事をしたりする移民が減っていくでしょう。そして、1995年から2005年に作られた米国のエンジニアリングや技術系の企業の25%が移民によって設立されたことを考えれば、経済に悪影響が与えることになるでしょう。また、米国で勉強をした外国人学生の多くが、自国の経済を強化するために自国に帰ってしまうことを心配する米国人もいます。
しかし、そのような革新的な学生は、どこで働こうと、皆にとってプラスになる新しいアイディアを生み出すことで米国にも恩恵を与えてくれると反論する人もいます。
グローバルな高等教育は確かに、国際間での教育レベルの均一化と向上に加速をかける事になったと行っても過言ではありません。文化や習慣また、言語という壁を超えることで、全世界に分散していた高レベルの知識が一気に共有されることにな
るわけです。
この知識の共有化は、世界中が抱える様々な諸問題や課題を今後、少しずつではあるかも知れませんが、解決していく事になります。教育がいかに人間にとって大切なものであるのか。この書においては未来における理想の教育についての見解を明確に示唆しています。
■s28 注37320 .
1. インフォシス社:インドのイソフトウェア会社。システム開発・コンサルティングなどを手掛ける。
2. サン・マイクロシステムズ社:米国に本社を置くコンピュータの製造・ソフトウェア開発・ITサービス企業であった。2010年1月27日にオラクルにより買収された。
3. パワーエリート:米国社会の政策決定に対し、独占的な影響力を行使できるとされる権力層のこと。一部の社会学者はこれら権力層が権力構造維持による利益の一致から協力して大衆を操作していると分析している。
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