http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/418.html
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勿論、円高でも日本の輸出企業は全滅するわけではなく、海外移転により、ある程度は生き延びられるが、国内の雇用は激減し、需給の悪化で賃金も下落する
繰り返し言われているように、必要なのは国内での投資拡大策だが
既得権の壁のため、なかなか有効な対策は打ち出されない
http://diamond.jp/articles/-/14202
野口悠紀雄 未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか【第32回】11年9月29日 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] 製造業の海外シフト加速!雇用創出に残された時間はない
経済産業省の「海外現地法人の動向」(2011年4−6月期)が、9月26日に発表された。
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/genntihou/result-1/h23/pdf/h2c3l1xj.pdf
設備投資額実績は、ドルベースで68.7億ドルであり、前年同期比は38.7%増と、5期連続のプラスになった。
円高が進んでいるので、円ベースで見ると伸び率は低くなる。それでも、5610億円で前年同期比は23.1%増と、同じく5期連続のプラスになった。
国民経済計算に見る国内の民間企業設備投資は、4−6月期で、前々回見たようにマイナスの伸びを示している。これと比較すれば、国内から海外への移転が猛烈な勢いで進んでいることが分かる。
http://diamond.jp/articles/-/14029
なお、「海外現地法人の動向」では、売上高(ドルベース)の前年同期比は4.6%増、従業者数の前年同期比は2.9%増だった。設備投資の伸びは、これらより遥かに高い。つまり、これは、将来を見据えた戦略的な動きであることが分かる。
設備投資の伸びを時系列的に見ると、【図表1】のとおりである。4−6月期の伸び率は、1−3月期と比較して減少した。これは、東日本大震災の影響で、企業の設備投資意欲が減退したためと見られる。
しかし、7−9月期の見方(DI)は、前回調査において輸送機械がマイナス水準となっていたが、今回調査で大きくプラス水準となるなど、上方修正となった。したがって、今後海外の設備投資はさらに増えることが予想される。
http://diamond.jp/mwimgs/7/9/600/img_798790c3219551eb90e1837de026792d12545.gif
地域別、業種別動向
地域別に見るとアジアの設備投資額実績(ドルベース)は、46.5億ドル。前年同期比は38.5%増と、5期連続のプラスだ(【図表1】参照)。
欧州が前年同期比は38.4%増となっており、かなり高い伸びであることが注目される。なお、北米は、前年同期比は24.7%増だ。
全地域の業種別で見ると、主要4業種は、化学が同48.8%増と2期ぶりのプラスとなったほか、はん用等機械が同88.8%増、輸送機械が同66.6%増といずれも4期連続のプラスとなった。電気機械は同10.3%増と6期連続のプラスだ(【図表1】参照)。
次のページ>> 自動車産業の海外設備投資は、国内の2倍になる
【図表2】に見るように、アジアでの伸び率は非常に高い。なかでも、輸送機械は128.0%増となっている。これに対して、北米での輸送機械は、▲0.9%減だ(図表には示していない)。海外自動車生産が、北米からアジアへと、明らかなシフトを示していることになる。
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自動車産業の海外設備投資は
国内の2倍になる
日本政策投資銀行の「設備投資計画調査」によると、2011年度における製造業の海外設備投資は、対前年度比54.7%増となる(【図表3】参照)。
これは、大企業(資本金10億円以上)を対象とするものであるため、上記「海外現地法人の動向」よりも、海外シフトの状況が明確に現われている。
この結果、海外/国内設備投資比率は、51.4%に上昇する(【図表4】参照)。自動車では127.9%となり、海外の設備投資が国内の設備投資を上回ることとなる。
製造業全体と自動車産業について、海外/国内設備投資比率の時間的な推移は、【図表5】に示すとおりである。
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自動車の場合、2002年から、国内と海外の投資はほぼ同程度の規模であった。2008、09年には、国内のほうが多くなった。それが逆転し、大きく海外に傾く形になったのである。2011年度計画では、海外投資が国内投資のほぼ2倍の水準になっている。
製造業全体として見ると、海外投資は国内投資の半分程度の大きさだった。それが2011年度計画では、70%を超える水準まで上昇するわけだ。
次のページ>> 現状を冷静に見据えた政策が求められる
以上で見たように、設備投資の海外シフトは、きわめて顕著に進行している。企業規模で言えば大企業、業種別で言えば自動車産業において、とりわけ 顕著だ。大企業の2011年度の設備投資が計画通りになれば、自動車産業では国内設備投資の2倍の投資が海外になされることになる。製造業全体で見ても、 国内投資の4分の3にあたる規模の投資が海外に向けてなされる。
このように、日本企業の行動は、すでに大きく変化している。そして、それに対して、経済政策が追いつかないのが現状だ。
経済政策の基本的な考えは、海外移転を「空洞化」だとして、それを阻止しようとするものだ。そして、前回見たように、国内立地促進のために、補助金を給付しようとしている。
しかし、こうした政策に効果が期待できないことは明らかだ。そして、現実には、海外移転が進み、国内の雇用が失われることになる。
このような政策は、「何もしていないわけではない」という言い訳だけのために行われているとしか考えられない。本来必要なのは、現在進行している 現状を冷静に見つめ、雇用創出のための有効な手立てを講じることである。そのために残された時間的余裕は、急速になくなりつつある。
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質問1 もはや日本の「産業空洞化」は避けられない?
75%避けられない
25%なんとか避けられる
わからない
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