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「東洋経済オンライン」の『野口悠紀雄の「震災復興とグローバル経済」―日本の選択-』 11/09/26 12:18から「クラウド大戦争が縁遠い日本の風景」を下記のように転載投稿します。
=転載開始=
「アイフォーンの販売が1億台を超えた」
これは、今年4月のアイパッド2の発表イベントにおいて、アップルCEO(当時)のスティーブ・ジョブズが述べた言葉である。
「エッ? 1ケタ間違えているのではないか?」というのが、これを聞いたそのときの私の反応だった。
考えていただきたい。アイフォーンは、3GやWi−Fiなどの無線がなければ使えない機器である。だから、アフリカのジャングルや砂漠では使えない。世界70億の人口のうち、これを使える環境にいるのは先進国の住民だけだと考えれば、9億人だ。その中には赤ん坊や老人もいる。決して安くない機器を購入し、月々ばかにならない通信費を払える人は、多く見積もっても3億人くらいだろう。しかも、スマートフォンはいまやアイフォーンの独占ではない。だから、1億人がアイフォーンを購入したなどとは、誇大宣伝もいいところだ……。
と考えて、アイフォーンの売り上げ推移を調べてみたところ、ジョブズはウソを言っているのでないとわかった。アイフォーンが最初に売り出されたのは2007年だが、販売台数は発売後74日で100万を突破した。その後は、08年に1160万、09年には2070万、10年には4000万と、ほぼ毎年倍増のペースで推移している。
念のために思い出していただきたいのだが、08年はリーマンショックが起きた年である。「アメリカ式資本主義は自滅した」という意見すら聞かれた年だ。09年の第1、第2四半期には、日本の製造業は全体として赤字に陥った。そのときにアメリカでは、このような驚くべき商品が登場していたのである。
11年のアイフォーンの売り上げは、半年間で5520万台となった。しかも、近々、新製品であるアイフォーン5が発売されるといううわさも飛び交っている。したがって、今年の売り上げ台数が、昨年の2倍以上になることはほぼ確実だ。
スマートフォン全体では、10年第4四半期には出荷台数が前年同期比較87・2%増となって1億を超え、PCの9200万を上回った。10年通年では、ほぼ3億となった。これは先進国総人口の3分の1に相当する。11年第2四半期の出荷は1・1億台となっている。日本人の常識では理解できない現象が、いま起きているのだ。
クラウドでの覇権争い
上述の状況を見て、しばしば「PCからスマートフォンへ」と言われる。二つは機能が異なるので、スマートフォンがPCを代替するとは思わないが、大きな変化が生じていることは間違いない。スマートフォンはクラウドの出入り口としての役割を果たしている。その意味で、1対1の通話が基本だった携帯電話とは基本的に異なる機器だ。そして、PCと共同で新しい世界を切り開く。
こうした可能性を背景に、新しい世界での覇権を求め激烈な競争が繰り広げられている。これは競争というよりは、「戦争」と表現すべきものだろう。
グーグルがアンドロイドという新しいOSを開発し公開したため、これを用いるスマートフォンが増大している。サムスンのギャラクシー(Galaxy)が発売され、日本のメーカーも相次いで参入した。したがって、この分野でアップルがいつまでも現在の地位を維持できるわけではない。
これまでも、ITの世界では次々にトップが変わってきた。
最初に個人向けPCを開発したのはアップルコンピュータ(当時の社名)だったが、その後、OSではマイクロソフトのウィンドウズが覇権を握った。アップルは一部のユーザーからは信仰に近い支持を得たが、少数派にとどまった。
しかし、その後、グーグルの登場で競争の構造が変わった。まず検索エンジンでグーグルが圧勝した。次がメールだ。04年に登場したグーグルのGメールが、無料で使える巨大な容量を提供して広範な利用者を獲得した。地図でもグーグルマップが、それまでの地図(ウェブの地図のみならず印刷物の地図も)を一掃した。
ITではしばしば「一人勝ち現象」が起こり、特定のソフトや機器が事実上の世界標準になってしまう。現在、検索とメールと地図では、グーグルのシステムが世界標準になっている。いかなるスマートフォンも、これらを標準として設定せざるをえないのだ。この状況は、英語が世界語になっているのと似ている。
■日本では宇宙の彼方の戦争のように聞こえる
そしてこのことが、クラウド時代の勢力分布に大きな影響を与える。だから、「スマートフォン大戦争」は、実は「クラウド大戦争」なのである。それは、単に機器の製造の競争ではない。メールや地図までを含む、極めて広範囲にわたるクラウドシステムの覇権争いなのだ。
このような状況の中で、日本のエレクトロニクスメーカーは、機器の製造にとどまっている。しかも、サムスンの後塵を拝している。
これは、PCの場合と同じ構造だ。機器の製造にとどまるかぎり、際限のない値下げ競争に巻き込まれ、利益を挙げることはできない。スマートフォンやタブレット端末についても同じことが起こるだろう。日本のメーカーがこうした状態にある理由はいくつか考えられるが、そのうち大きなものは、日本ではスマートフォンはあまり使われていないことだ。
MM総研によると、10年度の日本のスマートフォン出荷台数は855万である。上述の数字と比較すると、世界に占めるシェアは2・88%ということになる。
GDPでは、09年世界約58兆ドルのうち日本は約5兆ドルで、シェアは8・68%だ。それと比べると、スマートフォンが3%未満というのは、日本がクラウドの潮流から取り残されていることを明確に示している。
(図:世界での日本のシェア
人口:1.87%
GDP :8.68%
スマートフォン:2.88% )
これは、われわれの日常的観察とも一致する。先日ある新聞で、「これまでの携帯電話のほうが便利」という読者の声が目についた。そう考えてしまうのも無理はない。スマートフォンは、Gメールなどのウェブメールやウェブカレンダーを使っていた人には生活が一変するほどの変化をもたらすが、そうでないと「ただの箱」になりかねないのである。
「スマートフォンって、何のための機械?」というのは、日本ではごく当たり前の質問だ。前々回、「アップルの成長は、アメリカが近視眼的になっている証拠だ」という意見を紹介したが、こうした意見の人もスマートフォンをそう考えているに違いない。
PCはインターネットがなくても役に立つ。実際、われわれは、20年間近くインターネットなしでPCを使ってきた。しかしスマートフォンは、インターネットが生活の中に入り込んでいないと、役に立たない。メールを使っていても会社のメールシステムだけというのでは、スマートフォンの出番はない。日本でスマートフォンに関心が持たれないのは、日本がITに対応していないことの証拠だ。
ジョブズのメッセージを「1ケタ間違っているのではないか?」と受け取ったのも、私がそうした社会に生きているからである。だから、日本で「クラウド大戦争」といってみたところで、多くの人には、映画『スターウォーズ』のように、宇宙のはるかかなたで行われている戦争のように聞こえるだろう。
=転載終了=
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