http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/401.html
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現状では日銀引き受けなんて必要もないから、それはどうでもいいが
「世界経済失速にどう立ち向かうか」に対しては
短期的な需要不足は復興需要だけで十分ということらしい
それで日本経済の長期停滞が解決するわけがないだろう
結局、我慢して財政再建に励んで日本の長期衰退を覚悟しろという結論か
オリジナルなアイデアが全くないし
さすが日銀出身だけあってリスク回避的な意見だ
http://diamond.jp/articles/-/14180
世界経済失速にどう立ち向かうか(下)最大の懸念は先行きの見えないユーロ危機 日本の課題は短期の財政活用・長期の財政規律
――京都大学公共政策大学院教授 翁 邦雄
前回に続き、かつて日本銀行の理論的支柱といわれた翁邦雄京大教授のインタビューの後半をお送りする。世界経済の動揺に対して、日本はどのような対応がありえるのかを中心に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド社論説委員 辻広雅文、ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)
おきな くにお/1974年東京大学経済学部卒業、日本銀行入行、80年シカゴ大学留学、83年同大学でPh.D取得・日本銀行復帰(金融研究所)、85年筑波大学社会工学系助教授、88年日本銀行復帰(総務局)、92年調査統計局企画調査課長、94年金融研究所研究第一課長、97年企画局参事、98年金融研究所長、06年日本銀行退職、中央大学教授、09年京都大学・公共政策大学院・教授、現在に至る。『金融政策』(東洋経済新報社)『ポスト・バブルの金融政 策』(共著、ダイヤモンド社)『バブルと金融政策』(共著、日本経済新聞社)『ポスト・マネタリズムの金融政策』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
日銀の国債の直接引受は
世界に危険なシグナルを送る
――米国の財政・金融政策では、予想外の事態が起こっている。では、もう長いこと量的緩和政策を続けている日本の金融政策については、やりようがあるのでしょうか。
原理的には金融政策についてはゼロ金利になって流動性需要が飽和しても、もまだ二つできることがあります。一つが為替レートへのはたらきかけで、もう一つは信用緩和つまりリスクプレミアムを下げることです。
一つ目の為替レートについては、私は非常に悲観的にみています。1国だけが困難な状態にあれば、外需にすがる余地はあるし、日本がそれに頼ってきた面はある。また、震災直後の円高阻止は世界的に理解を得られた、と思います。
ただ、震災直後と違って、いまは日本の為替介入には、米欧は極めて否定的になっているようにみえます。だから、スイスが無制限介入を発表した、と言っても、日本が、例えば円の押し下げ介入で為替レートを円安にする、というのは考えにくい。
次のページ>> 悩ましい中央銀行のリスクテクと損失問題
介入しなくても金融緩和競争で、という議論がありますが、アメリカの長期金利がかなり下がったといっても、10年国債の利回りは2%近くあって、日本が1%程度だから競り負けてしまいます。為替レートの政策的な円安化は無理だろうと思います。
もう一つはリスクプレミアム引き下げです。いま金融面で不足しているのは、流動性ではなくて、リスクをとってくれるおカネです。流動性が足らないわけではないので、中央銀行が安全資産を買って中央銀行通貨を供給しても、なにも起きない、だから量的緩和は効かない。
しかし、リスクの取り手は不足しているのだから、中央銀行がリスクのある資産を買えば効果は期待できます。これは平時の金融政策では禁じ手です。でも、アメリカだってFedが信用緩和をやっているわけだし、日本銀行もリスク資産を買ってきたし、包括緩和でもさらにリスク資産の購入を強化しているわけです。
問題は、リスクをとると損失が出る可能性があることです。そこで中央銀行がどの程度までリスクをとっていいのかということになります。中央銀行が損失を出して自己資本が毀損されても誰も困らない、という人もいますが、自己資本に穴があくと、政府への納付金が減る。政治家の人たちは日本銀行に対して、もっと大胆な金融政策を採れ、とよく言うのだけれども、一方で日本銀行からの納付金が減ると、ものすごく怒るわけです。政府・与党が予算を確保するのにこんなに苦労しているのに、日本銀行が納付金を減らすようなことがあっていいのか、と。
信用緩和はリスクプレミアムを下げる、という意味である程度、有効ですが、資源配分に積極的に影響を与えるという意味で財政政策的だし、自己資本に穴をあけるリスクをとる、ということで歳入面からも財政政策に影響を与える、そういう意味で信用緩和は金融政策だけで完結しているとはいえない政策です。
次のページ>> 日銀の国債直接引受はネガティブなシグナルを世界に送る
財政政策と金融政策の境界領域、という観点からは、財政支出を中央銀行がファイナンスするマネタイゼーションという議論があります。これも線引きが微妙な話で、流通市場を経由して国債を買っても、直接引受しても中央銀行が国債を買えば、結局は中央銀行が最終的に財政をファイナンスしているわけだから、そういう意味では、Fed(米連邦準備制度理事会)も日銀もすでにマネタイゼーションを大規模にやっている、とも言えるわけです。ただ、中央銀行が金融政策上のニーズから自発的に国債を流通市場から買う限りは、市場にはマネタイゼーションという形で意識されない。
市場がマネタイゼーションを意識して身構えるのは、財政政策上のニーズから中央銀行に国債を買わせる、という構図です。復興国債の日銀引受、という民主党の代表選挙のときにも出てきた議論はその意味でマネタイゼーションの議論になりますね。
政治家の人たちの議論を聴いていると、復興債を引き受けるということのありうべきネガティブ・インパクトについて、思い及んでいないのでは、という点が気になります。現在、日本の長期金利は1%前後という超低金利です。それにもかかわらず、日本国債は市場でまったく問題なく消化されている。海外ではそれをパズル、と考えている人も多い。
そういう状況で、敢えて日本銀行に引き受けさせる、ということになると、いよいよ市場の消化能力も限界か、と思われる。いろんな国で財政赤字が問題になり、市場がナーバスになっている中で、非常にネガティブなシグナルを世界に送ることになりかねない。
今回の民主党の代表戦に出るような影響力がある政治家がなぜ国債の「引受」を持ち出されるのか、その真意が私にはよく分かりません。被災地の惨状に照らせば、国債消化能力の限界を意識せずに済むかたちで、巨額の国費を投じて大胆に震災復興に取り組みたい、という心情は理解できないことではありません。しかし、市場の疑心暗鬼にさらされ、多くの先進国が自国の国債の信認維持に本当に躍起となっているいま、「市場の日本国債消化能力は限界、日本は財政規律を放棄した」と受け取られかねないシグナルを送るリスクは、極めて大きいでしょう。
次のページ>> ユーロ危機が収まる二つのシナリオ
ユーロ圏は長期的な
問題解決の方向性が見えず
――ここに至っては、決定打となるような財政・金融政策はなく、作用と副作用があるということですね。そういう状況下で、世界経済には再び景気後退の影が色濃くなっています。
世界経済を見る場合、デカップリング(先進国の不況と新興国の成長)がどこまで成立するかは大きなポイントでしょう。成立するとすれば、日本が新興国の成長につかまっていくという手はあります。特に日本の場合、アジアという成長センターに近いわけだから、地理的には有利な状況にある。その中に自らを組み込んで、成長の果実を取り込むという話には、現実味があります。
もっとも、世界経済全体を見ると、厳しいと言わざるを得ません。中国も相当無理をしているし、ユーロ圏とのつながりも強いですから。世界経済の一つのカギは、そのユーロ圏でしょう。ユーロ圏が空中分解するか、それなりに収まっていくのか。収まっていくシナリオは二つあって、一つはなんらかの財政統合、有体に言えばドイツが頑張って他国の面倒を相当に見て、いまのユーロが全体として生き残るというシナリオ、もう一つは問題国を大きな混乱なくユーロから切り離していく、というシナリオです。
ただ、現時点では、長期的な問題解決の方向性はまったく見えません。それぞれの国では痛みを押し付けられたり・押し付けられそうな事態に対して国民が怒っていて、各国政府がそれと無関係にユーロ圏全体の生き残りのための明確な方向を打ち出すのは、簡単なことではないように見えます。
結局、議論の根っ子は日本やアメリカで起きたことと構造的には同じで、特定の金融機関とか国が勝手なことをやって損を出したのに、どうして堅実に暮らしてきたわれわれが損をかぶって助けないといけないんだ、ということです。
次のページ>> 課題は短期の財政需要増と長期の財政規律の両立
しかし、ユーロ圏の場合、それぞれの国民は国として独立しているから、基本的には分断されているイメージを持っているけれども、実際は、深くつながっていて、例えば欧州の銀行はお互い多額の債権を保有していて、かなりの部分で一蓮托生になっている。にもかかわらず、国民は、ユーロ圏の一部の国の破綻が金融システムの崩壊につながるとものすごい返り血を浴びるかもしれない、とは必ずしも実感していない。その意識が薄いので、国によって勇ましい意見が出てくるということではないでしょうか。
復興需要は内需の核になりうる
長期の財政再建との両立が課題
――世界経済は大変に厳しい状況に直面している。とすれば、日本の財政・金融政策としては何ができるのでしょうか。
日本の財政政策についていえば、東日本大震災が起こった結果、大きな財政需要が出ている。これは意味のある投資案件を抱えているともいえます。無駄ではない、国民が納得できる投資なので、内需の核になりうる。しかも復興需要ということで短期・一時的と整理できる。問題は、この財政需要の高まりと、長期の財政規律を両立できるかということです。
どの国も長期の財政規律を守るということが難しいわけで、日本も財政再建をずっと先送りしてきたのですから、簡単ではありません。野田政権がそこに道筋をつける、不確実性を減らしながら短期的に財政をうまく使っていければ、日本経済についてそれなりに展望がひらけてもおかしくないと思います。
――金融政策については、どのような対応が考えられますか?
金融政策については、単に金利を下げたり、量を増やすという政策は、とうに限界にきている。でも、経済状況が悪くなる懸念があれば、何かをする必要はある。だから、昨年の4月に成長基盤強化策が出てきたり、10月には包括的な金融緩和政策が出てきたり、というかたちで、いろいろ知恵を出し何かをひねり出してきた、ということだとおもいます。特効薬や決定打などないのですから、なにか知恵がないか、必死に考え続けているのだと思います。
次のページ>> 市場を驚かせるような政策の効果は長続きしない
あえていえば、中央銀行がなんらかの政策をとるときに、マーケットを驚かせたいと思うのか、驚かせたくないのか、という観点もあるように思います。マーケットにインパクト与えるために敢えて驚かせる。スイスの無制限介入のように、為替レートに働きかけるようなものは、そういうことを意図して、何かアナウンスメント効果が大きいものを選ぶこともあるでしょうし、QE2(インタビュー前半参照)のようにマーケットを驚かせて、一時的にせよ株価を上げた、という例もあります。
ただ、マーケットを驚かせる効果は通常長続きしませんし、マーケットをいつも驚かせようとしていると、今回の米国のように、サプライズがないと市場が失望するようになります。また、非伝統的な政策については、過剰に反応されない方がよいこともあるかもしれません。結局、政策の組み立てやアナウンスの仕方は、そのときに中央銀行が直面している課題によって全く変わるわけで、日本銀行が何を、どうやろうとするかも、その時の状況によるでしょう。
世論調査
質問1 日本銀行はもっと資金を市場に供給すべきだと思いますか?
50%
思う
50%
思わない
わからない
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