http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/372.html
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確かに富裕層への課税を強化しさえすれば、日米など高齢化が進む国家での非効率な社会保障や、新興国に比べて、あまりに低い労働生産性(一部の正社員の割高い賃金)が解決するわけではない。
得られる税収は増え続ける高齢者への現状の医療や年金を賄うには大海の一滴に過ぎない。
しかし大衆には幻想と仮想敵が必要だと政治家は良く理解しているから、当面は、そちらの方向に政治的には流れていき、
特に日米の先進国では(賢い超富裕層は逃げてしまうので)一般富裕層も大衆も仲良く貧困化していく過程は避けられそうもないようだ(そして常に若年層が一番痛い目にあう)。
かと言って、新興国の中間層がそう劇的に豊かになれるものではないので、少しづつ国家間では格差が縮んでいき、その過程で、上手く国家間の裁定取引ができる人々が、成功者になるのだろう。
日本の場合、当面は増税は控えて第3次補正をきちんと行った方が良いし、長期的にはできるだけ経済システムを非効率化せず、全体最適になるような税システムを構築してもらいたいものだ。
が、官僚と政治家には、あまり期待しない方が良いか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/23614
税制と階級闘争:金持ち狩り
2011.09.26(月)
富裕層は今よりも多くの税を負担する必要がある。だが、富裕層の増税には良い方法と悪い方法がある。
角笛が吹き鳴らされ、猟犬たちがうなり声をあげている。世界の先進国のいたるところで、富裕層の増税を狙う「狩り」が進行中だ。
フランスとイタリアでは、最近まとめられた緊縮予算で、年収がそれぞれ50万ユーロ(68万ドル)、30万ユーロを超える層に対して、3%の増税が課された。英国では、年収15万ポンド(23万5000ドル)を超える層に対して労働党政権が設定した50%という所得税「暫定」最高税率について、廃止を検討したというだけで保守党が非難を浴びている。
バフェット氏と昼食する権利、オンライン競売が開始 早くも200万ドル
富裕層増税を訴える急先鋒が大富豪のウォーレン・バフェット氏〔AFPBB News〕
そして今度は、米国のバラク・オバマ大統領が新たな赤字削減計画を発表し、富裕層に照準を合わせた増税案を打ち出した。
この計画には、年収100万ドルを超える世帯が負担する平均税率が、「中間層」世帯を下回ることがないようにするという「バフェット・ルール」も含まれている(ウォーレン・バフェット氏は、自分が億万長者でありながら、自身の平均税率が秘書よりも低いと指摘した)。
赤字解消のための富裕層への増税は「階級闘争ではない」とオバマ大統領は訴えた。それは「算数」だ、というのだ。
だが実際は、単純に算数の問題では終わらない。富裕層に増税すべきか否かという問題は、政府の適切な大きさや、税の再分配における政府の適切な役割に関する政治的判断に左右される。算数に則れば、野党共和党が主張しているように、赤字は理論的に歳出削減だけで解消できる。
階級闘争というのは、感情的な意味合いをひきずる言葉かもしれないが、欧米社会における議論の本質は捉えている。すなわち、財政是正の負担を負うべきなのは誰か、という議論だ。
大きな政府は非難されるべきだが・・・
一般論として、本誌(英エコノミスト)は本来小さな政府を支持し、持続不能な社会保障制度の費用を捻出するための増税に反対している。危機において金融業界が果たした役割を理由に富裕層への増税を正当化するという、現在の多くの議論の裏にある考え方を、本誌は否定する。報復は課税の理由としてはお粗末だ。
現在の国庫に対する貢献のパターンが明らかに「不公平」だとも本誌は考えない。米国の上位1%の最富裕層の手取り収入は税引き前収入の20%未満で、彼らは連邦政府の税収総額の4分の1以上(所得税では40%)を負担している。
また、英労働党の増税案のような条件反射的な富裕層バッシングが良い政策につながることはほとんどない。高い限界税率は、起業家精神を後退させる。
また、オバマ大統領がどれほど「百万長者や億万長者」に言及しようとも、富裕層に対する増税だけでは、米国の赤字は解消できない。
富裕層からの税収を増やす正しい方法
このように、富裕層増税を巡る議論はひどく歪められてしまっている。だがそれでも、富裕層がより多くの税を負担すべきだと言える正当な理由が3つある。ただし、その際に取るべき方法は、全体として、先進国の政府が現在提案しているようなものではない。
第1の理由は、欧米の赤字は歳出削減だけで解消すべきでないということだ。公的支出を減らすべきだという点は間違いない。巨大化した非効率的な政府をスリム化する余地は大いにあり、過去の赤字削減プログラムの研究からも、歳出削減を柱とする対策の効果が最も大きいことが分かっている。
歳出削減と増税を4対1とする英国の比率は、概ね適切である。だが、その比率が示唆しているように、増税も併せて実施すべきだということも、経験から示されている。米国では、長年の減税を受けて税率が歴史的に低くなっている。米国でもそれ以外の国でも、増税により重荷の一部を担う必要がある。
第2に、富裕層からの税収増には政治的裏づけとなる議論が存在する。歳出削減の負担は、裕福ではない層の方に偏ってかかる。しかも、危機以前でさえ、中間層の所得は伸び悩んでいた。
その一方で、グローバル化により、勝者はさらに大きな富を手にするようになっている。現行の緊縮財政に対する有権者の支持を得るためには、新たな歳入のうち富裕層から徴収する割合を高くする必要がある。
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むやみに増税すれば、英シティ(金融街)から人が流出する〔AFPBB News〕
だが、どうやって増税すべきなのか?
これまでのところ、多くの国の政府が所得税の限界税率の引き上げを重視している。ほとんどの富裕層は、これにすばやく対応している。
資本家は、キャピタルゲインなど税率の低い形へと収入をシフトし、住所を移し、仕事量を減らし、起業のリスクを避けるようになっていく。
これらの影響の大きさを正確に把握するのは難しいとしても、最富裕層にどの程度の課税をするかは大きな意味を持つだろう。英国の50%という最高税率は、米国の所得税の最高税率を35%から39.6%に引き上げるというオバマ大統領の提案よりも危険だと言える。
ロンドンに住んで年に100万ドル稼ぐ人は、同じ収入で他の金融拠点に住む人よりも多くの税金を払うことになる。いつでも他所に移住できる富裕層がこれほど多く住む都市としては、狂気の沙汰だ。
1970年代の最高税率はもっと高かったという言い訳は、決して信頼感を高めはしない。
より簡素に、大胆に、効率的に
先進諸国が成長の加速を必要としていることを考えれば、各国政府は急激な増税には慎重になるべきである。何よりも、その種の増税は必要ではないからだ。
実際のところ、富裕層からより多くの歳入を得ることを支持する3番目の根拠は、限界税率を上げなくても、税制を効率化すればそれが可能だということにある。
税制改革の余地が最も明白に見えるのが米国だ。米国は、所得税に対する依存度が他国よりも高く、住宅ローンの利子支払いから雇用主が用意する医療保険まで、あらゆるものが控除の対象になっている。そのため、課税の対象が極めて狭い。これらの控除を廃止すれば、税制が単純になり、年間1兆ドルもの税収増が見込める。
控除の恩恵を最も大きく受けているのが富裕層なので、増加する税収のほとんどは富裕層が負担することになる。また、この種の税制改革では限界税率は据え置かれる(または引き下げられる)ため、富を築こうとする意欲はさほど削がれないだろう。
既に税制が米国よりも効率的な欧州では、所得税から固定資産税へと重心を移すことが選択肢の1つになるだろう。この方法なら、富裕層からより多くの税金を徴収しながら、リスクを取る意欲に対する影響を低く抑えられる。したがって、英国の自由民主党が提案する「マンション税」は、50%の最高税率よりもダメージが少ない。
また、米国でも欧州でも、給与や賞与にかかる税率と、配当金やキャピタルゲインにかかる税率の格差を縮める余地がある。この格差こそ、バフェット氏の平均税率が秘書より低い理由を説明するものだ。バフェット氏の収入の大部分は、キャピタルゲインと配当金が占めているからだ。
ヘッジファンドやプライベートエクイティで荒稼ぎした人たちも、この差を利用して巨万の富を独り占めしてきた。
本当に目指すべきもの
ここに基本的な取引を行う余地がある。給料と資本にかかる最高税率が等しく、ほぼすべての控除が廃止された税制を想像してみてほしい。投資に対して二重に課税することを避けるために、そうした税制では、法人税を取り除く必要があるだろう。また、所得税の最高税率を大幅に引き下げることも可能になる。
その結果は? 経済の活力を損なわずに、全体として富裕層からの税収を増やすことができる。それこそが、角笛を鳴らすにふさわしい獲物だろう。
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