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9日に開催されたG7から始まり、16〜17日に開催された欧州連合(EU)財務相非公式会合、20〜21日に開催されたFOMC、そして今回のG20と、この2週間の間に相次いで開催された会議を経て金融市場が再認識したことは、現在の苦境を脱する「魔法の杖はない」ということだ。
「統一通貨ユーロ」がもたらした繁栄は、「想定外」の事態が発生することを想定していなかったという点で、日本の原発事故と同質のものである。「統一通貨ユーロ」は「財政赤字がGDP比で3%以下」という様な「参加条件」は規定していたが、「想定外」の事態が起きた際の「退場条件」は規定していなかったし、事態を収束させるための手順も用意されていなかった。
ユーロ圏首脳は、2年債利回りが69.69%まで上昇し、自らの信用力で資金調達が出来ないギリシャを、何とか「法的デフォルト」にしないように腐心しているが、それは「失われた20年」を招いた1990年代の日本式手法である。「実質デフォルト」しているギリシャをデフォルトさせない欧米政策当局の発想は、「実質破綻」している東京電力の破綻を認めずに上場を維持している日本政府のそれと同質のもので、「詭弁」でしかない。
欧米のメディアでは「日本のように決断を先延ばしすれば、問題の解決は難しくなる」と欧米政治の「日本化 (Turning Japanese)」を危惧する声が挙って来ているが、一連の会議は欧米の「Turning Japanese」が避けられないことを感じさせるもの。
実りなきG20が「多くの時間を欧州財政不安への対応」に費やす中、日本の素人財務相はKYぶりを如何なく発揮したようだ。「過度の変動や無秩序な動き」を伴わない円高が進行する中で、お決まりの「為替相場の過度の変動や無秩序な動きは、経済や金融安定に悪影響を与えることを再確認」というお題目を声明に盛り込むことに注力したようだ。
足下の為替市場で「過度の変動や無秩序な動き」が見られるのは円ではなく、ブラジルレアルや韓国ウォンなどの新興国通貨である。この程度のことは「市場を注視」していれば分かること。これが分かっていないということは、「市場を注視」せずに、財務省官僚が作成したお伽話を聞き過ぎていることの証左である。
素人財務相が財務省の代弁者として「(日本の景気回復傾向に)円高が水を差す状況にある」と力説するのは、増税のために「日本経済が増税に耐えられる状況にある」ということをアピールする必要があるからである。
日本政府が「日本経済は回復傾向にある」というプロパガンダを繰り返すのは、「増税」を既成事実化するためである。しかし、「日本経済は回復傾向にある」という政府の見方は事実を歪めたものである。
政府が「日本経済は回復傾向にある」と宣伝する根拠は、2011年こそ震災の影響で成長率はマイナスになるものの、2012年には主要国の中で高い成長を達成すると予想されているからである。24日付日本経済新聞には、日本、米国、ユーロ圏、新興国についてのIMFの経済見通しが掲載されている。
これによれば、日本は2011年こそ▲0.5%成長になるものの、2012年には+2.3%成長と、+1.8%成長の米国(2011年は+1.5%成長)や、+1.1%成長のユーロ圏(同+1.6%成長)を上回る高い成長が見込まれている。さらに、水準こそ+6.1%成長が期待されている新興国(2011年は6.4%)に及ばないものの、新興国を含めて米国、ユーロ圏共に2012年は成長が鈍化する中、日本は唯一2012年に成長が加速することが見込まれている。ここが、「増税」を既成路線としたい政府による「日本経済は回復傾向にある」というプロパガンダの論拠になっている。
2012年の経済成長見通しだけをみると、「日本経済は回復傾向にある」ように映る。しかし、これは「詭弁」である。
日本、米国、ユーロ圏、新興国、それぞれの2010年の経済規模を100とすると、IMFの経済見通しが正しかったとして、2012年末の日本の経済規模は101.8(=100×(1‐0.5%)×(1+2.3%))と、2010年比で1.8%しか拡大しない。そして2011年、2012年の2年間の平均成長率は+0.89%に過ぎない。
同様に米国、ユーロ圏、新興国の2012年末の経済規模と2年間の平均成長率を計算してみると、米国は103.3と+1.65%、ユーロ圏は102.7と+1.35%、新興国は112.9と+6.25%になる。つまり、日本は、2010年対比でみた2012年末時点での経済規模においても、この先2年間の平均成長率においても、ユーロ崩壊の危機にあるユーロ圏にも及ばず最下位なのである。
要するに、2012年の日本の成長率見通しが最も高いことを理由にした「日本経済は回復傾向にある」という政府のプロパガンダは、数字のマジックを使った「詭弁」でしかない。
23日付及び24日付日本経済新聞には、興味深い記事が掲載されている。
23日付の紙面には「3メガ銀 震災関連融資 伸び悩み 復興需要、力強さ欠く」という見出しで、「3月の地震発生から8月末時点までの約半年間の融資の実績額は、3メガ銀の合計で3.6兆円。(中略)3メガ銀が8月末時点で把握していた震災関連の資金需要は計7兆円。実際に融資に結びついたのは半分程度にとどまった」ことが報じられている。そして、政府の増税プロパガンダに加担している日本経済新聞も「民間の資金需要をみる限り、現時点では復興需要に力強さが欠けているのが実態だ」と結論付けている。
翌24日の紙面には、「東北6県、銀行預金急増 日銀支援融資に影響」という見出しで、「東北6県内の7月末の預金残高は28兆6700億円と、前年同月に比べて9.3%増加。伸び率は全国平均(2.7%増)を大幅に上回った」こと、さらには「資金需要は伸び悩んでいる。東北6県内の国内銀行の7月末の貸出金残高は15兆7600億円と、伸び率は1.1%増にとどまる。全国平均(0.1%減)は上回るものの、融資は運転資金が中心とみられ、工場再建に伴う設備投資など本格的な復興需要は盛り上がりを欠いている」ことが報じられている。
これらの報道から窺えることは、2012年の日本の経済成長の原動力とされる「復興需要」が、想定よりも弱い可能性が高いということである。
また、同じ24日付日本経済新聞には「家電量販店 採用抑制・出店見直し 地デジ特需の反動大きく」という見出しで、「地上デジタル放送への移行による薄型テレビなどの販売急減を受け、大手家電量販店が採用抑制や出店計画の見直しに乗り出す」ことが報じられている。
【参考】⇒僅か4年足らずの間に消費税20%強に相当する付加価値を失った日本経済 〜 それでも増税を目指す
これまで経済を下支えして来た「地デジ特需」が消滅し、「復興需要」が予想以上に弱いということを総合して考えると、現状では「2012年の経済成長率は政府見通しを下回る」可能性が高く、日本経済は「増税に耐えられる状況にはない」というのが常識的な判断のはずである。
自ら報道している事実を積み上げて行けば、「日本経済は回復傾向にある」という結論を導き出すことは出来ないはずであるにも拘わらず、政府の「増税プロパガンダ」に加担し、「詭弁」を報じ続けるのは何故なのだろうか。
日本経済新聞をはじめ、政府の「増税プロパガンダ」に加担しているメディアや有識者は、事実を認めて「増税プロパガンダ」に加担するのを即刻中止するか、どのようにして「日本経済は増税に耐えられる」という結論を導き出しているのかを説明をするべきである。
マスコミが、「増税論=責任ある議論」や「日本経済は回復傾向にある」という「詭弁」を用いて増税を既定路線化することに加担することはあってはならない。(近藤駿介)
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