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バーナンキ議長は現在の量的緩和水準を維持しながら、長期国債の保有比率を大幅に引き上げるよう決断した。長期の実質金利をさらに下げて、住宅市場や民間設備投資を刺激しようという目的が鮮明になっている。もちろん、ドル安要因だが、米国債相場は安定するので、いわゆるドル不安は起きない。対する白川日銀は
無策を押し通すのだろうか。
日銀は9月7日の金融政策決定会合で、追加的な金融緩和の実施を見送ったのは、前回8月に実施した金融緩和が「思い切った」(白川方明総裁)円高対策を打ち出したからだというが、だまされてはいけない。日銀資金による小額の資産買い入れ増額は従来路線の延長でしかなく、超円高の進行が食い止められるはずはない。
そもそも、現下の円高は、日米間の実質金利差の拡大に起因する。日銀は2010年10月に「包括的な金融緩和政策」だと銘打ちし、「実質的にゼロ金利政策を採用していることを明確化した」(日銀の発表文から)とうたい、日経新聞をはじめとするメディアは以来、「日銀、ゼロ金利政策を維持」と報じてきた。実際に実質ゼロ金利だろうか。
日本の実質金利はことしは0.5%前後で推移している。米国の場合、インフレ率3%台を反映して実質金利はこの数カ月間は実にマイナス3.5%前後で推移している。日本の実質金利は米国を4%前後も上回る。他通貨に比べ実質金利が高い、ということは、その国の通貨の預金や国債などの金融資産の価値が高いことを意味する。国内外の投資家はドルを売って円を買う。超円高はこうして引き起こされる。
であれば、円高に歯止めをかけ、是正する政策ははっきりする。名目の短期市場金利はゼロ・コンマ%まで下がっている。名目金利ゼロにしたところで絶望的なまでの対米実質金利差をわずかしか縮められない。
そこでとりうる政策は、予想インフレ率を引き上げることだ。日銀はそれこそ明確に、物価上昇率が前年比2、3%まで上昇するまで量的緩和政策を続けると宣言し、市場のインフレ期待を高める政策である。日銀の白川総裁は「金融の量拡大による景気・物価に対する刺激効果はほとんどない」とする見解を持ち続け、日銀による資金供給は最近では東日本大震災直後のような緊急時か金融市場不安時に限定している。デフレから脱し、インフレ率をプラスに高めていくという発想がまるでない。
これとは対照的に米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長はリーマン・ショック後、2度にわたって住宅ローン担保証券や米国債を巨額規模で買い上げ、FRB資産を短期間で3倍にも増やした。それでも実体景気ははかばかしく改善しないのは、白川氏の「学説」通りかもしれないが、米国は少なくともデフレを回避し、肝心の米国債相場を安定させ、ドル安に誘導するのに成功してきた。
21日、東京外為市場の円相場は一時、1ドル=76円11銭まで上昇し、東京市場としての戦後最高値を更新した。学究肌の白川総裁の理論が学術的にどうであろうと、日本国や国民を破壊する代償を伴うなら、さっさと引っ込めるべきではないか。
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