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9月20日、IMF本部で世界経済見通しを発表したIMFチーフエコノミストのオリビエ・ブランシャール氏は、世界経済は「危険な新局面にある」と述べた〔AFPBB News〕
「第2のリーマン」となりかねないギリシャ危機
ユーロ圏の対応の遅さに潜む危険性
2011.09.22(木)
Financial Times
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2011年9月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
「危険な新局面」。国際通貨基金(IMF)は今週開催される年次総会に先立ち、世界経済の現状を正確にそう要約してみせた。
政府の信用リスクの増大(20日にはイタリア国債が格下げされた)、不安定な資産市場、衰える経済成長の勢い――。
間違いない。あの2008年のホラー映画を世に送り出した制作者たちは続編を企画している。タイトルは「リーマン・ブラザーズ2:今度はソブリン」というところだろうか。
昔から言われるように、IMFは「It's Mostly Fiscal(概ね財政ばかり)」の略である。また、先進国には新たに金融政策を打つ余地がないことから、政策に関するIMFの主張の大半は税と歳出に着目したものになっている。
財政政策を巡る2つの極端な主張
債務危機には、財政政策について2つの極端な主張が展開される。1つは、緊縮財政など絶対にうまくいかないという主張。もう1つは、新たな借金をしても債務から逃れることにはならないという主張だ。
どちらも、必ずしも正しいわけではない。しかし、目下の問題は、1番目の主張を無視した政策が行われているギリシャがその1番目の主張の通りになっている一方で、2番目の主張を受け入れた政策が行われているドイツ、米国、英国がその2番目の主張の通りになっていないことだ。
緊縮財政など絶対にうまくいかないという1番目の主張は、債務危機からの脱出において緊縮財政の導入が功を奏した事例を無視している(例えば、2000年代初めのブラジルとトルコの事例。この時はIMFが大規模な救済プログラムを実施したが、その後は資本市場に長期にわたるブームが訪れ、IMFの出番はほとんど無くなった)。
緊縮財政と景気拡大が同時に達成された1990年代のカナダやスウェーデンの、よく引き合いに出される事例も無視している。
しかし、これらの国々(特にブラジル)は、世界経済の急回復を背景に輸出先に恵まれていた。カナダとスウェーデンは、為替レートを切り下げることもできた。ギリシャにはこのような好材料がなく、財政政策を使って窮地を脱することもできない。この国には債務再編が必要だ。
2番目の神話には、短期の景気刺激策と長期の支払い能力についての意図的な、あるいは無理解ゆえの混乱が見受けられる。皮肉なのは、米国(少なくともその連邦議会)と英国、そしてドイツが、財政政策を短期的に引き締めても経済成長は実現するとの前提に立っていることが、同じことをしようとする他国の取り組みを危うくしていることだ。
この3国は、こうすれば市場は支払い能力に不安を持たなくなるだろうと考えて行動しているのだが、実際には市場が各国の経済成長の心配をする結果になる。
一方、この緊張状態の大部分の原因(すなわち、ユーロ圏によるギリシャ危機解決の取り組みがあまりにも遅く、足並みもそろっていないこと)はまだ取り除かれていない。
ユーロ圏の大臣たちは、金融市場は自分たちが決断を下すまで待っていてくれる、資産の価格を引き下げたり、愛想を尽かしたりせずに待っていてくれると、いまだに思っているようだ。これでは、決断が下されるまでに状況が変わってしまっているだろう。
議論しているうちに戦況が変わり・・・
スペイン内戦で共和国派に属していたユートピア志向の強い一派について語られている話がある。彼らは塹壕の中で会議を開き、次に取るべき行動について話し合っていたとされる。
だが当然ながら、意見を述べ合い、多数決で方針を決めたころには戦況が変化し、いつのまにか民族独立派の機関銃の弾幕に向かって突き進んでいたことも多かった。しかし、少なくとも彼らは皆、意見を言うことができたというのだ。
大半とは言わないまでも多くの新興国は、短期的なマクロ経済運営を見事に行っている。西欧や北米諸国は、その手法に学ぶことができるだろう。
外貨準備のクッションと財政黒字を積み上げることにより、景気変動に対抗できる自由度を前例のないレベルまで自力で高めていた新興国は、2009年の景気後退の影響を打ち消すことができたのである。
しかし、ロバート・ゼーリック世界銀行総裁が今週語ったように、新興国が新たな景気下降局面に対抗する財政上の余力は、2008年のそれに比べればはるかに小さい。
総裁によれば、発展途上国全体の財政状況は2007年以降、国内総生産(GDP)比で2%悪化しており、4割の国でGDP比の財政赤字が4%を超えているという。
新興国にも及び始めた景気悪化
また、特に中国のような輸出・設備投資主導の経済が消費主導の経済へと構造変化を遂げるにはかなり長い時間がかかることも考え合わせれば、先進国の景気の悪化がなぜ発展途上国にも影響を及ぼしているかは明白だろう。
BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国が国債の購入によってユーロ圏を救うなどというドン・キホーテ的な話があるが、これは新興国が裕福な先進国から、首脳レベルの会議の前に行うメディア操作の技術をうまく学び取ったことの表れだ。
財政政策に対する見方が大幅に変わらない限り、あるいは債務再編を行わない限り、首脳レベルの会議を開いても、できるのはギリシャ情勢の推移を見守るぐらいで大した成果は得られないだろう。
「危険な局面」というIMFの指摘はまさにその通りであり、政策対応はその最も恐ろしい部分を構成しているのだ。
By Alan Beattie in Washington
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