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日本が「ギリシャ危機」から学ぶものは何か?:何はさておき、まず得られる教訓は「間違った増税の愚」
http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/265.html
投稿者 あっしら 日時 2011 年 9 月 14 日 17:34:58: Mo7ApAlflbQ6s
 


昨年の春に明確になったギリシャの財政危機(=実質は銀行が大量に保有するギリシャ国債のデフォルト問題)は、ドイツ・フランスを中心としたEUの金融支援策で一時的に鎮静したが、ここにきて危機がにわかに再燃している。

日本では、昨日、野田新首相が所信表明演説を行い、「財政健全化と経済成長の両立」という俗耳に入りやすい政策を掲げた。

ギリシャ危機を同時進行的に見ていながら、トンチンカンな政策に今なお固執する野田新首相は、現実に対する感度が鈍く、財政政策や経済論理がまったくわかっていないと言えるだろう。

昨年の参議院選挙で菅前首相は、消費税(付加価値税)税率アップの必要性を掲げ、日本も「このままいったら、2年か3年で、あるいは1年か2年でギリシャみたいになっちゃうよ」と言って国民を脅迫した。

敗北した参議院選挙後も、「税と社会保障の一体改革」というスローガンのもと、財務省の代弁者とも言える与謝野氏まで担ぎ出して、2010年代半ばまでに消費税税率を10%まで引き上げることを決めた。

菅首相以降の民主党政権は増税路線を明確にし、とりわけ野田首相はその強硬路線の先駆けのような存在である。

ここではギリシャ財政危機問題自体を論じるのではなく、ギリシャ財政危機から日本政府及び日本国民は何を学ばなければならないのかを考えてみたい。

06年にVAT(付加価値税)を1%(19%に)引き上げていたギリシャは、“リーマンショック”後の金融機関救済策もあり09年の財政赤字がEU基準3%の4倍以上の12.7%(その後13.6%に修正)になったことで、歳入を増加を目的にVATを10年初頭に21%、10年7月には23%に引き上げた。
さらに、それと並行して、歳出を減らすため公務員給与や年金支給額を中心とした財政支出削減策を講じた。
(野田新首相も、それこそポピュリズム丸出しで、国民受けする公務員給与の引き下げを提示)

端的に言えば、付加価値税の引き上げで歳入増加を図り、給与や年金を減らして歳出削減を図るという両方向からの財政均衡策により、黒字化は無理でも、デフォルトに対する不安は払しょくできると踏んだわけである。

それがここにきて、ギリシャ国債のデフォルトもやむなしという声さえあがるかたちで危機が再燃したのは、そのような財政政策が“誤り”であり、ギリシャ政府の債務遂行能力がなくなりつつあることが明白になってきたからである。

当然である。
付加価値税は、国民の実質可処分所得のみならず企業の収益を圧迫する税制である。

付加価値税の引き上げで実質可処分所得が減り、公務員給与や年金の削減である層の可処分所得が減少すれば、将来への不安も高まるなかでは、付加価値税の引き上げや給与・年金の減少額以上に消費が衰退し、GDPレベルの総需要も大きく減少することになる。

最終的に消費者につけ回しがされるのが付加価値税であるが、最後にババを引くひとが手元不如意になっているのだから、税率を引き上げても税収は増えない。

(1兆円の5%は500億円だが、7千億円の7%は490億円である。欧州のように食料品など必需品が軽減税率になっている制度であればなおのことである)

個人の所得税や法人税も、給与削減や消費低迷を受けて減少しているはずである。

ギリシャ政府は財政の内実を明らかにしていないが、昨年7月の財政健全化策までの税収より逆に減少していることは間違いないだろう。

(日本では“消費税”という呼称でごまかされているが、負担は誰がするにしろ、消費税は企業が生み出す付加価値(給与・販促費・減価償却費・利益など)に課せられる税金であり、まわりまわって国民経済を幅広く疲弊させる)


日本がギリシャから学ぶものとタイトルしたが、本来は、ギリシャなどがこの20年間の日本から学ばなければならなかったのである。

日本は、1989年4月から3%の消費税を施行した。
さらに、1997年4月からは地方消費税1%と合わせて消費税を5%に引き上げた。

そして、2010年代半ばには消費税を10%に引き上げようとしている。

日本は1989年に消費税(VAT)を初めて導入したが、税収の増加が得られたのは2、3年間のみで、その代わり、バブル崩壊のきっかけでもある89年末での「株価の反落開始」につながり、長期不況・デフレ基調経済への助走が始まった。

1997年の消費税税率引き上げも、その年の秋の拓銀・山一証券の破綻を招来し、税収の増加はその年にわずかなものがあっただけである。

バブル崩壊や97年金融破綻が消費税の導入や税率アップのみで引き起こされたと主張するつもりはないが、経済状況を勘案しながら導入されたり税率アップがなされたことから、消費税(付加価値税)が国民経済に広く深く与える影響を推し量る材料にはなると考えている。


【税収推移(単位:兆円)】

88年:50.8
89年:54.9※消費税導入
90年:60.1
91年:59.8
92年:54.4
93年:54.1
94年:51.0
95年:51.9
96年:52.1
97年:53.9※消費税税率アップ
98年:49.4
99年:47.2
00年:50.7
01年:47.9
02年:43.8
03年:43.3
04年:45.6
05年:49.1
06年;49.1
07年:51.0
08年:44.3
09年:38.7
10年:37.4


 この税収推移やこの間の日本経済の変移を見てわかるように、消費税増税=税増収ではなく、増税が一時的な増収になることで国民経済を傷みつけ、中期的には税も減収になることがわかる。

(消費税の導入や引き上げが、高額所得者の所得税“緩和”と一体で行われたことも、このような変動に大きく影響している)

昨年春から今年秋にかけてのギリシャの推移は、日本の数年間の動きを凝縮したものといえるのだ。


増税を批判しているからと言って、財政赤字を野放図でいいとは考えていない。

日本社会と日本経済が置かれている条件から、これまでの政策を続けていけば、供給と需要の関係が逆転し、インフレ・円安に陥ることは避けがたいと考えている。

デフレ不況で企業収益が圧迫され、国内需要の増大も見込めないなかでは、製造業に限らず、様々な企業が国外に活路を求めることになる。さらに、収益を確保するために人件費の抑制をいっそう強化していくはずだ。
その一方で、年金や医療に頼る国民が増加していく。政治である限り、ぎりぎりまでは年金や生活扶助を抑制することはできても、“反乱”を呼び覚ますような切り下げはできない。

このような流れは、日本経済のインフレ・円安につながるものである。
そして、そのような流れでインフレに陥れば容易に抑制することができず、インフレがインフレを呼び、円安が進みそれがさたにインフレを呼ぶという悪循環に陥る。
そうなれば、否応なく、高・中所得者の所得税や法人税(利益にかかるもの)を増税してインフレを少しでも緩和する政策を採らなければならなくなるだろう。

このような事態に陥ることを避けるためにも、デフレの最大要因となっている人件費抑制を是正し、総需要を増大させるなかで個々の企業も利益を上げるという正常な姿に戻す必要がある。
すべての企業が一斉に大幅賃上げができる条件にはないのだから、輸出優良企業が先行して大幅な賃上げを行い、その効果が波及していくなかで他の企業も徐々に賃上げに動く「雁行」型賃上げが求められている。

そして、そののちに、誰がどのように国家及び地方自治体の財政を負担するのが合理的なのかを論議しなければならない。

一言でいえば、インフレ要因である貿易収支黒字を達成していながら、一時的なともかく、15年にわたってデフレ基調にある日本経済は異様なのである。
貿易及び投資で稼いだお金を国内で循環させることで近代の国民経済は成長していくのである。

(輸出は、国内に供給する財を減少させ、輸出する財を生産するための人件費等は内国民に支払われているので、国内の需給バランスを需要超過側に引っ張るものである)

目先の利益や企業というミクロの論理だけで物事を判断するのではなく、供給サイド(企業)が支払ったお金は、まわりまわって供給サイドに戻ってくるものであり、その動きの活発化が企業に利益をもたらすことを理解しなければならない。
逃避でなく、円高を利用した海外進出なら大いにけっこうだ。
進出した先で雇用を広げることでその国の所得水準が上がり、“正常”になった日本経済も成長を続けることもできる。

敗戦の焼け野原から国家=共同体の力で再建を果たし、企業活動の原動力である人材も、日本社会の歴史性や学校制度のなかで培われてきたものである。

ただでさえ長期デフレ不況のなか、大震災とトンデモナイ放射能災害に見舞われた日本は重大に岐路に立たされている。

このようなときこそ、政府もだが、日本経団連など有力大企業の経営者が先頭に立って理性的な判断をしなければならないはずだ。


 

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コメント
 
01. 2011年9月14日 18:41:10: Pj82T22SRI
>デフレの最大要因となっている人件費抑制を是正し、総需要を増大させるなかで個々の企業も利益を上げる

理想としては間違ってはいないが、賃金は需給で決まっているから、そう簡単には上向きにはならないだろう、
それに今の状況では民間の賃上げだけに頼るのは少し無理がある

>>15年にわたってデフレ基調にある日本経済は異様

名目GDPが下がっているのは、純粋に金融政策に問題があるのだろうが
実質GDPは増加しているし、失業率もOECDの中では低い

欧米も、実は単なるバブル経済だったことが判明し
今は円ベースで見たら、10年前以前のレベルまで落ち
さらに止まる気配はない

日本が特別に悪いわけではなく、先進国全体が
実質的な経済は低成長だったということだろう

一番の問題は成長戦略を取らず、税制や労働規制など様々な規制のため
国内での実体経済への投資が停滞し、新興国に吸い取られてしまったことだが
それは世界全体の格差縮小のためには必要だったのかもしれない

もう一つの大きな問題は高度成長時代の制度を引きずっているため
高齢既得権層に対する再分配ばかりで、
若年層の負担や雇用上の不利が大きくなり過ぎていることにある
これでは、将来に夢はもてないし、社会への不満が爆発することになる

目先の不況対策のための財政出動だけではなく、長期的な社会保障の再構築も急務だな


02. 2011年9月14日 20:55:19: 9KT2UHI7Zw
あっしらさんは、以前、日本が国家破産する必然性はなく、ただし意図的に破産に持ち込む可能性はあり得る、という趣旨のことを書かれていたと記憶しています。
(記憶が曖昧で、表現が不正確であることはお赦しください)

増税=税収増にならないという議論は結構目にしますが、そのほとんどは財務官僚はアホで経済が分かっていないと論じているように思います。

しかし、そんなことは統計を見れば一目瞭然で、エリート中のエリートの彼らが分からないはずは無いのでは。
むしろ、彼らこそ時間をかけて日本を意図的に破産に持ち込もうとしていると言えないでしょうか。

いまさら途上国のような成長はあり得ず、税収増も望めない、ある段階で借金を踏み倒す方向に舵を切ったと思えてなりません。


03. 2011年9月14日 21:36:04: OIxNYWfJog
賃金を上げればよいというのは正論ですが現実的ではありません。

企業は市場原理、利潤追求で動くものです。
グローバル経済の中、世界的に賃金の安売り競争が起きています。労働組合など名ばかりで御用組合になっています。
このような中、どうして自主的に企業が賃金を上げられるでしょう。
市場原理、利潤追求に反することを行えというのは無理があります。
企業とはあくまでもミクロ的に、自社の利潤追求のために動くものです。

福田内閣の時でしたか、経団連に賃上げをお願いしていましたね。
何か効果がありましたか?

今はまったく違う方法を考えなければ成らないのです。


04. エテ公 2011年9月14日 22:48:23: .XQ.mNI0RTQBI : H4U7nWpIzk

あっしらさん、こんばんは。

“隠れ家”にもコメントしましたが、さっそく経済板に投稿していたとは感激です。

あっしらさん持論の『供給→需要』原理ですよね。液晶画面に穴が開くほど過去投稿を読ませていただいた者として、懐かしさと新鮮さを感じつつ拝見させていただきました。
また↑のコメント欄のような反応も六年前と変わっていません(笑)

いちおう野田総理は消費税アップの前に解散総選挙で国民の信を問うと言っておりますが、郵政解散のときみたいにメディア攻勢で国民くらいどーとでもなると見くびっているんでしょう(私の友人たちも財政危機だから消費税アップは仕方ないと言っています。そのくせタバコ増税には怒っていましたが・・・笑)

ホームレスやネットカフェ難民も増えていくんでしょうね。そのうちカスの政府は『日本は欧米と違って民間のボランティアが根付いていないからだ』なんて真顔で言って責任逃れしそうです。

これからもマイペースで書いてください。また機会があればコメントいたします。


05. 2011年9月15日 03:47:55: ezqPTG9DzU
ギリシャから学ぶものなど何もないでしょう
そもそもギリシャはEU入るためにゴールドマンの力借りて粉飾したんだから
最初からアメリカに爆弾仕掛けられていたんだよ
日本はもうデフォルトの準備完了してるよ
小泉竹中の時に
あとはギリシャのように爆弾が爆発するのを待つだけ

06. 2011年9月15日 14:01:19: w8mGIiFTks
ギリシャから学ぶ物

増税をし庶民から巻き上げ、歳出を減らし金融機関に利子のみを支払う国家
国民を働かせ、借金の利ざやを国民から取り立てるだけの、奴隷管理国家


こうならない為にも、借金を増やさない事は重要ですが、国債を
金融資本の前に無防備に晒さない事も重要だろう。

国民の貯蓄を目減りさせない。
郵貯は絶対に守る

国の借金に関しては、税制の見直し
消費税の減税と、所得税の累進性強化
子供手当ての満額支給
加えて法人税の大幅アップ
特に無駄に内部留保を積み上げるだけの利益には
重税を課す。


配当金に関しても、企業支出の配当科目に一律5%課税
配当を受け取る側にも5%課税と、2重課税しても良い


07. あっしら 2011年9月15日 23:01:41: Mo7ApAlflbQ6s : 9Orh3yBHY6

02.の9KT2UHI7Zwさん、こんばんは。

おっしゃられるように、財務官僚は、経済論理も財政論理もそれなりのレベルで分かっているはずです。(とりわけ財政論理は熟知)

ご指摘のように近代国民経済として十二分に成熟してしまった日本は、かつての高度成長期のレベルはもちろん、3%を超えるような経済成長も難しいと言えます。

(先進国と比較して相対的に安い自国通貨と国策輸入調整による輸出競争力の確保、スクラップ&ビルド的設備投資、前近代的インフラの近代化の組み合わせが高い経済成長には必要)

これまたご指摘のように、それは同時に税収の伸び悩みを意味します。

(高度成長期は、インフレ(名目)の影響が大ですが給与水準がぐんぐん上昇するため、所得税減税を毎年のようにしなければ税収があふれかえるほどでした(笑))

欧州(フランス)から始まった付加価値税(消費税)もそのような経済・財政状況のなかから生み出された“奇策の税制”だと思っています。

ただし、財務官僚が「意図的な破産」や「借金を踏み倒す方向に舵を切る」ことはないと考えています。

だからと言って、国民多数の生活条件をそれなりのレベルで維持しようとしているとか、バランスを考えた国民経済の維持を目指していると思っているわけではありません。

多数派の生活はほとんど顧みられず、多国籍化した有力企業やメガバンクを代表とした金融機関の利益を重視した政策が採られ続けています。
主流派のキャリア官僚は、それらが、日本をぎりぎりで支える屋台骨だと考えているのでしょう。そのような考え方の是非は、これからの日本はどうあるべきかというグランドデザインの論議を通じて問われるべきことだと思っています。


財務官僚は金融機関の存続や利益を重視しているのですから、それらの破綻につながりかねない「意図的な破産」や「借金の踏み倒し」はあり得ません。


【引用】
あっしらさんは、以前、日本が国家破産する必然性はなく、ただし意図的に破産に持ち込む可能性はあり得る、という趣旨のことを書かれていたと記憶しています。

【コメント】
おそらく、意図的に破産に持ち込むという趣旨ではなく、意図的に国民経済を破壊する可能性はあるという趣旨だったと思います。



08. あっしら 2011年9月16日 00:45:46: Mo7ApAlflbQ6s : 9Orh3yBHY6

01. のPj82T22SRIさん、コメントありがとうございます。

自分の都合ですが、説明の流れを考え、02.の方へのレスポンスを先にさせていただきました。ご了承ください。


【引用】
理想としては間違ってはいないが、賃金は需給で決まっているから、そう簡単には上向きにはならないだろう、
それに今の状況では民間の賃上げだけに頼るのは少し無理がある


【コメント】
賃金は、需給関係で決まる割り合いは意外に低いと考えています。

● まず、労働力は国境を越えて自由に移動できないので、供給量と賃金に弾力性がそれほどない。

● それぞれの国家で国民生活レベル(ナショナルミニマム)は政策的に決められているので、それが実現できないレベルの賃金は通用しにくい。

(今の日本は、法的最低賃金でフルに働いても生活扶助レベルの賃金が得られないことが大きな問題)

● どのような職種の派遣労働者を国策として認めるかなどによって賃金水準は変わる。
派遣労働者を増大させる意味は、社会保険など福利厚生費用の負担を免れるだけではなく、労働協約から外れるので、それこそ現代的最低生活費との見合いで需給関係によってぎりぎりまで抑え込まれる。
派遣労働者の拡大で、同一会社の同一職種(能力)で“二重賃金”という「国策による賃金切り下げ」が行われている。
労働政策や社会保障制度を変えることで、賃金はそれなりのレベルで変わる。


【引用】
名目GDPが下がっているのは、純粋に金融政策に問題があるのだろうが
実質GDPは増加しているし、失業率もOECDの中では低い
欧米も、実は単なるバブル経済だったことが判明し
今は円ベースで見たら、10年前以前のレベルまで落ち
さらに止まる気配はない
日本が特別に悪いわけではなく、先進国全体が
実質的な経済は低成長だったということだろう


【コメント】
名目GDPが減少しながら実質GDPが増加しているのですから、まさにデフレ経済です。

(2010年の名目GDPは約475兆円で19991年の約473兆円とほぼ同じです。GDP統計では間接税はGDP増加要因ですから、91年よりも2%消費税がアップしている10年の名目GDPは91年より小さいといえます)

インフレは金融政策で抑制できる問題ですが、ほぼゼロ金利でじゃぶかぶの金融緩和策を取りながらデフレから抜け出せないこの間の日本を考えればわかるように、金融政策では解消できない問題です。

日銀が資産の買い取りを行えというリフレ派もいますが、企業や資産家がマネーを手に入れても、デフレ下では巨額の設備投資を行うわけでもなく、主要な生産活動から生み出される商品への需要が大きく増大するわけでもありません。

持続的で大幅な輸出拡大を別にすれば、国民の消費支出もしくは財政支出の持続的な増大以外にデフレを解消する方策はありません。

輸入物価の上昇につながる円安にデフレ脱却の期待を寄せる人もいるようですが、これも国民総体の可処分所得が増大しない限り、輸入商品にお金が回り国内生産物にお金が回らないだけの話になります。

(無い袖は振れないのですから、物価が上昇すれば生活必需品に需要が偏ることになります)

実質GDPが増加していることや他の先進国の経済状況からそれほど悪くないという見方をされていますが、実質GDPが増加していようとも、デフレは経済成長の大きな阻害要因であるとともに経済活力を弱体化させる危険な傾向なのです。

それは、近代の経済が、膨大な資本蓄積(固定資本投下)に特質があることを考えるとわかります。

借入金を主として1千億円の設備投資をしたと考えてください。
低利とはいえ利払いもあり10年ほどで返済しなければならないのに、デフレであれば、その設備から生産される商品の売価が年々下がっていくのです。
また、競争相手が3年後に同じ設備投資をすると940億円で済むというのがデフレです。後から設備投資した競争相手は減価償却費を考慮すると自分よりも安く売ることができます。
そして、借入金はいつまで経っても名目値で変わりません。

インフレであれば、金利は高いといえ、生産する商品の売価は上昇し、設備の名目価値も上昇する一方で、借入金の名目値は変わらないのです。

このような論理は、借入れで住宅を購入する給与生活者にも当てはまります。
いつ職を失うかという不安はともかく、給与水準がじりじり下がっていくなかで、多額のローンを抱えることは勇気がいることです。
デフレと人口減少を考えれば、不動産価格が下落するのも予測がつきます。

このように、デフレは、実質評価では見落とされる難題を抱えているのです。

デフレで得をするのは、危ない融資や運用をしない(しても救済される)金融機関や安全な資産(日本国債など)もしくは現金を保有している金持ちだけです。


【引用】
一番の問題は成長戦略を取らず、税制や労働規制など様々な規制のため
国内での実体経済への投資が停滞し、新興国に吸い取られてしまったことだが
それは世界全体の格差縮小のためには必要だったのかもしれない

【コメント】
「新興国に吸い取られてしまった」というより、この15年の日本経済は、中国や韓国などの新興国の経済成長に支えられている面が強いと考えています。
欧米への積極的な輸出政策をとる中国や韓国に基幹部品や生産設備を輸出することで、日本経済はそれほどひどく沈没しないで済んだのです。

日本が高度成長期に産業的に徐々に米国依存から脱却したように、今後は、否応なく、韓国や中国も同じ道を歩みます。

米国は、自国通貨が国際基軸通貨であるとともに、軍需品やエンターテイメントそしてIT関連や農業で優位に立っていますから現状を維持していますが、中国や韓国にキャッチアップされた時点の日本にどういう優位性が残されているのだろうかと大きな不安を抱いています。

新興国の経済成長は、痛しかゆしの面もありますが、総じて言えば、世界全体の需要を拡大し経済関係を強化するものと評価しています。

「吸い取られてしまった」という表現を援用させていただくのなら、日本の有力企業に労働分配分が吸い取られたと言ったほうが的確だと思います。
その“成果”が、上場企業のほぼ半分が実質無借金経営になったというものです。
被雇用者にお金を回さないことで、有力企業は内部留保をため込んできたのです。


【引用】
もう一つの大きな問題は高度成長時代の制度を引きずっているため
高齢既得権層に対する再分配ばかりで、
若年層の負担や雇用上の不利が大きくなり過ぎていることにある

これでは、将来に夢はもてないし、社会への不満が爆発することになる

目先の不況対策のための財政出動だけではなく、長期的な社会保障の再構築も急務だな


【コメント】
国家が公的年金の債務(責務)を履行するのは当然のことです。

民間保険会社が、破綻もしていないのに、「将来破綻するかもしれないので、保険料をもらっている年金の支給を契約よりも5年遅らせるとか支給額を10%減少する」と言ったら、それこそ本当に破綻します。

また、ただでさえ総需要が不足しているのに、今後も増大していく高齢者の収入が減れば、デフレはより強まることになります。

高齢者の手取りや公務員の給与が切り下げられれば、総需要がさらに減少することになるので、今以上に若年層の雇用は厳しくなるのです。

若年層の雇用は、民間で対応できないのなら、政府レベルで解決していくしかないと考えています。

原発事故は別ですが、大震災は、若者を政府が雇用する絶好の機会だったと思っています。
ボランティアは精神的ケアの面で重要だと思っていますが、がれき処理などの後始末や行政サポートの一部は、ボランティアではなく、政府が職のない全国の若者から希望者を募って組織化して行うべきだったと思っています。


09. あっしら 2011年9月16日 01:00:45: Mo7ApAlflbQ6s : 9Orh3yBHY6

私の「雁行型賃上げ論」には無理筋という評価も多いが、きょう発売の週刊文春9月22日号に掲載されている出井ソニー元会長の訴えに同調できるのなら、「雁行型賃上げ論」も可能だと思う。


週刊文春9月22日号P.40から:

『「官僚資本主義を打倒せよ!」
出井ソニー元会長「経済危機」に緊急提言

≪前略≫
「 金融は、世界にひずみがあるときに儲かる。これが世界の常識です。昔は企業を助ける存在でしたが、今は自分たちの儲けを優先する金融機関が大手を振っている。日本の金融行政はそうした投機による円高を断固抑えなければならない。「復興を妨げるな!」と世界の人々の感情に訴え、日本を守る決意を内外に示さなければなりません。」
≪後略≫』


【コメント】
昔の企業は従業員の生活向上を助ける存在でしたが、今は自分たちの儲けを優先する企業が大手を振っている。
日本の政府と経営者団体そして国民は、企業のそうした誤った利益追求策に断固Noをつきつけなければならない。
「日本を破滅的状況に追い込むな!」と企業経営者の感情に訴え、国民生活の底上げこそが日本企業の強化にもつながるという論理を示し、日本を守る決意を内外に示さなければなりません。



10. エリック・カートマン 2011年9月16日 09:59:13: T4maj2bRinWc2 : 7gtLhO2E9A

ギリシャの公務員には、「きちんと定刻に出勤したね手当て」
とかあって時間通り出勤するとその手当てがつくと聞いたけどホントかな〜。

公務員がやたら多くて、その票欲しさに、
政権が変わっても、与党となった政党がどんどん公務員を優遇する制度を
作ってきたらしい。
国民の3割くらい公務員がいるとか・・。

ほんで財政赤字が膨らんで・・・。

日本にも変な手当ては有りまへんか〜。
社会通念上、一般民間社会の感覚からずれてる公務員の優遇はありまへんか〜。



11. よしゆき 2011年9月18日 11:06:25: .fHdROTysEMxI : GQfzSeUgMA
あっしらさんこんばんは。

08にあります以下の一文についてお伺いさせてください。

【引用】

2010年の名目GDPは約475兆円で19991年の約473兆円とほぼ同じです。GDP統計では間接税はGDP増加要因ですから、91年よりも2%消費税がアップしている10年の名目GDPは91年より小さいといえます

【コメント】

以前のあっしらさんの投稿でGDPの集計手法への問題提起がありましたが、それに関連する内容でしょうか?

このGDPの集計手法への問題提起は、経済を語る上での根幹を揺るがしかねないので避けては通れんとあれこれ思考を巡らせて来たのですが、正直理解が出来ないまま来ています。

あっしらさんの過去の投稿の他に参考になる様な文献等がありましたらご教授お願いいたします。


※原発版のスレッドへのレス、遅まきながら昨晩させて頂きました。投稿ペースが遅く申し訳ありません、、。


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