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既に、他の大都市圏では影響が出始めているが、じきに東京でも人口が減っていき、貧困高齢者が集中するため、地方以上に深刻な高齢化問題に襲われることになる
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/21175
地域振興
地方はなぜこんなに「ボロボロ」になってしまったのか
日本が手遅れになる前に〜これからの地域再生(1)
2011.09.12(月)
井上 健二
地域の活性化や再生が叫ばれるようになってから、かなりの年月が経ちます。昨今は地域再生法の制定や地域活性化総合特区の創設が重要政策として位置づけられるなど、ブームとも言えるような様相を呈しており、地域再生を進めるための国の施策は400を超えています。
しかし、地域を訪れてみると、こうした永田町や霞が関のブームとは裏腹に、高齢化や人口減少の波は容赦なく地域に襲いかかっています。多くの地域で過疎化や地盤沈下が進み、さらには、地域の伝統・文化の衰退やコミュニティー自体の消滅までもが懸念される状況です。
毎年、多額の予算を投入し、400を超える地域再生関連の施策を推進していながら、どうして地域は元気にならないのでしょうか? また、地域の活性化や再生を効果的に進めるためには、何を、どのようにすればいいのでしょうか。行政や地域づくりに関わる多くの方々が、同様の疑問を抱えていらっしゃると思います。
この連載では、具体的な地域での取り組み事例の紹介や地域再生の実践者との対談なども織り交ぜながら、読者の皆さんと一緒にこうした疑問への答えを模索していきたいと思っています。
地域に大きな影響を与えている5つの変化
今回は初回ということもあり、これからの地域再生を考える上で重要となる、地域を取り巻く環境がどのように変わってきているのか、また、そのことが地域社会にどのような影響を与えて、あるいは今後与える恐れがあるのか、といったことについて詳しく見ていきたいと思います。
今、日本は大きな転換期にあります。人口減少・超高齢社会(=生産年齢人口減少社会)の到来という日本の人口構造の変化がその最大の要因です。
地域を取り巻く環境について見ると、特に(1)人口減少・高齢化の急速な進行、(2)東京一極滞留、(3)地域経済の規模の縮小、(4)投資余力の減少、(5)平成の大合併、の5つの変化が地域に大きな影響を与えています。
しかも、これらの変化は複雑に影響し合い、地域に対してより深刻な影響・課題を突きつける原因ともなっています。よって、これらをしっかり認識した上で、これからの地域再生のあり方を考えていくことが重要になっています。
具体的に、どのような影響を地域に与えているのかを詳しく見ていくことにしましょう。
(1)人口減少と高齢化で過疎化が加速
日本はこれまで経験したことのない人口減少社会に突入しています。2004年の1億2784万人をピークとして、減少局面に入っており、国立社会保障・人口問題研究所の推計(2006年12月)によると、2055年には9000万人を切ると推計しています。
同時に、これまで諸外国が経験したことのないような速度で、少子高齢化も進行しています。2010年の日本の人口構成は、年少人口、生産年齢人口、老年人口それぞれ13%、64%、23%で、人口の約の4分の1が65歳以上という高齢社会ですが、同研究所は2035年には9%、57%、34%となり、人口の3分の1以上が高齢者という超高齢社会が到来すると予測しています。
さらに、地方に目を移せば、少子化の進行や若者の流出による過疎化は一段と進み、また、高齢化率も全国に比べ高く、集落内人口の半数以上が65歳以上という地域も珍しくない状況で、中には冠婚葬祭が行えない地域、さらにはコミュニティーが維持できず消滅する地域も出てきています。
国が1999(平成11)年度に行った調査でも10年以内に消滅する可能性のある集落は423集落、「いずれ消滅」を含めると2643集落にも上るとの結果が出ており、極めて深刻な状況です。
(2)地方に戻りたくても戻れない
このように地域で急速に高齢化が進む要因の1つが東京一極滞留と言われる現象です。戦後3回目の人口の東京一極集中期を迎えていますが、これまでと大きく違うのは、人口の転入超過幅の拡大をもたらしているのが、東京圏への転入者の増加ではなく、東京圏から地方への転出者、特に20代後半から30代前半の年齢層の転出者の減少が主要因となっているということです。
これは何を意味するのか。進学や就職で東京圏に出てきた若者が、30歳を過ぎて戻りたいと思っても、働く場所がないため、地方に「戻れない」、東京圏への「一極滞留」と呼ぶべき現象が起こっています。
こうした現象は、実は、数字以上に、地域に深刻な影響を及ぼします。地域再生の担い手となる人材の供給源を失うことに直結するからです。
現在、地域再生の担い手として、地域で活躍している人の多くが、若い頃に大都市に転出し、40歳頃までに地域に戻ってきたUターン組が多い。大都市の住民の物の見方が理解できることやずっと地域に住んでいる人では気がつきにくい地域の魅力を外の目線で見ることができるからで、こうした人材は地域を再生する上で大事な存在です。
その担い手となるべきUターン人材が地域に戻るに戻れないという「東京圏一極滞留」現象が続くとしたら、地域再生に深刻な影響を与えかねません。地域再生を進める上での大きな課題です。
(3)人口減少で地域経済縮小の悪循環
また、地域の人口減少は地域経済の規模を縮小させてしまう可能性があります。
2005年に経産省地域経済研究会で、人口減少・少子高齢化の進行により中長期的に地域経済がどのように変貌していくかをシミュレーションしています。これによると、政令指令都市などの大きな都市雇用圏を除き、ほとんどの都市雇用圏で地域経済は縮小し、とりわけ、人口10万人未満の都市圏では、域内総生産額は約15%も縮小するとの結果になっています。
さらに、最も域内消費に貢献する生産年齢人口の減少傾向は地域経済に大きなインパクトを与えかねません。
人口減少 → 地域内消費の減少等による地域経済の縮小 → 企業・商店等の倒産・撤退 → 人口流出の加速・人口減少 → 地域経済の縮小といった悪循環に陥る可能性もあり、この悪循環を断ち切るための対策が求められます。
(4)自治体の財政逼迫で投資余力が減少
一方で、これまで地域再生を進める上で一定の役割を担ってきた自治体等の財政状況は厳しさを増しています。高齢化のさらなる進行に伴い、医療・福祉等に必要な予算は右肩上がりで伸びていくことが予想される中、今後、地域再生に対して投資できる財源は相当厳しいものとならざるを得ません。
さらに懸念されるのが、投資余力の減少です。過去に投資してきた社会資本が更新期を迎えており、その更新費がかさむこと、必要とされる維持管理費が着実に増加しています。
国の試算では、維持管理・更新費が2037年度時点で投資可能総額を上回り、新たな社会資本の整備がまったくできない状況になるという結果になっています。
地域再生に社会資本はマストではありませんが、地域によっては社会資本の整備がどうしても必要なところもあります。その投資までもが制約されるということが懸念されています。
(5)ボディーブローのように効いている平成の大合併
最後に、地域に大きなインパクトを与えたのが、平成の大合併でしょう。国は、1999(平成11)年以来、全国的に市町村合併を進めてきました。その結果、1998(平成10)年度末時点で3232あった市町村が、2009(平成21)年度末時点で約1727市町村とほぼ半減しています。
「広域的なまちづくり」や「適正な職員の配置や公共施設の統廃合など行財政の効率化」などの効果が認められる一方で、合併による市町村域の拡大で、行政の目が行き届かない地域が増え、身近なはずの基礎的自治体が地域内の諸問題を十分に把握できず、対策も立案もできないという状況が全国的に生まれています。
特に周辺部の旧市町村では、「地域の活力喪失」「住民の声が届きにくくなっている」「住民サービスの低下」「旧市町村地域の伝統・文化、歴史的な地名などの喪失」などの合併のマイナスの影響がじわじわとボディーブローのように影響を与えています。
では、こうした地域を取り巻く環境の大きな変化を踏まえ、どのように地域の活性化・再生を進めていけばいいのでしょうか?
私は、「地域コミュニティーの再生」と「地域内循環型経済構造の構築」、この2つに戦略的に取り組むことが再生の鍵になると考えています。次回以降、このことについて詳しく見ていきたいと思います。
日本を救う「人口流動」、地域社会は蘇る 金融機能は大阪へ移転――松谷明彦・政策研究大学院大教授(上) (2010.04.26)
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