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仏マルセイユで開催されたG7は「具体的成果」が見え難いものとなったが、幾つか世界の潮流の変化を感じさせる会議でもあった。
■ G7内で進む日本ので「軽量化」「孤立化」
まずは、G7内で日本の「軽量化」「孤立化」が進んでいること。今回のマルセイユG7では、欧州の財務危機が大きな課題という地域性の強いものではあったものの、日本の存在の薄さ、軽さ、を感じずにはいられなかった。
しかし、日本は今年1月に欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の初回発行債(50億ユーロ)の20%以上を買い入れたことに加え、「重要かつ安定的投資家」 としてEFSFが発行する債券を今後も購入する計画を表明している。つまり日本は、欧州財務危機に伴う金融市場の混乱を抑えるための重要な役割を担っている国であり、欧州財務危機をメインテーマとした今回のG7ではもっとその存在感が見えて然るべきであった。
それにも拘わらずG7会議で「日本の存在が消えていた」のは、日本が「今の状況では円高が景気の下振れを招きかねないと伝え、円売り介入など円高対策について各国に理解を求めること」に固執し過ぎたからである。この辺りが欧州財務危機に積極的に関わることで存在感を増す戦略を見せて来ている「世界第2位の経済大国 中国」との大きな差である。
「素人財務相」は、G7後に日本の円高懸念は各国から「理解を得られた」との認識を示しているが、これは大きな勘違いである。そもそも「理解を得られた」という認識を持つに至った理由が「日本の為替政策に異論は出なかった」というものなのだから、情けない限り。「異論が出なかった」のは、単に今回のG7では「日本の為替政策」の議論に割く時間と必要性がなかっただけである。
現実には「理解を得られた」どころか、「理解は失われている」。
今年3月、東日本大震災直後に協調介入が行われた際に、、ユーログループのユンケル議長(ルクセンブルク首相兼国庫相)も「円の上昇を抑制するために必要とあれば、ECBには米国やほかの主要7カ国(G7)の中銀と共に更なる行動をとる用意がある」と述べている。
当時、欧州首脳が円高抑制に積極的な姿勢を示していたことから比べると、各国の日本の円高懸念に関する理解は大きく後退しているというのが現実なのである。そしてこれも日本の政治的戦略の失敗でもある。
9日付の英フィナンシャル・タイムズ紙に寄稿し「主要な中央銀行で(金融緩和などで)弾切れのところはない」として、物価面などの状況が許せば追加緩和を実施することは可能との見方を示し、財政政策でも「一部の国は成長を支援するために追加策をとる余地があり、財政再建のペースを緩めることが可能な国もある」と指摘したガイトナー米財務長官にとって・・各国の了解など不必要な日銀の「量的緩和」などの円高対策をとらない日本の「介入」に関する訴えなど「聞くに値しない話し」でしかなかったのだろう。
マルセイユで開催された今回のG7は「危機対応 具体策見えず」(9日付日本経済新聞夕刊)という「懸念の共有」以上の成果を挙げることなく閉幕した。そして「具体的成果を挙げられなかったG7」の中でもひと際深刻だったのは、毎回「素人財務相」を送りこむ日本の「軽量化」「孤立化」である。各国首脳と信頼関係を構築出来る可能性のある人物を財務相に据えてG7に参加させるべきであった。増税を実現するという国内要因で「素人財務相」をG7に送り込んでしまったことで、日本は間違いなく「国益」を失った。
■「財政再建原理主義」から距離をとり始めた世界と「世界の流れ」を感じとれない素人財務相
G7のなかで現れた変化の兆しは、欧米各国が「財政再建原理主義」から距離を置き始めたこと。
G7から帰国した「素人財務相」は、財政問題が主要議題となったことを受けて「財政健全化を目指すことが成長の礎になる。世界の流れから見てはっきりした」と述べ、復興や社会保障・税一体改革へ向けて増税が必要になるとの認識を改めて示し、増税は「心苦しいが、日本でも負担を多くの国民にお願いしないといけない局面がくる。国民の理解を得られるよう努力したい」と述べた、と伝えられている。
しかし、「財政健全化を目指すことが成長の礎になる。世界の流れから見てはっきりした」という認識は正しいものではない。G7の声明でも「成長に配慮した中期財政健全化計画を策定、実行」が謳われており、「財政健全化を目指すことが成長の礎になる」などというコメントは、「財政再建原理主義」に染まり切っている財務省が作り出したフィクションでしかない。
G7が開催された9日、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事はロンドンでスピーチし、「先進国の政策当局者は成長を促すためあらゆるツールを用いるべきだ」との考えを示し、景気回復が「危険な新段階」に入るのを食い止めるため、大胆な措置を講じるよう求めた。さらに、「市場の圧力に直面している国は緊急に財政健全化を進めなければならない」と指摘。一方、「市場の圧力にさらされていない国は時間をかけて行動する余裕がある」との認識を示した。
G7の声明とIMFラガルド専務理事の発言は、先進国をギリシャに代表される「市場の圧力に直面している国」と、それ以外の「市場の圧力にさらされていない国」に分け、「市場の圧力に直面している国」に対しては「緊急に財政健全化」を、「市場の圧力にさらされていない国」は「成長を促すためあらゆるツールを用い」て「時間をかけて」財政再建を求めるという、各国の状況に応じて異なる政策を求めて行くことが「世界の流れ」であることを示したもの。
2年債利回りが57%台まで上昇し、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場でデフォルト(債務不履行)確率が90%超とされるギリシャは、間違いなく「市場の圧力に直面している国」である。
これに対して、2年債利回りが0.17%で10年債利回りが1.92%となっている米国や、2年債利回りが0.14%で10年債利回りが1.0%である日本は、格付け機関の格付けに関係なく「市場の圧力にさらされていない国」であることは明らかである。
世界が「市場の圧力にさらされていない国」に対して「財政再建」よりも「成長」を求める方向に明確に舵を切り始めた中で、「財政健全化を目指すことが成長の礎になる。世界の流れから見てはっきりした」とする「素人財務相」。
今回のG7出席を通して見えて来たことは、残念ながら「素人財務相」は、「世界の流れ」が「財政再建原理主義」から離れ始めて来ていることを感じとる「感覚」も持ち合わせていないことである。
「素人財務相」が「市場の圧力にさらされていない国」に求められて来ているものが「財政再建」よりも「成長」にシフトして来ていることに気付かずに、これまで通り財務省のスポークスマンとして「財政健全化を目指すことが成長の礎になる」という文言を呪文のように唱え、増税に走るとしたら、国際社会における日本の「軽量化」と「孤立化」は取り返しのつかないところまで進んでしまうだろう。(近藤俊介/中略)
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