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■徐々に「悪い米ドル高」が現実のものに…
為替マーケットでは、米ドル高の基調が強まり、株安の局面と相まって、 いわゆる「悪い米ドル高」が現実味を帯びてきた。
当然のように、米ドル高はユーロ安なしではあり得ないから、ユーロ/米ドルの下げはきついものがあった。
ユーロ安はEUソブリン問題といった構造上の重石のほか、近々では株安の影響を受け、リスク回避型のユーロ売りに晒される側面が強かった。
その上、 より重要なのは、ユーロ高を支えてきた金融政策面の効果が消えつつあることだ。
■「通貨戦争」の激化を暗示するトリシェ総裁発言
9月8日(木)に行われたECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁記者会見の内容はまさに市場関係者たちの懸念を追認しているものだった。
トリシェ総裁は利上げ周期の中断を明言し、市場へ流動性を供給する方針を表明している。これは「通貨戦争」の激化が暗示されるようなインパクトを持つものだ。
もっとも、マーケットにはECBは年内利下げに転じるのではないかとのウワサがあり、利上げ周期の中断には特にサプライズはないが、流動性の供給を示したことは驚きだ。
結局、ECBも FRB(米連邦準備制度理事会)の後を追って、「非常手段」をもって危機を退治しようとするなら、ユーロへの信頼は大きく損なわれることになる。
FRBが量的緩和の名目で米ドルを刷り撒くこと自体が流動性の供給を目的としており、基軸通貨とはいえ、“流動性の氾濫”による通貨価値の低下は避けられないところだった。
リーマンショック以降、米ドル安の進行にはドル紙幣の氾濫がもたらした側面があることは否めない。
■FRBとECB、その第1の責務の違いがもたらすもの
基軸通貨を有する国の中銀として、FRBの量的緩和は他国から厳しく批判されてきたが、FRBの「本来の責務」からみれば、必ずしも問題になるとは言えない。
というのは、 FRBの責務の第1条は雇用と経済成長の促進にあり、米国の雇用を守るためには、他国の利益を無視して、あらゆる手段を講じても構わないのだ。
一方、 ECBの責務の第1条はインフレ退治である。
米ドルの対極としてのユーロ高の背景には、ECBとFRBの主要責務が違うから、ECBはFRBのような「無茶」な行為をやらないといった信頼感があったと思う。
しかし、来年のインフレターゲット低下までわざわざ「予測」した、トリシェ総裁の9月8日(木)の発言は、 ユーロ紙幣を刷り撒く用意があると暗示しているように聞こえる。
仮にそれが現実のものとなれば、もはやECBとFRBはほとんど変わらなくなり、 ユーロは「通貨戦争」の先端を走る可能性さえある。
というのは、9月6日(火)のスイス当局の声明に注目していただきたい
スイス当局はスイスフラン高を阻止するため、ユーロ/スイスフランのレートの下限を1.2フランに設定すると発表。無限にユーロ買いの介入を続けるとも表明した。
このようなタイミングでトリシェ総裁が流動性の供給を明言するのは、来たるべき景気後退とEUソブリン危機のさらなる悪化に備えること以外に、 スイス当局をけん制する意味合いを持つことも見逃せない。
ECBはFRBに習って、「通貨高が自国の利益」といった「建前」を崩そうとしているのかもしれない。言い換えれば、もはや「メンツ」を保つほどの余裕がECBにはなくなってきている。
ゆえに、 中長期スパンではユーロ安が続くとみる。
■介入後の動きが違う! スイスと日本の違いはどこに?
9月6日(火)、スイス当局が声明を発表した後、ユーロ/スイスフランはずっと1.2フラン以上のレートを保っている。
スイス当局がどれぐらい資金をもって市場介入しているかは不明だが、 日本当局の市場介入と照らし合わせてみれば、その効果の差は一目瞭然だ。
8月4日(木)、1日の介入金額にして史上最高と言われる政府・日銀の介入があって米ドル/円は77.00円から一時80.23円まで急騰したが、その後の 3営業日でその上昇幅はすべて帳消しにされた。
やはり、「マーケットは政府・日銀を舐めているのか」と憤慨してしまうほど今回とは違っていた。
では、その差はどこからきたのだろうか?
■マーケットは日本政府を舐めている!
筆者は多少、 マーケットが日本政府を舐めているところがあると思う。為替市場はいまだにアングロサクソンの世界だからだ。ただ、それより大きな違いは、「円高の程度」と「日本政府の立場」にあるのではないかと思う。
前者に関しては、確かに名目レートでは円高が戦後最高レベルを更新しているが、 実質実効為替レートでは1995年の最高レベルより3分の1ぐらい低い状態にある。
対照的に、スイスフランの実質実効為替レートは主要通貨のうち、もっとも割高の水準を示しており、理屈では、スイス当局の行動が正当化できるところにある
後者に関しては、日本はスイスと違い、G7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の創立メンバーで、為替取引の自由を守るとうたうG7の枠組みのなか、スイス当局のように思い切った行動はできない側面がある。
マーケットもその点を見抜いていて、日本政府の行動を「舐める」胆力を持っていたわけだ。
最後に、スイス当局の行動は今のところ成功しているように見えるが、結果的にどうなるかはまだ不透明だ。
前述のように、仮にECBも「FRB化」して紙幣を刷り撒くのであれば、スイス当局が資本規制しない限り、スイスフラン高の阻止は困難であろう。
この意味では、究極のリスク回避先は人民元であるかもしれない。(陳満咲杜/中略)
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