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震災半年、「需要蒸発」懸念で外需主導の回復に黄信号
http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/205.html
投稿者 sci 日時 2011 年 9 月 10 日 01:45:30: 6WQSToHgoAVCQ
 

http://jp.reuters.com/article/jp_quake/idJPJAPAN-23117720110909?sp=true
震災半年、「需要蒸発」懸念で外需主導の回復に黄信号
2011年 09月 9日 19:40 JST
 

 9月9日、東日本大震災直後の日本経済にとって、最大の制約要因はサプライチェーンの寸断による製造業の供給制約だったが、今は欧州債務危機など、世界経済の動向が大きなリスク要因として浮上してきた。被災した岩手県で4月撮影(2011年 ロイター/Toru Hanai)

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 田巻 一彦    

 [東京 9日 ロイター] 東日本大震災直後の日本経済にとって、最大の制約要因はサプライチェーンの寸断による製造業の供給制約だった。

 しかし、今は欧州債務危機や米経済減速など、世界経済の動向が大きなリスク要因として浮上してきた。欧州での混乱が金融危機に発展すれば、リーマンショックに相当する需要の『蒸発』を覚悟しなければならない。

 日本の民間企業には震災被害からのV字回復期待が高まっており、それに沿った大増産計画を立てる動きがある。しかし、それは早晩、見直す必要があるだろう。そして、政府は世界的な危機発生に備え、2011年度第3次補正予算で景気対策的な対応や、雇用調整助成金などの増額が迅速にできるように予備費的な項目を大規模に盛り込んで備えを厚くするべきだ。 

 <米欧景気の減速、見当たらない魔法の杖>  

 欧州の経済情勢は、半年前には想定できなかったペースで悪化している。3月時点で欧州中銀(ECB)はインフレへの警戒感を強め、4月と7月に利上げした。しかし、トリシェECB総裁は8日の会見で「成長への下方リスクが存在すると認識している」と述べるとともに「インフレのリスクは均衡している」と指摘。利上げ打ち止めの意向を強くにじませた。市場関係者の中には、11月中の利下げを予想する声も出てきた。

 一方、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は8日、「高水準の成長と雇用の回復を支援するために、できることはすべて行う」と述べるとともに、成長率が低下している要因として「より恒常的な要因が回復を抑制している」と指摘。家計消費が異例の弱さを示している点も挙げ、リーマンショック後のバランスシート調整が進む中で、米経済が低成長を強いられているとの見方を強くにじませた。

 さらにオバマ米大統領が8日、4470億ドルの雇用対策を発表したが、財源問題で共和党と合意できるのか不透明であるうえ、経済的効果が見かけの規模ほどないとの声が早くも市場から上がっている。米経済問題に詳しい東海東京証券・チーフエコノミスト、斎藤満氏は、今回の対策について、減税や長期失業保険給付などこれまでの政策の延長が多くの支出を占めている点を指摘、道路や鉄道などのインフラ投資に500億ドル、学校の近代化で300億ドルと新たな需要を生み出す支出は、全体の歳出規模に比べかなり少額になるとみている。

 この対策で成長率の低下や高止まる失業率などが、劇的に変化することはないだろう。複雑に利害の絡んだ欧州債務危機と同様に、米経済の急減速を画期的に変化させる『魔法の杖』は存在しないということが、オバマ演説などでさらに鮮明になったと言える。9─10日に仏・マルセイユで開催される日米欧7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でも、現在の悪化する米欧経済に対応し、行き過ぎた財政削減は避けるべきだとの方向性で一致するのが関の山ではないだろうか。市場が目を見張るようなマクロ経済政策での協調は期待できない。

 <V字回復前提の増産に見直し必要>

 一方、大震災後の日本経済は、世界の政策当局者や市場関係者が認識する以上に底力を発揮したと思う。当初、サプライチェーンの寸断で日本経済は生産が回復せず、復興関連の需要が出てくるまでは、大幅なマイナス成長になるとみられていた。しかし、自動車や電機など加工組み立て産業を中心に、サプライチェーンの復旧は想像を大幅に超えて進んだ。生産ラインの復旧という明確なゴールが設定され、日本の製造業は驚くべき瞬発力を発揮した。大和総研・チーフエコノミスト、熊谷亮丸氏によると、サプライチェーンの早期復旧によって2011年度の実質国内総生産(GDP)に与える生産減の影響は、当初のマイナス0.6%からマイナス0.1%に圧縮された。

 こうした製造業の生産設備の復旧で、日本経済が2011年度後半にV字回復するとの見通しが広がった。私も5月11日のコラム[ID:nTK0595768] で企業収益が2011年度下期に急回復すると予想した。だが、その後の米欧経済の急減速や、金融引き締め政策の結果による新興・資源国の成長率低下傾向によって、外需主導による景気拡大と企業収益の増加シナリオは黄信号が点灯した。

 中でも欧州債務危機の深刻化は、欧州系銀行の資産劣化を通じ、金融システム不安を広げかねないところまで来ている。もし、ギリシャ支援でドイツなどの有力国が議会の承認取り付けに失敗した場合には、6日のコラム[ID:nTK0501517] で述べたように大きな混乱が欧州市場に発生し、リーマンショックと同じような経済的打撃が世界経済を襲う可能性が高まる。そうなれば、日本企業にとって需要が瞬時に急減した2008年10月以降の悪夢が再来する。

 仮に大きな混乱は回避できたとしても、すでに欧州経済は成長率が大幅に低下する兆しを見せており、資産劣化懸念のある欧州系銀行の貸し渋りなどを背景に、企業の設備投資が影響を受け、景気下押し圧力が増大する方向に向かうと予想される。米経済の低成長は長期化するとの予想も、市場関係者の中で広がり出している。内需に活路を見出すことができない日本企業にとって、米欧経済の低迷はかなりの打撃となりそうだ。さらにブラジルが利下げに踏み切ったように、一部の新興・資源国の景気は一段と減速感が強まっている。

 日本企業は、リーマンショック後の需要急減で大きな損失を出した。その教訓を今こそ生かすべきだ。地域別の需要予測の精度を上げ、先行きの需要に陰りが見えるなら、在庫急増リスクを回避するため早めに生産計画を見直す必要があると考える。早めに対応できれば、仮に需要がその後に持ち直した際にも、より迅速に対応が可能だ。

 <3次補正で経済特区の推進を>

 政府も株価が大きく下がった後に、ようやく重い腰を上げるのではなく、先手を打って準備をするべきだ。もし、2011年度第3次補正予算に平時の円高対策しか盛り込まず、欧州債務危機が金融危機に発展した場合、本格的な財政対応は2012年度予算まで待つしかなくなり、機動的な対応は金融政策だけということになりかねない。需要の急減や雇用環境の急速な悪化に対応するための支出ができるように、第3次補正予算の編成でぜひ、ひと工夫してほしい。

 また、中長期的に日本経済を拡大させるには、新しい成長分野を国内経済に「ビルトイン」することが重要だ。例えば、世界中で需要拡大が期待されている太陽電池を利用した発電システムを組み込んだ新しい都市システムのモデルを東北地方に作る。そこを経済特区にして税金面で優遇し、新しい雇用を創出すれば、東北地方の復興に役立つだけでなく、新しい輸出産業を作り出すことにも結び付く。こうしたチャレンジングな事業を具体化する予算措置を第3次補正予算で盛り込んでほしい。 

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
   

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