★阿修羅♪ > 経世済民73 > 203.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
日本経済が全く成長していない3つの理由  減り始めている個人金融資産 なぜ名目マイナス実質でもGDP1%未満か
http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/203.html
投稿者 sci 日時 2011 年 9 月 10 日 01:27:56: 6WQSToHgoAVCQ
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110905/222480/?ST=print
日本経済が全く成長していない3つの理由
名目GDPはマイナス、実質GDPでも1%未満

2011年9月9日 金曜日
波頭 亮


 これからの日本の国家ヴィジョンと政策を描こうとする時に、まずきちんと押さえておかなければならない現実がある。日本の経済と社会の「成熟」である。
日本だけが全く成長していない

 端的にデータを示そう。

 日本のGDPは1995年が495兆円、2010年が479兆円と、この15年間で3%減少した。日本のGDPが最高に達した1997年の516兆円と比べると、2010年の479兆円という数字は7%ものマイナスである。

 物価変動を勘案した実質GDPで見てみても、1995年から2010年にかけての成長率は年率平均でわずか0.68%である。デフレが続く中でマイナス成長になってしまっている名目GDPと比べれば多少マシではあるが、平均1%にも満たない実績ではとても「成長」とは呼べない。

 グローバル経済の中で見ても、日本の不調は明らかである。1995年〜2010年のドルベースで見た世界全体のGDPの成長率は年率平均5.2%にも達している。その中で、1995年には世界GDPの18%を占めた日本のシェアは、2010年には9%にまで低下してしまった。

 一方、日本と同じG5国家である米英独仏は、日本と比べるとかなり好調に成長を遂げている事実を忘れてはならない。1995年〜2010年の15年間におけるドルベースの1人当りGDPの成長を見ると、日本が1.02倍とほぼゼロ成長であるのに対して、イギリスは1.8倍、アメリカは1.7倍、フランスは1.5倍、ドイツは1.3倍と日本以外の国はどこも着実に成長を達成しているのだ。

 90年代後半以降、世界中で日本だけが全く成長していない。これが今の日本経済の現実である。
経済成長方程式を見れば日本が成長できない理由が分かる

 ではなぜ日本だけ経済成長が止まってしまったのかを探ってみよう。
経済成長率= (1)労働の増加率+(2)資本ストックの増加率+
(3)生産性の改善率

 という方程式がある。経済成長を導く要素間の関係を表したものだ。この方程式は、GDPの成長率は、(1)労働力がどれだけ増えたか(労働人口と労働時間で決まる)と、(2)経済活動に投入される資本がどれだけ増えたか(貯蓄率で決まる)と、(3)経済活動の効率を左右する技術水準の改善度合いという3つのファクターで決まることを表している。

 3つ目のファクターである技術水準とは「全要素生産性(TFP:Total Factor Productivity)」と呼ばれるもので、モノを作るテクノロジーだけでなく、産業構造の構成や国民の教育水準なども含む、その国の経済全体の効率を表すものである。

 つまり、GDPの成長率は、経済活動に投入されたヒト(労働)とカネ(資本)の量と、それらをいかにうまく活用するかという技術によって決まるのである。

 ちなみにこの式は恒等式であって、ケインズ派だろうが、マネタリストだろうが認めざるを得ない“堅い”式である。近年の日本経済の実態をこの成長方程式に当てはめてみると、日本が成長できなかった理由明らかに見て取れる。
労働人口は減少し、労働時間は短くなった

 まず就労者数と労働時間からなる(1)労働について。日本においては1995年以降全く増えていない。正確に言うとどちらも微減である。

 一方この間GDPが順調に成長している他国は、労働力人口(15歳〜64歳までの人口)が増加している。例えばアメリカでは1995年から2005年までの10年間で労働力人口は13.6%(+2373万人)増加している。フランスも5.4%増(+204万人)、イギリスも4.9%増(+186万人)であるのに対して、日本だけが3.3%(−284万人)減となっている。

 労働時間について見ると、日本は80年代には1人当たりの労働時間が年間2000時間を超えていたが、2002年には約1800時間を切るまでに減少した。経済を成長させるためには、投入労働量=就労者数×労働時間を増加させなければならないのに、人口が減り、1人当たり労働時間数も減少しているのだから、(1)投入労働量というファクターはマイナスのベクトルでしか働いていないのである。
貯蓄率の低下が示す投下資本の低迷

 次に(2)「カネ=投入資本量」について見てみよう。

 国民経済計算における投資は貯蓄量によって規定される。投資=貯蓄だ。過去20年間の日本の貯蓄率の推移を見てみると、近年の日本の貯蓄=投資の低調は明らかである。

 もともと日本の貯蓄率の高さは有名で、70年代までは20%以上の水準を誇っていた。80年代でも平均で16%と、アメリカの7%、ドイツの12%と比べて明らかに高い水準を維持していた。しかし日本の貯蓄率は90年代に入ったあたりから急速に低下し始め、2000年には10%を切った。2007年には1.7%にまで落ち込み、アメリカと並んで最低水準まで下落してしまった。これでは経済活動に投入する資本ストックの水準が低迷してしまうのは当然である。

 ここで留意しておかなければならない点がある。
 先の投入労働量にしても、この資本ストックにしても、GDP成長率を決めるのは各ファクターの「増分」である。一方、ここまで見て来たように、投入労働量にしても、投資(貯蓄)にしても、日本では増加していないどころか、どんどん低落しているのである。これではGDPは成長しない。それどころか、これらのファクターが作り出すモメンタムはGDPを低落させる方向に働くばかりなのだ。
産業構造の高度化がTFPを高める

 最後に、3つ目のファクターである(3)「生産性=技術係数」について見てみよう。

 ここでは「労働生産性」のデータによってわが国の経済効率の改善度を見ることにする。国民経済の効率を左右するTFPは様々な構成要素が複合して決まる。生産技術の向上や産業構造の高度化といったTFPの主要なファクターの改善は、結果的には「労働生産性」の向上として数値に表れることになる。

 ちなみに「労働生産性」とは労働者一人が1年間に生み出す付加価値の金額である。一般に、ある仕事を行うために必要な知識や技術のレベルが高ければ高いほど、その仕事によって生み出される価値は大きく、労働生産性は高くなる。分かりやすく言えば、誰にでもできるような単純作業では労働生産性は低く、知的・技術的レベルの高い仕事では労働生産性は高い。

 また労働生産性は、一国の産業構造が高度化することによっても向上する。戦後の日本の例で見れば、農村で小規模農業に従事していた若者が工業都市に出て大規模工場の工員になることによって労働生産性が高まった。さらに、組み立て工として工場で働くよりも金融・証券業やバイオ産業の研究開発に従事した方が労働生産性は高い。つまり、産業構造の高度化とは、労働生産性の低い産業から高い産業に労働者がシフトすることを意味しているのである。
日本だけが長期低迷

 こうした点を念頭に80年代以降のわが国の労働生産性の推移を見ると、やはり残念な姿が浮かんでくる。

 80年代は年率にして3.4%の労働生産性の向上を達成していた。しかし、90年代前半はなんと3.4%減、90年代後半は1.0%減。2000年代に入ってからはマイナスは脱却したものの、年率0.1%とほとんどゼロ成長に等しい低迷振りなのである。

 この間、他のG5国は労働生産性においても着実に向上している。2000年代に入ってからの労働生産性の向上率は、アメリカ3.7%、イギリス3.7%、フランス3.6%、ドイツ3.1%。日本と比べて明らかに高い水準での改善を達成している。

 以上、経済成長を規定する恒等式の3つのファクター――「労働」「資本」「生産性」――について一つひとつ検証した。全項目に関して日本の非成長的な実態が明らかになった。

 この15年間、名目GDPではマイナス、実質成長率で見ても1%未満、生産性の向上も同じく1%未満でしかない。そして、これほど成長していない国は、OECD諸国はもちろんエマージングカントリーと言われる国々を含めても日本ただ一国だけなのである。

 では、日本がこれからの国家ヴィジョンを描く際に、何をどうすればよいのか。ここまで見てきた実態を踏まえて、どういう手立てを打てばよいのか、について考えなければならない。

 とは言え、人口及び労働人口は“既に起きた未来”で、これからも減少していくことは動かしようがない。資本の面でも余裕はない。1400兆円に達していたの個人金融資産が長引く不況で既に減り始めているだ。

 第3の要素であるTFPについても、2000年以降0.1%という低い水準がずっと続いているトレンドを考えると、よほどの手立てを打たない限り、日本経済を成長軌道に乗せるのは難しい。

 答えが簡単ではないことだけは明らかである。

 次回のコラムでは、「では、どうするのか」についての考察と提案を行う。
このコラムについて
成熟時代に突入した日本へのアジェンダ

日本の成長が止まって15年になる。人口は既に減りつつあり、何とか日本を支えて来た個人金融資産も3年前からついに減り始めた。
15年前には、日本経済は世界の18%も占めていたのに、今やその半分の9%でしかない。GDPの金額が15年前と比べて低下している国はOECD30カ国の中で、日本ただ一国だけというありさまである。
明らかに国家のファンダメンタルズが成熟したのだ。なのに、日本は成熟フェーズを迎える覚悟も準備もできていない。
経済や産業が成熟し、人口もピークアウトしてきているのに、社会の仕組みも経済政策も、人々のライフスタイルまでも、成熟フェーズを迎える準備が何ひとつできていないのだ。
あと10年で総人口は440万人減る。その中で高齢者は650万人増え、働き手(雇用年齢人口)は770万人減るのだ。その時、日本の国民が安心して暮らしていくためには、社会の仕組みをどのように変えて、どのような政策を実現しなければならないのか? このコラムで明らかにしていく。

⇒ 記事一覧
著者プロフィール

波頭 亮(はとう・りょう)

1957年生まれ。東京大学経済学部(マクロ経済理論及び経営戦略論専攻)を卒業後、マッキンゼー&カンパニー入社。1988年独立、経 営コンサルティング会社XEEDを設立。幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍を続ける一方、明快で斬新なヴィジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目されている。
主な著書に「プロフェッショナルコンサルティング」(冨山和彦氏との共著 東洋経済新報社)、「成熟日本への進路」(筑摩書房刊)、「プロフェッショナル原論」(筑摩書房刊)、「組織設計概論―戦略的組織制度の理論と実際」(産業能率大学出版部刊)、「戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際」(産業能率大学出版部刊)などがある。
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
 重複コメントは全部削除と投稿禁止設定  ずるいアクセスアップ手法は全削除と投稿禁止設定 削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告」をお願いします。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民73掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民73掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧