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家計負債の増大と国民生活を犠牲にした為替安インフレでの経済成長が、そろそろ限界に近付いているのか
単なる踊り場なのかは、今後の世界景気後退での対応ではっきりしそうだ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/21456
韓国経済にウォン安・低金利政策の逆襲
物価高、不動産急騰でも身動きとれず
2011.09.08(木)
玉置 直司
久しぶりに韓国人の知人とソウル市内のなじみの店に冷麺を食べに行って、2人ともため息をついた。1人前の価格が9000ウォン(1円=13ウォン)。サラリーマンの昼食といったら、つい2〜3年前まで5000ウォン以下というのが相場だった。
デフレの日本での生活に慣れてしばらく忘れていたが、モノやサービスの価格はどんどん上がっている。
もう「インフレ」と呼べる物価高
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韓国ではかつて、サラリーマンの昼食と言えば5000ウォン以下が相場だったが・・・〔AFPBB News〕
2011年9月1日に、韓国の統計庁は8月の消費者物価が前年同期比5.3%上昇したと発表した。4月に消費者物価上昇率が前年同期比4.2%になって以来、4カ月連続して4%台の高い伸びを続けてきたが、8月はついに5%台に達してしまった。
ここまでくると、もうインフレと言ってもいいほどの物価高だ。
コーヒー代、タバコ代のほか、スーパーに行くと、野菜、肉、牛乳、飲料、日用品、さらに飲食店の価格が、異常なペースで上昇している。
それだけではない。不動産賃貸価格も急騰を続けている。
韓国では、2011年に入ってからアパート(日本で言うマンション)の売買価格は下落に転じている。ソウル郊外などでは、新規分譲をしても大量の売れ残りが出る例も続出している。交通の便が悪い物件や郊外のニュータウンでは価格が大幅に下がっている例も目につき始めた。
ただ、ソウルで人気の高い地域の価格は高止まったままだ。100平方メートル規模のアパートの価格は10億ウォンを超える物件がざら。富裕層が住む150平方メートル以上の物件になると20億ウォンを超える物件も珍しくない。最近、こうした地域の不動産屋を何件か回って話を聞いたが「2〜3年前から売買価格はほとんど変わらない」という声が多い。
手が届かない不動産、購入をあきらめても賃貸料が高い
あまりに高値で手が出ない層が急増しており、売買に比べて賃貸に回る比率が高まっている。この賃貸料が2011年に入って急騰して、最近社会問題にもなっている。
韓国では毎月家賃を払う方式よりも、2年契約であらかじめ一定の金額を家主に払い、契約が終わると全額を返却してもらう「チョンセ」という方式が一般的だ。この間、居住者は管理費を払うだけで家賃は生じない。家主は、一時金で受け取ったカネを自分で運用するか、別の不動産を買うかして、家賃分を稼ぐ仕組みだ。
金利が高く、不動産がどんどん値上がりする一方で個人融資が受けにくかった時代の名残だが、いまだにこのチョンセが多い。
このチョンセの価格が、今年に入って急騰しているのだ。ソウルの中心の100平方メートル前後のアパートで2年前に3億ウォン前後のチョンセで入居していた住民は、契約満了を機に、いきなり5000万ウォン前後の値上げを通告される例が続出している。
不動産情報会社によると、3.3平方メートル当たりのソウルのアパートの平均チョンセ価格は、2009年の648万ウォンから815万ウォンへと26%も上昇している。
チョンセが急騰している第1の理由は、先に触れたように、不動産売買価格がここ数年で高騰し、庶民層に手が出ない水準に達した上、「ここまで上昇したら不動産価格はもう上がらない」という心理が働いて、売買から賃貸に回る居住者が増えていることだ。
もう1つは、「金利も間違いなく上昇する」と見て、売買を手控える傾向が強まっているためだ。いずれにせよ、売買価格は下がり始めたが、その代わりに賃貸が増えてチョンセ価格が急騰しており、「韓国の不動産価格はいまだに急騰中」と言わざるを得ない。
物価高も不動産高も、直撃を受けるのはもちろん、庶民層だ。チョンセ価格が売買価格の半額以上に高騰しているアパートも多い。大半のチョンセ居住者は、金融機関などから資金を借り入れてチョンセ金に充てている。
李明博大統領は「庶民生活を守る」と言うが・・・
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李明博大統領の対応は後手に回っている感が否めない〔AFPBB News〕
韓国政府も、物価と不動産賃貸料の急騰が、庶民経済に大きな打撃になっていることは、もちろん十分に認識している。李明博(イ・ミョンバク)大統領も、機会あるごとに「庶民生活を守るための物価安定」を最優先課題に掲げてはいる。
しかし、実際の対策となると、後手後手に回っている印象が強い。
韓国の中央銀行である韓国銀行は2011年8月の金融通貨委員会で、基準金利(公定歩合に相当)を3.25%に据え置き、2カ月連続で凍結することを決めた。
物価ががこれほど高騰しているのに、どうして金利が上がらないのか。
突き詰めると、今の物価、不動産高は李明博政権の基本政策の産物とはいえ、これを修正すると、さらにいろいろな副作用が出る恐れがあるからだ。
ではその基本政策とは何か。1つは、日本の製造業者が「韓国企業に競争で勝てない最大の要因」と指摘されるウォン安政策だ。
日本企業泣かせの円高・ウォン安は続く
李明博政権誕生前の2007年の平均レートは、1ドル=930ウォンだった。政権発足とともに、ほぼ一本調子でドルに対してウォン安が進んだ。政権1年目の2008年の平均レートは1120ウォン、2年目の2009年には1276ウォンと「ウォン安」が急速に進んだ。これだけでも40%近い通貨安である。
リーマン・ショック後の2009年3月には、一時、1ドル=1600ウォン近くまで急落した。
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サムスン電子や現代自動車などの輸出企業にとっては、ウォン安は大きな追い風〔AFPBB News〕
対円レートもそうだ。1円=10ウォンという分かりやすい水準が長年続いたが、ここ数年は1円=13〜14ウォンの水準で推移している。
最近になって、対ドルレートでは急激なウォン高が進み、1ドル=1100ウォンを超える水準になってきた。それでも、ドルが他の通貨に対して軒並み急落している中では、ウォンの推移は穏やかだ。
対円レートにいたっては、相変わらずの水準で推移している。日本企業との競争を考えれば、「著しいウォン安が続いている」(日本の電機メーカー幹部)と言える。
ウォン安は、もちろん、サムスン電子や現代自動車など韓国を代表する輸出企業にとっては、大きな追い風だ。
ある韓国の大企業の社長は「1ドル=1000ウォンなら十分黒字を維持できる。ここ数カ月間で、対ドルレートで、円高が急速に進んだことから、ウォン高がこの程度進んでも、日本企業に対する優位性はさらに高まっている」と言う。
韓国政府は「人為的な為替操作などない」との立場で一貫しているが、もちろん、こんな言葉を信じる声は韓国の産業界にもない。
「親大企業政策」を掲げて発足した李明博政権の政策の大きな柱の1つがウォン安による輸出競争力強化だったことは間違いない。
もう1つの基本政策は、低金利政策だ。李明博政権は発足直後にリーマン・ショックに遭遇した。世界同時不況を切る抜けるために、あらゆる手段を動員して、経済成長軌道に乗せることに成功したが、このときの対策の1つが低金利政策だった。
逆回転し始めた「親大企業政策」
低金利によって、企業の資金繰りに余裕ができ、また、不動産価格の上昇など経済成長を牽引する内需拡大にも寄与した。
ところが、いずれもここに来て逆回転し始めたのだ。
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資源を輸入に依存する韓国は、ダブルの値上げ効果に見舞われている〔AFPBB News〕
韓国は、エネルギーは全量輸入に依存している。食料や生活用品の輸入依存度も高く、典型的な「貿易国家」だ。ウォン安は輸出企業には大きな利潤をもたらすが、世界的にエネルギー、食料価格が高騰すると、ウォン安もあって「ダブル値上げ効果」となって跳ね返ってくる。
ならば、ウォン高政策に転換できるのか。韓国経済は、輸出主導の財閥への依存度が高く、雇用情勢などを考えると、これまでの「親大企業政策」を突然転換することなどとてもできない。
低金利政策はもっと深刻だ。金利を上げてウォン高に誘導することが難しいことには触れたが、金利凍結を続けるのはそれだけの理由ではない。
もう1つの大きな爆弾があるからだ。
それは、雪だるま式に拡大を続けた「家計負債問題」だ。
家計負債という大きな爆弾
先に触れた低金利政策もあって、サラリーマンなどは、ここ数年の間に不動産購入に走った。金融機関も融資競争を続け、どんどん貸し込んだ。
2009年末時点で737兆ウォンだった家計負債額は、2011年になって800兆ウォンを超え、6月末には826兆ウォン(販売信用を含めると876兆ウォン)に達した。年内に1000兆ウォンを超えるとの見方も多い。このうちかなりの部分が、不動産向け融資と見られている。
家計負債が急増していることは、国民全体の借金がどんどん増えているということだ。韓国では、元金の返済を据え置き、金利だけを払う住宅ローン商品が一般に広く普及してきた。
首都圏の住宅融資利用者のうち所得が下位20%の場合、融資額が年収の6倍に達しているという統計もある。最近のチョンセ価格の急騰で賃貸のために借金を増やす例も急増している。
韓国銀行が、インフレ気味の物価上昇にもかかわらず、利上げに踏み切れないのは、「借金漬け」になっている国民があまりに多いためだ。
基準金利が3%台にとどまっているため、韓国では銀行の1年物定期預金の金利もほぼ同水準で横ばいになっている。物価上昇率が5%台に達したということは、「マイナス金利」の状態が続いていることになる。
老後資金を銀行に預けても、マイナス金利で目減り
借金をして不動産を購入しても大変だが、預金を安全運用しようとしてもどんどん目減りしていることになる。日本を追いかけるように韓国でも高齢化が急速に進んでいる。大切な老後資金を銀行の定期預金で安全運用しようとしていては、実質的には資金がどんどん目減りすることになってしまっている。
2011年の韓国の夏は、異常なほどの長雨が続いた。政府は8月の物価急騰は「天候異変による野菜価格の急騰など特殊要因によるところが多く、9月以降は落ち着く」と説明している。ただ、秋以降、原油やガスの輸入が増えることから楽観できないという声も強い。
物価安定のために利上げに踏み切るのか。家計負債爆弾に配慮して物価上昇に目をつぶるのか。「親大企業政策」は大きな曲がり角に立っている。
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