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「介護」の値段をもう一度試算せよ 要介護高齢者と子どもの数が逆転する
検証「介護の値段」【2】
プレジデント 2011年1.3号
本人、家族単位での介護費用の見直しはもちろんのこと、国単位で介護のコストを試算しなおす時期だろう。
三浦 愛美=文 小倉 和徳=撮影
キーワード: 介護・福祉 検証「介護の値段」 夫婦・家族 収入・給料 サービス
一般のサラリーマンが安心して入れる
現在のところ、高齢者の住まいは特養と有料老人ホームの独壇場である。しかしいま、そこに新たに参戦し始めているビジネスがある。通称、高専賃と呼 ばれる「高齢者専用賃貸住宅」のことだ。まだまだ勃興したばかりの市場で、業者によって玉石混淆の状態であるが、学研ココファン社長、小早川仁氏の事業へ の決意は固い。
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小早川 仁●学研ココファン社長。1967年、広島県生まれ。90年明治学院大学卒業、学習研究社入社。2004年社内ベンチャーで学研ココファンを設立。08年7月より現職。著書に『「高専賃」事業化ノウハウのすべて』ほか多数。
「これまでの高齢者の住まいには、利用者目線の選択肢があまりにも少なすぎました。交通で例えるならば、安いバスや電車などの公的な交通機関は混み すぎていて利用できず、かといって自家用車を買おうにもお店にはベンツしか売られていない状態。そこに我々はカローラを投入します。これまで空白だった ゾーンを狙う。ごくごく普通のサラリーマン家庭、厚生年金をコツコツと払い続けてきた人々が安心して老後を暮らせる居住空間をつくり上げるのです」
従来、子ども向けの学習教材を中核に据えて事業展開してきた学研グループは、これからの少子高齢社会に向けて介護事業を最重要事業とする方針を定めた。ターゲットは15年後。要介護高齢者と子どもの数が逆転する25年を見据える。
いまから数年ほど前の04年頃、飲食店や出版業界など各方面の会社がこぞって介護事業に乗り出した「有料老人ホーム戦争」の時期があった。雨後の筍 のように増え続ける有料老人ホームは、しかしほとんどが一般人には高価すぎる物件だった。ところが学研はこのレースにはあえて参戦しなかった。
実は紹介した磯野家のシミュレーション(前回の記事参照) は、小早川氏の説明によるものだ。日本の漫画を支えてきたメーンキャラクターは普通の家庭の子どもたちばかり。『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』『ド ラえもん』の主人公たちが年老いたときに幸福な余生を送るためには。その想いから、学研ココファンが展開する高専賃は磯野家や野比家をターゲット層と仮定 している。
「(ちびまる子ちゃんの)花輪くんや(ドラえもんの)スネオくんあたりは、放っておいても入居金2億円くらいの超ゴージャス有料老人ホームに入っ て、『おはようございます、スネオ様』とか言われるようになるからいいんです。不動産屋の花沢さんや小説家の伊佐坂先生も、3000万円クラスのホームに 入れるから大丈夫。問題なのは絶対将来うだつの上がらないサラリーマンになるのが確実なのび太です。善良な一般家庭の彼らが、生まれ育った地域に安心して 住み続けられる商品を開発したい」
そのため、価格帯は比較的手が届きやすく設定している。最低限必要なのは、月々の賃料と光熱費などの共済費、医療面や生活介助等のサービス費のみ。 ココファン日吉を例にすると、月々の賃料7万5000円(約18平方メートル)、共益費2万円、サービス費3万2550円で、合計12万7550円であ る。入居時に高額な一時金はない代わりに、通常の賃貸住宅同様、敷金2ヵ月分がかかる。
住宅はすべてバリアフリー、介護事業所を併設し、地域の医療機関と提携し、住居にクリニックを誘致することで1日24時間365日、何かあればヘル パーやドクターが駆け付ける。食事は希望者ごとに一食から提供し、家族が作った料理も持ちこめる。介護度が高ければ介護型に、介護度が低ければ自立型に夫 婦一緒に住みながら自炊も可能だ。仮に前述のフネさんが回復し、介護度3になれば、いつでも解約して自宅に帰ることもできる。
高専賃と有料老人ホームの大きな違いは前述の契約形態だ。高専賃はあくまで賃貸住宅のため、利用者が購入するのは居住権であり、何かあった場合も借地借家法によって保護されるのである。
学研ココファンはこの手の「自宅感覚の」高専賃を、各地に広げていきたいと考えている。もちろん高専賃が介護の最終にして最高の形態であるとは断言 できない。だが、すべてがパッケージ化されているが故に高額にならざるをえない施設に比べると、本人の必要に応じてサービスをカスタマイズしながら、家族 のいる街で「自分の家」に住むことができる高専賃は、在宅と施設の長所を組み合わせたという点で、強力な選択肢の一つとなりえるだろう。
「介護」の値段をもう一度試算せよ
これから高齢者層として増えるのは団塊の世代である。高度経済成長期を体験してきている彼らは、豊かな日本を知るだけに目も肥えており、多様なライ フスタイルを持っている。プライバシー意識も強く、ある意味「わがままなお年寄り」といえる。09年に学研が行った約3500人から集計した「終の住処に 関する意識調査」では、年老いてから住まいに望むことの第1位に「住み慣れた地域に住み続けたい」が挙がった。次いで第2位に「医療・介護・経済面の安 心」、第3位に「プライバシーへの配慮」、つまり多くの人はハード面での豪華さよりも、ソフト面での安心感を求めているのだ。
小早川氏は、介護市場に民間が参入し、様々なタイプのサービスを提供することで、国の限られた財源を節約することもできると指摘している。現状では本来必要でないサービスに対しても介護保険料がかかっているケースもあるというのだ。
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サラリーマンの行く末は「絶対的不足エリア」 有料老人ホームが乱立したものの、厚生年金受給者(老後の サラリーマン)が受けられる安価で安心な施設が絶対的に不足している。長妻昭厚生労働大臣(当時)が視察するなど、「高専賃」は、注目を集め急伸してい る。さらに着目すべきは、生活保護受給者と国民年金受給者の生活レベルが逆転してしまっていることだ。生活保護者は、薬代もサービスも無料で受けられる。 まじめに働いてきた人のほうが窮屈な生活を強いられる現状の改善が待たれる。
「たとえば要介護度2の田中さんという人がいたとします。学研ココファンの高専賃の場合、介護保険料分として請求するのは平均で約11万9500円 です(本人負担は1割の1万1950円)。それが、有料老人ホームの場合は19万2300円、特養の場合は22万2000円、老人保健施設は25万円、療 養型病床群なら28万円と、同じ田中さんでも3万円ずつ高くなっていきます。これらの金額の1割は本人負担ですが、残りは国民の保険料や国庫の財源から出 ています。
結局、入所系は有料老人ホームに限らず、包括報酬なので『要介護度2の人が入ったら、いくら介護保険が支給される』ということがあらかじめ決まって いるのです。特に中介護度までは個人に応じてもっと介護内容をカスタマイズするよう国が政策指導していけば、いまの少ない財源の中でもやりくりできるは ず」
これまでの老後プランでは、安価な特養は入居に時間がかかりすぎ、有料老人ホームは数千万円の入居金や月々の高額な支払いが必要であった。しかし、 訪問介護サービス、高専賃市場の伸張によって、安価で安心な第3の道がひらけつつある。本人、家族単位での介護費用の見直しはもちろんのこと、国単位で介 護のコストを試算しなおす時期だろう。
※すべて雑誌掲載当時
>>『検証「介護の値段」』の目次はこちらから
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