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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/21431
米国債の利回り低下:不吉な予兆
2011.09.07(水)
米国債の利回りが不吉な動きを見せている。
債券市場の自警団は凶暴だと評判だが、実は非常に寛大になり得ることが分かった。スタンダード・アンド・プアーズ (S&P)が米国の信用格付けを引き下げ、2011年の財政赤字は国内総生産(GDP)の9%に達する見通しだが、米財務省は今も驚くほど安い金利で資金 を借りられる。8月31日には、満期5年以内のすべての米国債の利回りが1%を下回った。
短期債の利回りは、政策金利の見通しに関する予測で動く。米連邦準備理事会(FRB)は今後2年間は現在の超低金利(0〜0.25%)を維持することを約束している。このような低金利は、より長期の債券の利回りも低下させる。
バブル崩壊後の日本国債とそっくり
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こうした状況は非常に日本的に見える。
右図が示す通り、1999年以降の10年物米国債の利回りの動きは、1990年にバブル経済が崩壊してから日本の国債利回りがたどった道のりと驚くほどよく似ている。
大きな問題は、米国債の利回りが、日本国債の利回りと同じように、1〜2%のレンジで落ち着くかどうかだ。
利回りの行方はインフレ見通しに大きく左右される。日本は1990年代半ばに短いデフレ期を経験し、その後は過去10年間ほど、物価がほぼ横ばいで推移するという一貫したパターンが続いている。このため、その間の大部分を通して実質利回りがプラスだった。
対照的に、米国では2009年に突如として一時的なデフレが起きたが、その後は物価が力強く上昇した。消費者物価指数(CPI総合指数)の上昇率 は前年比3.6%となっており、実質利回りは大幅なマイナスだ(物価連動債の実質利回りにも同じことが言える)。そのため、投資家がデフレが近づいている と考えない限り、債券は非常に魅力のない選択肢のように見える。
バークレイズ・キャピタル米国債指数によると、前回、名目利回りが現在の水準近くにあったのは1949年と1950年だ。当時債券を購入した投資家は、1960年代後半までに手持ちの債券の実質価値が半減する
だが、ソシエテ・ジェネラルのストラテジストらの試算では、10年物米国債の適正価格(過去10年間の成長率とインフレ率に基づく)はわずか 2.75%と、現在の水準をそれほど大きく超えないという。このモデルでは、2002年と2008年の方が債券ははるかに過大評価されていたように見え る。
債券市場は、景気後退を予想することにかけては、平均的なエコノミストよりも優れている。FRBの量的緩和プログラム(紙幣を増刷して債券を購入 する緩和策)が6月末に終了し、需要の大きな源泉を市場から取り去ったにもかかわらず、債券利回りは急落している。これは、投資家が経済成長に不安を感じ ている明らかな兆候だ。
景気後退を告げる大きな信号――利回り曲線の逆転(長期債利回りが短期債利回りよりも低くなること)――が表れていないのは確かだ。だが、短期金 利をゼロ近くに据え置くというFRBの政策を考えると、現時点でこのような信号が生じることはあり得ない。そして、この政策そのものが、中央銀行が経済見 通しを極めて憂慮している証しだ。
4つのシナリオ
2007年に債務危機が勃発してから、危機が発展し得るシナリオが4つあることは明白だった。何より期待されたのは、各国経済が成長によって問題 から抜け出すことだった。だが、景気回復の足取りは非常に重く、世界最大級の先進諸国のGDPは今なお2008年の水準を下回っている。
2つ目のルートは、インフレによって債務を減らすことだった。CPI総合指数は、コモディティー(商品)価格のおかげで上昇している。だが、たと え当局がそれを望んでいると仮定しても、当局が1970年のような賃金と物価の連鎖的上昇を生み出せるという兆しはまだ見えない。
投資家を国債の方に向かわせ、実質利回りを長期間にわたってマイナス金利に抑えておく「金融抑圧」の余地はいくらかあるかもしれないが、これは非常にゆっくりと債務を減らす方法だ。
3番目の道は、完全なデフォルト(債務不履行)だった。これは、ギリシャではあり得るかもしれないが、自国通貨で債券を発行できる米国や英国のような国々では、政治的な誤算がない限り、その可能性はなきに等しい。
4番目の可能性は、我々をまた日本の例に引き戻す景気停滞だ。多くの投資家や評論家は過去10年間というもの、日本の債券利回りが急上昇すると予 想して損をした(あるいは面目を失った)。だが、日本の対GDP債務比率は米国や大半の欧州諸国よりはるかに高いにもかかわらず、まだ差し迫った市場崩壊 の兆候は見られない。
日本の投資家は、他の選択肢が瀕死状態の国内の株式市場と不動産市場である場合は、喜んで債券を保有することを証明している。日本の例は、低い債 券利回りがなぜ欧米の株式市場と不動産市場にとって全く朗報でないかをはっきり示している。それどころか、これは恐ろしい凶兆だ。
(英エコノミスト誌 2011年9月3日号)
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