http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/158.html
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構造調整が必要なのは間違いないから、ある程度の空洞化は本来は日本にとってプラスなのだが
国内の規制改革や、投資マインドの委縮を何とかしないと、単に失業率が高くなり、賃金デフレが加速するだけとなる
と言っても政治に期待はできそうもないか
http://diamond.jp/articles/-/13887/votes
【第193回】 2011年9月6日真壁昭夫 [信州大学教授]
これ以上円高が続けば、日本で働く場所がなくなる?廃業覚悟の経営者も出始めた「産業空洞化」の足音
円高で大手製造業の15%が2割以上の減益
コストカットが限界ならもう海外しかない
足もとで急速に進む円高が、わが国企業の収益状況に大きな影響を与えている。
8月下中に行なわれた経済産業省の調査結果を見ると、現在の1ドル=76円近辺の円高水準によって、大手製造業の15%が前年対比20%以上の減益になり、それ以外の61%の企業が20%未満の減益になるという。
さらに、この円高が6ヵ月続くと、同じ大手製造業の32%が20%以上の減益、47%が20%未満の減益に落ち込むと見られる。
それに対して、多くの企業はコスト削減で対応するとの方針を立てているものの、コストの切り詰めには限界があり、今後、海外からの部品調達や、海外の生産拠点拡大を行なわざるを得ない構図が浮き彫りになる。
もともとわが国は、すでに人口減少や少子高齢化が進んでいることを考えると、既存商品に対する需要の大きな伸びは期待しにくい。一方、多くの人口を抱えて、高成長を享受している東アジア諸国では、高い需要の伸びが期待できる。
しかも、それらの国には、安価な賃金水準の豊富な労働力が存在する。企業にとってみれば、海外生産が可能な分野については、海外で生産し、それを需要地に迅速に輸送する方が合理的だ。
しかも、円高・一部のアジア通貨安という要素が追い打ちをかける。そうした状況を考えると、実力のある企業が海外、特にアジア諸国に積極的に事業展開することは当然のことと言える。これからも、わが国企業の海外部門強化の動きは続くことが予想される。
問題は、わが国企業が海外展開を強化すると、国内での雇用機会が減る可能性があることだ。労働集約性の高い“組み立て型の産業”の海外移転が進むと、いずれ国内で、そうした産業分野での働き場所がなくなってしまうことも懸念される。
国内需要の低迷や円高の追い打ちに関しては、大手企業にとっては、為替ヘッジ手法の拡充や海外市場への積極アプローチなど、それなりの選択肢を見つけることができる。
次のページ>> もはや廃業覚悟の中小企業にとって、これ以上の円高は死活問題
しかし、大手企業の下請けや孫請けとしての機能を果たしている中小企業にとっては、対応のための選択肢が数多くあるわけではない。まず、コストを削減し、従業員を減らすことが最も有効な対応策になるだろう。
とはいえ、コストや人員の削減にも限界がある。現在の円高や競合するアジア諸国の台頭などを考えると、多くの産業分野で、そろそろコスト削減などで対応できる範囲を越えつつある。
いずれ廃業を覚悟する経営者も
中小企業にとって海外展開は「死活問題」
都内にある某中小機械部品メーカーの経営者は、「現在の状況は限界を超えている。自分の代で工場を畳むつもりだ」と言っていた。
同氏の工場は従業員7名で機械の部品をつくっている。もう事業を始めてから40年以上になる。かつて、1980年代の全盛期には、いくら断っても仕事が舞いこみ、睡眠時間を削ることもあった。
ところが、90年代初頭、わが国でバブルが弾けた後、大手企業が生産拠点を海外に移すのに呼応して、徐々に仕事の量が減り始めた。そして、今から数年前、大手機械メーカーから海外進出の誘いを受けたのだが、人材や財務体力を考えると、とても海外に出て行って上手くできると思わなかったという。
最近では、国内外の企業から、「技術やノウハウを継承したい」という申し出があるという。同氏の会社には、貴重な“モノ作りの技術”やノウハウが蓄積されている。
しかし3月の大震災、足もとの円高によって、同氏はいずれ事業を廃業する覚悟を決めたようだ。そのため、息子は他の企業に転職させた。この企業が、わが国の中小企業を全て代表しているとは思えないが、現在、わが国で起きていることの一端を示していることは間違いない。
産業の空洞化・雇用機会の海外流出の懸念を抱えているのは、わが国ばかりではない。ある意味では、人件費が相対的に高い主要先進国が共通に持つ課題と言えるだろう。
次のページ>> 快進撃のアップルさえ雇用への寄与は小さいという、欧米企業の現実
米国では、大手企業の業績が堅調な展開を示しているものの、労働市場の回復が遅れ、いまだに失業率が9%を越える水準になっている。この背景の1つに、大手企業の生産拠点の多くが海外に移転していることがある。
欧米企業も抱える「海外流出」への課題
快進撃のアップルさえ雇用への寄与は小さい
たとえば、IT企業の旗手であるアップルだ。アップルは、iPod、iPhone、iPadと立て続けにヒット商品を生み出しているが、実際にそれらの製品を生産しているのは、主に中国の提携企業だ。
アップルは、製品の企画や設計、戦略などを本社で考えるため、米国内でそのための人材は必要になる。企業収益が良くなると、それなりの給与上昇も想定される。
ただし、ヒット商品の部品の調達や組み立てのほとんどは、中国や台湾、韓国などの提携先で行なっている。ということは、ヒット商品が出ても、それをつくるための雇用機会は海外へ出て行っていることになる。これでは、いくらアップルが好調であっても、労働市場改善への寄与はそれほど大きくないかもしれない。
欧州諸国でも、同様の状況が起きる可能性は高いだろう。基本的に欧州諸国でも、給与水準は一部の例外を除き、新興国などと比較して相対的に高い。ということは、ヘッドクオーター=本社機能を残して、生産拠点を海外に設けるケースは多いはずだ。そうした状況を反映してか、一般に欧州諸国の失業率は、相対的に高水準で推移している。
一方、欧州諸国の場合には、国が経済などに関与する部分が大きい。たとえば、労働者寄りの手厚い雇用に関する規制が多く、社会保障などの制度も充実していることが多い。
また、国が若年層などの人材に対して、職業訓練などの機会を積極的に提供するケースも見られる。そうした手厚いセーフティネットを維持するために、重めの負担を国民から拠出してもらう制度になっている。「国民みんなの費用を、国民全体が負担する」という仕組みになっているのだ。
次のページ>> 企業の海外流出を危惧するより、変化への対応力は身につけよ
企業の海外流出を危惧しても意味がない
日本人は変化に対する対応策を持つべき
現在のわが国を取り巻く経済状況を考えると、企業が旺盛な需要の拡大を求めて海外展開を積極化することは、当然の結果だ。それに不満を言っても仕方がない。むしろ、そうしたビジネスチャンスを、最大限有効に生かすことが、わが国経済全体にとって非常に重要なポイントだ。
我々日本国民は、そうした変化に対していくつかの対応策を持っている。まず、企業が海外展開するのであれば、海外で重要な仕事ができる人材になることだ。国内で雇用機会は減少するかもしれないが、企業にとって海外で働ける人材は必要になるからだ。
もう1つ重要なことは、たとえ企業が積極的に海外展開をしても、新技術や新製品の開発機能は国内に残る可能性が高いことだ。前述のアップルでも、そうした機能は米国内に残されている。
むしろ、人件費の高いわが国では、中国やベトナムではできない新しい技術や、新しい製品をつくり出すことが必須の条件になるはずだ。そうした機能を担う人材は必ず必要になる。逆に、新技術の開発ができれば、人件費の高いわが国でも、製造工程を国内に残しておくことは可能だ。
問題は、今まで存在しなかった新しい技術を生み出すために、企業や政府は何ができるのか、そして何をしなければならないのかを、真剣に考えることだ。
大手企業の技術者にヒアリングすると、「新しい発想で新技術を開発するためには、まず経営者自身が既存のしがらみの枠から脱することが重要」という答えが多い。それは口で言うほど容易なことではないが、経営者はそうした自覚を持たなければならない。
政府は、企業が新技術の開発に専念できる環境づくりができるはずだ。人材教育の提供、研究開発に関する税負担の軽減、そして何よりも、「企業は金の卵を産む鶏」という意識を持つことが必要だ。迅速な意識改革が必要だろう。
質問1 円高による「産業の空洞化」は、案外早く始まると思う?
85.9%
思う
7.8%
思わない
6.3%
どちらとも言えない
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