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ユーロ危機の最悪期はまだこれからだ
2011.09.06(火)(2011年9月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ユーロ防衛に89兆円、緊急支援基金を新設へ EU
ユーロ危機の最悪期が訪れるのはまだこれから〔AFPBB News〕
ユーロ圏に関する現時点で最大の不安要素は、危機解決に向けたすべての戦略が、経済がある程度堅調に回復するという前提で立てられている点だ。
ギリシャの救済プログラムは、合意に達した6週間前の時点で既に困難に陥っていた。
公式の予測数値はすべて間違っていた。救済対象のギリシャは不況に陥り、新たに結成されたギリシャ議会の専門家委員会によれば、その債務力学は「制御不能」だという。
一方、イタリアでは中央銀行が、同国の緊縮財政が景気後退効果を持つ可能性に懸念を表明している。
欧州の銀行の資本再編戦略(そう呼びたければ、の話だが)も景気の減速のあおりを受け、ほころびを見せ始めている。先週は、欧州の銀行に必要とされる資本増強額を巡って、国際通貨基金(IMF)とユーロ圏の各国政府の間で激しい議論が交わされた。
経済が再び後退局面へと転じれば、最終的に資本再編に必要な額はIMFの算定値をも大幅に上回る恐れがある。
既に景気後退に陥っている可能性も
今夏に始まった景気の減速は、さらにその勢いを増しているようだ。民間部門への銀行の融資は2カ月連続で減少している。広義のマネーサプライの伸び率は参考値を大幅に下回っている。広く注目されている購買担当者指数(PMI)は、8月に製造業の活動が下降したことを示している。我々の知る限り、ユーロ圏は既に景気後退に陥っているかもしれないのだ。
経済政策を担う欧州当局者にとっての最優先課題は、一にも二にもこの景気減速を食い止め、回復へと転じさせることであるべきだ。これを実現できなければ、ありとあらゆる危機解決プログラムが失敗に終わりかねず、ユーロ危機は最悪の結末を迎える。
残念ながら、現行の経済政策は景気の下降局面を全く想定していない。欧州中央銀行(ECB)は今春以来、金融政策を引き締めている。各国政府が先を争うように緊縮計画を発表する中で、財政政策も引き締めに向かっている。政策立案者は問題を早急に解決するつもりはないように見える。
現在最も大きな介入の余地を持つのがECBである以上、現段階で最も重要な手段となるのは金融政策だ。
ECBに求められる金融緩和
予想インフレ率は低下した。筆者が重視する市場ベースの指標はゼロクーポン・インフレ・スワップで、この指標は現在、インフレ率がECBのインフレ目標を過度に下回ることを示している。ECBはもはや、政策金利の1%以下への引き下げをためらう口実を持たない。目標は、翌日物金利をゼロに近づけるよう誘導することに置くべきだ。
現在の翌日物金利は1%近くに達しているため、超短期金利の引き下げ幅は、実質的に1%に近い数字となる。
ユーロ圏と米国の金利差は、もう少し長めの金利で特に大きく開いている。ユーロ圏の1年物金利は現在2.1%で、米国は0.8%だ。これはかなりの差で、欧州の金融政策はこの縮小に向けて努力しなければならない。こうした政策は、それだけでは景気減速を押しとどめることはできないが、助けにはなる。
加えて、ECBは長期金利についても何らかの行動を取ることを検討すべきだ。ECBが現在実施している証券市場プログラム(SMP)は危機への対応手段として作られたもので、表向きの目的は金融政策を機能させるためとされていた。しかしこの主張を信じた者はいまだかつていない。
それでも、これを本来の目的のために役立てる方法がある。ECBはSMPをマクロ経済安定化プログラムへと衣替えできるはずだ。そのためにはSMPの規模を、現在の1150億ユーロから数倍に大幅拡大する必要がある。この方法は、通常の金融政策が効力を失う流動性の罠に陥るのを防ぐために有効と考えられる。
財政政策は中立に戻せ
財政政策はどうか。 最低限、ユーロ圏内のすべての国が緊縮財政計画を即刻取り下げ、自動安定化装置がフルに効力を発揮できるよう、財政的に中立の立場に戻ることが期待される。
現時点では、このような政策転換は検討課題にすら上がっていない。ユーロ圏では非常にありがちなことだが、各国はまるで自国が世界の周縁に位置する小規模な開放経済であるかのように振る舞っており、自分たちの行動が他国に影響を及ぼすことなど全くないと決めてかかっている。
だが、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドに加え、フランス、スペイン、イタリアの3カ国が同時に財政引き締めに走れば、結果的にはユーロ圏全体が協調して財政緊縮に動いたことになる。確かに一部には財政に問題を抱える国もあるものの、ユーロ圏全体で見れば問題はない。
ユーロ圏の域内総生産(GDP)に対する債務比率は、米国や英国、日本よりも低い。ユーロ圏が数年前に財政同盟に移行していたなら、その財務相は今頃、行動に出る立場に置かれている。
緊縮財政と景気減速が伝染
しかし現実には、各国がばらばらに財政政策を取る現在の制度の下で、緊縮財政措置が次々に伝染し、景気減速も伝染するという流れに陥っている。
財政同盟が存在しない限り、ユーロ圏諸国は、お互いに協調し合う以外の選択肢はない。筆者としては、これを徹底して、ドイツ、オランダ、フィンランドが自らの裁量で財政刺激策を実施し、南欧諸国の緊縮財政を埋め合わせることが望ましいと考える。
重要なのは、ユーロ圏を全体で見た時の財政状態だ。しかし現時点では、不協和音を奏でるユーロ圏各国の政府には、景気の減速がユーロそのものの存続を危うくする脅威だとの認識はほとんどない。
ゆえに景気の減速は無防備なユーロ圏を容赦なく襲うだろうというのが、筆者の見方だ。そうなれば、ユーロ圏の危機は一段と悪化することになる。
By Wolfgang Münchau
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