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「東洋経済オンライン」野口悠紀雄の「震災復興とグローバル経済――日本の選択」 の『(第12回)国力と企業の強さは関係するのか?』から下記を転載投稿します。
・「農業化」した日本の製造業
(日本の)製造業が国の庇護なしには生き延びられない産業になった
・「多くの議論は、国の強さを測るのに誤った指標を用いている」
アメリカ社会はアップルやグーグルを生み出せる「何か」を持っている
・日本の課題を端的に言えば、「アップルのような企業を日本に作る」ということ
「アップルを生み出したアメリカの『何か』とは何なのか」を解明するのは、大変重要
がポイントと思料されます。
=転載開始=
格付け会社によるアメリカ国債への格付け引き下げが、世界的な金融混乱を引き起した。
ただし、影響を受けたのは主として株価と原油価格である。その反面で、アメリカ国債が暴落することはなかった。本当にアメリカの国債が危ないのなら、投資資金が国債から逃避し金利が上昇するはずだ。しかし、実際には金利は低下した(10年国債利回りは、7月下旬には3%程度だったが、8月になってからは2%台だ)。
ヨーロッパでも国債が問題を引き起こしている。アメリカでもヨーロッパでも、経済危機に対して政府が大規模に介入したため、国の財政が悪化したのだ。しかし、財政危機の深刻さは国によって大きな差がある。この点でアメリカとギリシャは明らかに異なる。ここ数年の世界経済の動揺は「ソブリン危機」と呼ばれるが、アメリカが国家破綻の事態に陥っているとは到底思えない。
もちろんアメリカ経済に問題が山積みなのは事実である。失業率は高止まりしたままだし、住宅価格も下げ止まらない。しかし、アメリカのすべてが弱くなっているわけではない。前回述べたように、アメリカには強い産業と企業が存在するのだ。
経済危機後、「アメリカ経済の没落」ということが盛んに言われた。しかし、グラフで見るように、現在のアメリカの株価水準は、リーマンショック前(2008年9月)とほぼ同じだ。金融危機以前(07年7月ごろ)と比べても、8割程度にまで回復している。
(日米株価推移の大きな違いのグラフ 上記URL@にて可覧)
この点が日本との違いである。東証株価指数(TOPIX)は700台だが、これはリーマンショック直前の1200台より約4割低い。07年7月ごろの1700台に比べれば、半分以下の水準でしかないのである。
アメリカの「強い産業」の代表がIT分野であり、その代表企業がアップルやグーグルだ。その2社だけでなく、アメリカのIT関連企業には強い企業がいくつも存在する。
こうした状況を見ていると、国の強さと産業や企業の強さが、あまり関係しないようになったと感じる。「国家と企業の乖離現象」が生じているのである。グローバル化した世界において、これはとりわけ奇異な現象ではないのかもしれない。
アップルやグーグルは、為替レートがどうなっても、大きな影響を受けない。仮に金融引き締めが行われても問題ない。実際、これらの企業が政府に経済対策を要請したという話を聞いたことがない。
●「農業化」した日本の製造業
この状況は、日本の企業と非常に対照的だ。日本の経営者は、日本経済が悪化するのは政府に成長戦略がないからだと言う。企業業績が低迷するのは円高のためであり、日本の法人税率が高いためであり、TPP(環太平洋経済連携協定)が進展しないためであるという。
こうしたことが言われるのは、日本の企業が政府の施策に依存するようになったからだ。1990年代の後半以降、日本の製造業は一貫して円安を求めた。それによって国際的な価格競争力を高め、輸出を増大させることを願ったのである。内需が減少するので、活路は外需に求めるしかないと考えられたのだ。
政府はその要求に応えて、金融緩和・円安政策を行った。小泉政権下の03年には大規模な為替介入が行われ、経済政策のバイアスは非常に顕著になった。しかし、この路線は経済危機によって破綻した。
経済危機後は、製造業に対して、より直接的な政府支援が行われた。まず雇用調整助成金によって、企業が抱える過剰労働者に対する手当が支給された。これは、輸出の急減によって生産削減に追い込まれた自動車メーカーを主たる対象として行われた施策だ。申請件数で愛知県が突出していることが、それを示している。
さらに、政府による直接的な購入助成策(エコカー減税)が行われた。製造業の製品に対してこのような露骨な補助がなされたのは、戦後の日本で初めてのことである。
こうした直接的援助が行われるようになったのは、製造業が国の庇護なしには生き延びられない産業になったことを意味する。政府による特定産業延命策は、戦後の日本において農業に対して行われてきた政策だ。いまや、製造業がそのようになった。だから、右に述べたのは、「製造業の農業化」としか言いようのない事態である。
日本の政治が著しく弱体化し、経済政策が混乱しているのは事実である。しかし、それだけでなく、産業が衰弱したことが問題なのである。
この状態は、高度成長期に比べて顕著な差だ。1950年代、日本銀行の一万田尚登総裁が「ぺんぺん草を生やしてみせる」として反対したにもかかわらず、川崎製鉄の西山弥太郎社長が千葉製鉄所の建設を強行したエピソードは有名だ。また、60年代、「特進法」によって産業統制を強化しようとする通商産業省に対して、石坂泰三が率いる経団連が反対した。このとき日本の製造業は強く、政府の干渉に対して反発する必要があったのである。
国に依存するか、国の干渉から自由でありたいと考えるか。この二つには甚大な違いがある。自由主義は、強い産業がなければありえないものであることを痛感する。
●アップルを生んだのはいったい何なのか?
「強い産業は国の強さと無関係」と述べたが、これには注釈が必要だ。
第一に、いかなる産業といえども、政府の存在と無関係ではありえない。基本的な社会秩序と社会的インフラなしには経済活動は行えないからだ。したがって、満足な社会基盤がない国に強い企業は生まれない。これは当然のことである。
第二に、アップルやグーグルのような企業は、さまざまな国にランダムに生まれているわけではない。実際、(誠に残念なことに)日本には生まれていない。日本のメーカーは、アップルが発明したスマートフォンを模倣するだけだ。これらの企業はアメリカで生み出されたのである。
つまり、アメリカ社会はアップルやグーグルを生み出せる「何か」を持っているということになる。この意味において、強い産業と国家は無関係ではないのだ。
問題は、「アメリカ社会が持っている『何か』とは具体的には何なのか」ということだ。
一般には、国の強さを表す指標として失業率や国債の格付けが、あるいは通貨の強さが用いられる。最初に見たように、これらの指標でアメリカは決して強い国ではない。「アメリカの没落」とは、これらの指標で見た場合に、アメリカが弱くなっているということである。
つまり、先に「国の強さと企業の強さがあまり関係しなくなったように見える」と言ったのは、実は不正確な表現だ。正確に言えば、「多くの議論は、国の強さを測るのに誤った指標を用いている」ということなのである。
日本の課題を端的に言えば、「アップルのような企業を日本に作る」ということである。そうだとすれば、「アップルを生み出したアメリカの『何か』とは何なのか」を解明するのは、大変重要なことだ。
=転載終了=
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