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株式日記と経済展望
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中国は海外の技術を習得し、いいとこ取りで技術を上げ政府から膨大な
補助金をせしめて競争力をたかめ、その蓄積で輸出商戦に打って出る。
2011年9月3日 土曜日
◆宮崎正弘の国際ニュース・早読み(太陽光発電でも世界一となった中国) 9月3日
http://melma.com/backnumber_45206_5277891/
米国の太陽光パネル産業は破滅的打撃、すでに大手四社が倒産
世界一の太陽光発電をめざす中国は欣喜雀躍、世界市場に覇権か
太陽光パネル産業の育成は米国のエネルギー省が推奨し、オバマ政権は破天荒の予算をつけた。作業は順調に離陸する筈だった。
ところが米国の太陽光パネル製造業大手三社が倒産、もしくは会社更生法の申請という、想定外の事態に陥った。
次世代エネルギーは太陽光? こんな筈ではなかったと歯ぎしりしても遅い。
米国の太陽光パネル製造業の大頓挫を目撃して、明日にも提灯行列でもやりかねないほどの欣喜雀躍は中国である。
世界一の太陽光パネルの製造王国となって世界市場の席巻を開始した。
詳しく追跡してみよう。
米国政府は5億2700万ドルを太陽光パネル製造業のソリンドラ社に資金援助した(開発予算の貸し付け)。
太陽光技術で斯界に評判の高かったソリンドラ社(カリフォルニア州)にオバマ政権は肩入れしたのだ。
つぶれかけのクライスラーを時の政府はテコ入れし、あるいはGMをテコ入れして再生させたように、ソリンドラ社は、これで立ち直る予定だった。米エネルギー省は全体で24億ドルの次世代エネルギー開発予算を分配しており、その四分の一近くを注ぎ込んだわけだから、このソリンドラ社の倒産は政治問題化する可能性が高い。
げんにクリフォード・ステアンズ(フロリダ州、共和党)連邦下院議員は「納税者の貴重なカネを無駄にした」として議会で厳しく追及する構えだ。
予定は狂い、同社は工場を閉鎖した。オバマ大統領は同社を見学したこともあるが、倒産理由は「需要がおちこみ、世界的価格競争がはげしくて。。。」。
個人投資家は政府支援のプロジェクトと聞いて安心して、10億ドルを投資した。同社従業員およそ1000名は解雇された。株主らは代表訴訟を起こすだろう。
▲奇抜なデザインと熱吸収の効率がコスト高に繋がった?
米政府はしきりに弁明する。
「競合するドイツと中国の政府補助金が膨大であり、とても開発競争に勝てない」と。
しかし業界筋は言う。「あの会社の太陽光パネルはデザインが奇抜で、市場への適合性がすくない金食い虫である」。
共和党の矛先は、同社の社長がオバマ選挙への献金者であり、政治コネの臭いがすると、スキャンダルの側面からも批判を開始した。
米のスペクトラワット社(NY州)とエバーグリン・ソラー社(マサチュウセッツ州)も、同様な理由により8月に会社更生法の適用を申請した。2010年春には、第四位のBPソラー社(メリーランド州)も倒産している(ヘラルドトリビューン、9月2日付け)。
ということは米国における太陽光パネル製造業界は、壊滅状態とは言わないまでも相当の後れを取ったことは事実である。
他方、中国は、発電量においても米国の1000万ギガワットに比較しても飛躍的躍進をみせて、11000ギガワット、パネルメーカーは中国政府の膨大は補助金をいれて、開発製造の余念がなく、その質において劣悪な実態はさておき、日米欧の太陽光パネルとコスト競争では圧倒的優位に立つ。
中国の太陽光パネルの三大メーカーはサンテック・パワー、インリ・グリーン・エネルギー社、トリナ・ソラー社である。それぞれは決算で利益を申告している。
労働力の安さがカバーしての競争力ではなく太陽光パネルはハイテクであり、中国は大量生産により75%のコストダウンに成功したと胸を張るが、パネル設置者(個人、法人を問わず)に中国政府が補助金をつけて設備の拡大を奨励するうえ、広大な土地は党と地方政府の命令一つで巨大設備の設営が可能である。
▲中国の遣り方は公正とは言えない
太陽光の電力料金も特別措置を施すなどして国家あげての事業の一つとしている。この点では風力発電への異常な肩入れと似ている。つまり、こうした政府補助金はWTOルール違反である。
六月に米国からWTOに提訴された風力発電の補助金問題は、中国が敗訴して補助金をやめるとしたばかり。
米国は「中国は不当競争」としてWTOに提訴の構えも崩してない。
いずれにしても、酷似するパターンは海外の技術を習得し、いいとこ取りで技術を上げ政府から膨大な補助金をせしめて競争力をたかめ、その蓄積で輸出商戦に打って出るというポイント。
つまり新幹線プロジェクトや風力発電の遣り方と同様なのである。
(私のコメント)
アメリカの太陽電池パネルメーカーが次々と潰れているようですが、中国が太陽電池パネルで主導権をとって来ています。少しぐらい性能が良くても中国製の安い製品が出回ってきて負けてしまう。半導体にしても大型液晶パネルにしてもDRAMにしても携帯電話にしても、技術開発で実用化レベルになると、韓国や中国のメーカーが大規模な設備投資をして市場をかっさらって行ってしまう。
製造装置ごとセットで生産設備を導入して世界に売り出すから、日本やアメリカのメーカーは価格競争で負けてしまう。しかしその製造装置を輸出しているのは日本やアメリカの製造装置メーカーであり、そこから製造技術ごとコピーされてしまう。リチウムイオン電池にしても日本が開発しても、技術は技術者の引抜などで漏れていしまう。
韓国や中国は技術開発を先進国から導入して、最先端の技術で大量生産して市場を席巻してしまう。その為に液晶パネルもDRAMも太陽電池パネルも価格が暴落して、日本の負けパターンが定着してしまった。日本などは製造装置や主要部品や原材料などの輸出で潤っていますが、欧米先進国は製造業の空洞化でドル安とユーロ安が止まらない。それに対して円が高くなる一方だ。
「株式日記」では、東日本大震災で製造がストップして、電力危機で天然ガスなどの輸入が増えて貿易赤字が定着すると見ていましたが、5月ごろは31年ぶりの貿易赤字となりましたが、8月には生産が回復して貿易黒字が回復した。1ドル76円もの円高水準でも黒字を出すのは不思議でなりませんが、製造装置や原材料の輸出は価格にさほど左右されないのでしょう。
中国は共産党と地方政府がベンチャーメーカーに補助金を融資して大規模工場を立ち上げれば、地方政府には税金が入り労働者の雇用も増えていい事尽くめだから、瞬く間に世界中に中国製品が溢れることになる。液晶パネルもDRAMも太陽電池パネルも携帯電話も、性能よりも価格の安さが切り札になり、故障しても製品を交換すればいいだけの話であり、性能は決定的な要素ではない。
パソコンもこのような価格競争に巻き込まれて、アメリカのパソコンメーカーも次々と撤退している。HPもIBMについでパソコンを手放すようですが、5万円以下で最高性能のノートパソコンが買えるのではメーカーはとても儲からないだろう。例外はアップルですが、アイフォーンもアイパッドも中国で作られている。その中身の部品は日本製が使われているから、黒字になるのだろう。
東日本大震災で東北の工場が被災してサプライチェーンがストップしましたが、そのおかげで中国や韓国やアメリカの製造業がストップしてしまった。東北の一部の工場が止まっただけで世界の製造業がストップしたのは、日本がサプライチェーンの根幹になっているからであり、日本製の半導体が無ければ自動車の生産も止まってしまう。
しかしテレビなどでは、円高で自動車メーカーも家電メーカーも町工場にいたるまで円高で大変だと言うニュースばかり流している。確かに中国との価格競争に晒されているところは大変だ。太陽電池パネルも日本のお家芸でしたが、世界的な競争において中国の低価格攻勢には太刀打ちできない。自由貿易の恩恵を中国が一番受けていますが、為替を低く固定化して競争力を維持している。
アメリカのオバマ大統領は、国内の製造業を復活させるとしていましたが、中国の低価格攻勢で太陽光パネルのメーカーが次々倒産している。それにも拘らずオバマ大統領は、中国を為替操作国指定を見送っていますが、これでは失業者は減らずに増える一方になるだろう。中国はアメリカに失業を輸出しているのだ。このようにアメリカの経済政策は支離滅裂なので良くなるわけがない。
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