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最近は、どこでも通貨と金の話が多いな
彼の場合、新興国バブルは弾けず、悪性スタグになるという読みか
http://diamond.jp/articles/-/13783?
【第192回】 2011年8月30日
著者・コラム紹介バックナンバー
真壁昭夫 [信州大学教授]
金価格の高騰が暗示する「世界通貨制度の崩壊」政治はスタグフレーションの脅威を払拭できるか
金の価格が上昇しているのではない
ドルの価値が著しく下落しているのだ
「金の価格が上昇しているのではない。通貨、特にドルの価値が下落しているのだ」
これは、あるヘッジファンド関係者の言葉だが、そこには一端の真理が含まれている。
金は、はるか昔から東西を問わず、誰でも手に入れたいものである。誰でも欲しがるということは、その価値が極めて安定していることを意味する。かつて、金本位制の時期、発行されるおカネ=通貨の価値を裏打ちするために、通貨は金との交換が保障されていた。金といつでも交換できるため、その価値が安定していたのである。
今から40年前の1971年8月15日、米国のニクソン大統領は、ドル紙幣の金との交換を停止した。それが“ニクソンショック”だ。それ以降、世界の通貨の中心である基軸通貨=米ドルは金の裏付けを失って、米国に対する信用力だけが頼りになった。つまり、ドルが金から離れて、1人で歩くようになったのである。
一方、金の価格は、通常ドルで表示されている。ドルの価値が下落すると、金の価値が変わらないとすると、当然、ドル表示の価格は上がることになる。最近、起きている金価格の上昇は、ドルの価値下落の裏返しとも言える。
その金が、足もとで一段と騰勢を強めている。今から約2年前の2009年8月後半、ニューヨークの取引所の金価格は1オンス(31.10グラム)が1000ドル程度だった。その金価格は、すでに1800ドルを超え、一時1900ドルを超える局面のあったほどだ。
その背景には、世界の人々がドルに対する信認を失い始めているため、ドルを売って金に乗り換える動きが鮮明化していることがある。そうした状況が続くと、今後、基軸通貨であるドルを中心とした世界の通貨の仕組みが、根本から崩壊する可能性も出てくる。その可能性を、過小評価すべきではない。
金とドルを切り離したニクソンショック
永遠の欲求対象物である「金」の影響力
人間の歴史の中で、金にまつわるストリーに事欠くことはない。黄金を欲しがり犯罪に走る人、あるいは金のために殺人まで犯してしまうケース、さらには金塊を積んで難破した船を探すトレジャーハンターの物語など、それこそ枚挙に暇がない。
何故それほど、我々の周りに金に関連する物語が多いのだろうか。おそらく人々が、黄金色に輝く金に対してとても強い関心を持っているからだろう。
金は、人間にとって永遠の欲求対象物と言えるかもしれない。だからこそ、人々の金に対する需要は常に安定している。需要が常に安定しているということは、その価値がほとんど普遍的と言える。
かつて、金融当局が発行する紙幣の価値を安定させるため、紙幣を金と交換することができる制度を考案した。金との交換性を保証することで、ただの“紙切れ”である貨幣の価値を安定させた。
また、世界的に通貨と金との交換性が保障されていると、海外の通貨との交換レートも金を中心に計算できるため、為替レートが安定するメリットもあった。
しかし、貨幣と金との交換性を維持するためには、当該国が貨幣との交換に耐えるだけの金の量を保有することが必要になる。そこには問題がある。金の産出量は相対的に少なく、しかも、世界中に流通する金の量もそれほど多くはない。短期間に金の保有量を大きく増やすことは難しい。
たとえば経済が拡大すると、それぞれの経済主体が取引などのために必要になる貨幣の量も増加することになる。当該国の経済拡大のペースが速い場合には、貨幣供給がそのペースに追い付かず、結果的に経済を阻害してしまったり、経済力の低下などの理由で金が海外に流出してしまうデメリットも考えられる。
こうした背景から、“ニクソンショック”によって、金と貨幣とのつながりが切断される恰好になった。
リーマンショックで金価格高騰は恒常化
金価格上昇の背景に見える「投機的な要素」
“ニクソンショック”によって、一般的に貨幣は金から離れて、発行主体である国の信用力をバックにして独り歩きすることになった。実際には、金に代わって、基軸通貨であるドルを中心にして、世界の通貨制度が組み立てられることになったのだ。
各国の通貨は、基本的に対ドルでの交換レートが示され、ドルを挟んでユーロ対円、オーストラリアドル対ブラジルレアルなどの交換レートが算定されることになった。この通貨制度は、ドルの価値が安定している時期には相対的に上手くワークした。
ところが、71年の“ニクソンショック”、73年の完全変動相場制への移行を経て、基軸通貨であるドルの不安定性に悩まされる結果となった。
特に、ドル・円のレートは71年当時の1ドル=360円の固定相場制が崩壊した以降、ほぼ一貫してドル下落・円上昇のプロセスを辿ってきた。ドル下落が鮮明化するたびに、わが国の輸出企業などが大きな痛手を被ることになった。
そして、90年代の“ITバブル”、2000年代前半の“不動産バブル”を経て、08年9月に発生した“リーマンショック”による米国経済の低迷が顕在化するに伴って、ドルの下落は一段と鮮明化することになった。
それが、最近起きている「基軸通貨であるドルの下落が続くのであれば、いまのうちに価値が安定した金に乗り換えるべき」との動きにつながった。
もちろん、そうした実需だけで、金価格がこれほど急上昇しているわけではないだろう。金価格の上昇に目を付けた投機筋、特に欧米系のヘッジファンドなどは、ここ数年、金の先物を大量に買い上げていると言われている。そうしたオペレーションが、足もとの金価格の高騰を加速していると考えられる。
基軸通貨になれないユーロや人民元
景気低迷とインフレのダブルパンチも
確かに、“リーマンショック”以降、ドル下落が鮮明化しているものの、すぐにドルに代わる基軸通貨の役割を果たせる通貨は見当たらない。一時期、準基軸通貨の1つと見られたユーロは、EU内のソブリンリスクの高まりもあって、短期間で信認を取り戻すことは考えにくい。
また、政策当局の厳しい管理下に置かれている中国の人民元は、その性格上、国際通貨になるまでにはまだ時間を要する。さらに、国際化が遅れている円には、基軸通貨になることなどとても無理だ。
一方、通貨制度の安定性を取り戻すために、金を中心とした金融システムに回帰するという選択肢は理論的に可能だろうが、これだけ世界経済の規模が大きくなった現在、すぐに金を中心に据えた仕組みを作り上げることはあまり現実的ではない。
そうした状況を考えると、現在のようにドルを中心に据えた仕組みに頼らざるを得ないと見る。
ただし、ドルが不安定な展開を続ける間、それぞれの通貨間での調整が必要になるはずだ。具体的には、ドルが減価する場合には、円や人民元などの通貨が上昇することが必要になるだろう。
結果的には、そうした個別の通貨間の調整で時間を稼ぎながら、米国経済の復調を待つことになる可能性が高いと考える。
問題は、米国経済の低迷が長期化するケースだ。米国経済が低迷している間は金利が上昇しないこともあり、ドルが反転するきっかけをつかむことは難しい。それに加えて、中国など新興国の経済成長もあり、穀物や資源などの価格は上昇し易い状況が続く。
その結果、主要先進国では、景気の低迷が続くと同時にインフレが本格化する懸念が高まる。つまり、スタグフレーションが現実味を帯びてくるのである。
主要国の政治は、スタグフレーションが本格化する前に、景気回復を優先する適切な政策を打つことが必要だ。経済認識や政策判断を誤ると、大恐慌時のような経済の落ち込みを余儀なくされることも考えられる。
質問1 金の価格が上がることは、世界経済にとってよいことだと思う?
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思わない
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どちらとも言えない
11.8%
思う
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