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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/20526?page=3
FRB議長が逃したチャンス 病んだ米国にはQE3のショック療法が必要
2011.08.30(火)
Financial Times
(2011年8月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
FRB議長「金融市場の混乱は収まっていない」
ベン・バーナンキFRB議長は注目の講演で、QE3を支持する発言は一切しなかった〔AFPBB News〕
米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長は本紙(英フィナンシャル・タイムズ)を読んでいるのかもしれない。
先週、コロンビア大学のマイケル・ウッドフォード教授と、資産運用会社ピムコのモハメド・エラリアン氏が本紙に寄稿し、ワイオミング州ジャクソンホールでの待望の講演で3回目の資産購入――いわゆる量的緩和第3弾(QE3)――を提案しないようバーナンキ議長に求めた。
バーナンキ議長は(この点については)両氏のアドバイスに従った。議長は26日、世界の中央銀行の幹部らが年に1度集まるこのワイオミング州での会合で、FRBとしてはあらゆる選択肢を残しておくと述べたが、QE3を支持する発言は一切行わなかった。
QE3を実施するより何もしない方が本当に良いのか?
これは残念なことだ。バーナンキ議長も同感なのではないかと筆者は考えている。改訂された経済指標は、米国の景気回復が従来考えられていた以上に緩慢であることを示しており、新たな金融緩和策が必要になっているからだ。
問題は、追加的な緩和策に異を唱える連邦公開市場委員会(FOMC)委員たちを、バーナンキ議長が説得しなければならないことだ。また政治的な抵抗も強まっていることから、議長はこの政策を国民に説明しなければならない。FRBの現在の使命の下では、この緩和策を説明するのは容易ではない。
尊敬を集めている2人の懐疑論者が本紙への寄稿で追加的な量的緩和に反対したのはなぜなのだろうか?
ウッドフォード教授の論点は主に2つある。1つは、控えめな規模で実施するならQE3は需要をほとんど刺激しないというもの。もう1つは、QE3を実施すれば「将来の政策目標をもっと明らかにせよという要求をFRBがかわす」ことが可能になり、メリットよりもデメリットの方が大きくなる恐れがあるというものだ。
第1の点には簡単に反論できる。控えめではない規模で追加的な量的緩和を行えばいい。第2の点も簡単に反論できる。先週のバーナンキ議長の講演ではQE3が打ち出されなかったが、FRBの政策が明確にされることもなかったのだ。
明快な政策決定の枠組みに経済を安定させる力が備わっていることを強調するウッドフォード教授の議論は正しい。しかし、教授自身の分析で量的緩和にはFRBの目標に関する情報を発信する作用があるというのであれば、QE3よりも何もしないことの方が良いと本当に言えるのだろうか?
FRBに求められる新たな政策の枠組み
FRBが政策を遂行する理由をはっきり説明できるなら、それに越したことはないだろう。だが残念なことに、FRBが行動の指針にしていると言われている非公開のインフレ目標は、必要とされている新しい景気刺激策を簡単には正当化してくれない。
FRBが行動を起こすには、これとは異なる根拠が必要だ。ウッドフォード教授は、物価水準に目標を設定することを提唱している。筆者は2週間前のコラムで論じた理由から、名目の国内総生産(GDP)の目標を定める方が良いと考えている。現時点では、どちらも同じ方向の政策を支持する形になっている。
ところがウッドフォード教授は、このあたりの政治的な関係を正反対に捉えてしまっている。QE3を実行に移せば、FRBは要求をかわすどころか、政策目標を変更してその旨を公表せよという圧力にさらされることになるだろう。当然ながら、これゆえにQE3は非常に扱いにくい政策となっている。
FRBにしてみれば、資産を購入すること自体、ばつの悪い話だ。しかし、インフレ率を一時的に上昇させることがFRBの今の政策だと説明することに比べれば、それほどでもないだろう(物価水準の目標設定と名目GDPの目標設定には、これを容認する意味合いがある)。
ここはFRBが歯を食いしばり、適切な政策目標を採用してその達成に最適な策を講じるのが理想だろう。しかし、新しい政策の枠組みが明かされるまでは(永遠に明かされない可能性もある)、景気刺激策を全く講じないよりは、根拠を示さずにQE3を実行する方がましだ。
治療法の効果が薄れたら・・・
世界最大級の債券投資会社のCEO(最高経営責任者)であるエラリアン氏は、別の理由から反対している。
同氏によれば、1年前と比べると、FRBの行動の自由が少なくなっている。インフレ率が上昇し、雇用創出の構造的な障害が大きくなり、外部環境が悪化し、FRB自身が攻撃の的になり、金融市場は「FRBのショック療法に以前ほど敏感に反応しない」と言う。言い換えると、どれだけ量的緩和を行っても効果は以前より小さい、というのだ。
ある治療法の効果が薄れた時は、別の治療法に切り替えてもいい。だが、代替療法がなければ、元の治療法で投与量を増やすはずだ。
確かに、インフレ率――特に中期的な予想インフレ率――が大幅に上昇すれば、追加の量的緩和に不利に働くだろう。
FRBはインフレ高進の兆候はないと考えている。バーナンキ議長はジャクソンホールで「我々は今後数四半期でインフレ率が2%以下、あるいはそれより多少低い水準で落ち着くと見ている。(FOMCのメンバーの)大半が(物価の安定と最大限の雇用促進という)2つの使命と一致すると考えている水準だ」と述べた。
エラリアン氏が「構造的な障害」と言った時に長期的な成長見通しが暗くなったことを意味していたのだとすれば、ここにも一理ある。というのも、成長が鈍れば、やはり量的緩和の活用には注意を要するからだ(恒久的に弱体化した経済は、総需要の目標が低くなることを意味する)。
だが、2009年春以降、米国の長期的な国内総生産(GDP)成長率に関するFRBの予想は低下していない。2年前の予想が2.5〜2.7%だったのに対し、今夏は2.5〜2.8%だ。
例えば住宅市場などには回復を妨げる一時的な障害が存在し、こうした障害は別々に対処すべきだという点で、エラリアン氏は正しい。だが、失業率が高止まりすると、より永続的なダメージと長期的な低成長が後に続くと指摘するバーナンキ議長も同じように正しい。このことは、エラリアン氏の主張に反し、循環的な景気回復を支える熱意を抑えるのではなく高めるべきだと訴えている。
米議会に説教しても正味利益はゼロ
エラリアン氏はバーナンキ議長に対し、「国民的な政策論争を見直し、来月のオバマ大統領の重要な経済スピーチの前座」としての役目を果たすよう呼びかけた。バーナンキ議長は最善を尽くし、過去に数え切れないほどの場で繰り返してきたように、より良い財政政策――赤字抑制に対する短期的な注意、長期的な税制・歳出改革、就労、貯蓄、資本蓄積に対するより良いインセンティブなど――の必要性を強調した。
量的緩和は「正味利益が疑わしい」政策だとエラリアン氏は言う。量的緩和の代わりに、バーナンキ議長が議会に説教し、オバマ大統領のために聴衆を沸かせることの正味利益が疑わしくないということには筆者も同意する。絶対の自信を持ってゼロだと言えるからだ。
By Clive Crook
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