http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/893.html
Tweet |
賃料上昇は日本でもバブル崩壊後の東京でも生じたが
頭金が住宅価格の3割強制などといったことはないし
借主保護が強いから、商業用を除き、3割値上なんてことはまずなかった。
米国も住宅実需への融資緩和が、もう少し進めば、
都市近郊住宅から価格の反転が始まりそうだ
http://jp.wsj.com/US/node_293890
【津山恵子のアメリカ最新事情】景気不安でも、NY賃貸料は上昇の不思議
2011年 8月 24日 9:46 JST
「大家から家賃を3割値上げすると言われて、安いところに引っ越した」
この夏、ニューヨークではこんな話をよく聞いた。ウォール街では大手金融機関の人員削減が相次ぎ、賃金も上がらず、景気の「二番底」に対する懸念が高まっているにもかかわらず、ニューヨークの賃貸物件は値上がりが続いている。
7、8月は例年、賃貸市場で最も動きが激しいシーズンだ。9月から始まる新学期に向けて、大学への新入生がアパート探しに殺到する。しかし、今年はそれだけでなく、以前からニューヨークに住む市民も、市内で物件を探しまわり、引っ越しのトラックが目立った。私自身もそんな住民の一人になった。
「こんな忙しさはここ2年で初めて。毎日夜中まで働いて、土日も休みなしにお客さんを下見に案内している。不景気だというけれど、ニューヨークは例外よ」
と、私が最初に物件紹介を頼んだブローカーのジーナ。彼女は2年前まで、フロリダ州に住み、米銀大手バンク・オブ・アメリカから、差し押さえ物件の販売を委託されていた。住宅バブルが崩壊し、信用が低い世帯向けのサブプライムローンの債務不履行の増加が、世界的な金融危機につながった直後のことだ。
「当時は、差し押さえで自分の家を失う家族に会う物件が10軒もある毎日が続いて、悲しくて、肉体的にも精神的にも疲れきってしまった」
とジーナ。彼女の体調を懸念した母親が、 ニューヨークへの転職を勧め、ジーナは中堅不動産会社のブローカーになった。
ニューヨークで初めて経験する「賃貸ブーム」に、ジーナは興奮気味だった。
「少し前までは賃貸の動きも悪かったけれど、今の活況は景気のせいもある。頭金を用意できなくて住宅を購入できない家族が、値ごろな賃貸を探して引っ越しをするから」
ジーナによると、サブプライムローンの焦げ付きから教訓を得た住宅ローン会社は今では、頭金を住宅価格の3割は用意していないと、ローンを組ませないようになった。従って、頭金を用意できない家族は、住宅購入をあきらめて、賃貸を探しまわることになる。
賃貸に人気が集まったことで、今年の「引っ越しシーズン」は、大家が強気の値上げに踏み切った。賃貸契約は通常1年か2年の期間で、その度に賃貸料の更新がある。個人の大家や管理会社が任意に賃貸料を設定できる物件では、賃貸ブームを追い風に、前出の「3割」という値上げまで起きた。そこで、私も含めて、もう少し長く住もうと思っていた住人も、値上げに耐えきれず、一斉に引っ越しに動き始めたわけだ。
米紙ニューヨーク・ポストによると、ニューヨーク・マンハッタンの賃貸の空室率(ことし4-6月)は、2002年以来最低の0.72%。一方で、「スタジオ」という間取りが一部屋のアパートの賃貸料で平均値上げ率は9.1%、家族向けの「3ベッドルーム」は11.3%と、物価上昇率をはるかに超える水準だ。
当然、値ごろ感のある物件は、あっという間に借り手がついてしまう。ジーナは私と下見をするごとに、すぐに決断を下すように強引に勧めた。
「こんな手頃な物件はあと10分もしたら、借り手がついてしまうかもしれないのよ。どうして、これが気に入らないのか分からないわ」
しかし、彼女がみせてくれた物件は3軒も続けて、通りか中庭に面したアパートの1階。押し入り強盗の危険性が高い位置だ。4軒目の間取りを見せてもらうと、真西に向いていたため、愛想が尽きて、他のブローカーに切り替えた。
二人目のブローカーで、やっと気に入った物件を見つけて、借りる手続きに入った。まず、苦労したのが雇用主に相当する人の書簡を用意することだ。その書簡で、借り主の年収が家賃の40倍を超えていると保証できなければ、アパート管理会社が賃貸契約を承諾してくれない可能性がある。40倍以上なければ、「保証人」をたてることになるが、その保証人は家賃の80倍以上の年収という高所得が義務づけられる。
もちろん、これだけの年収があることを証明できないため、賃貸申し込みをあきらめざるを得ず、値上げを迫られても、身動きがとれないでいる友人も多くいる。
私の場合は、年収が家賃の40倍を割り込んだが、前のアパートの管理会社から「支払いの遅延はなかった」という書簡を出してもらい、7月初旬の週末、契約書類のサインが実現した。
サインに先立ち、敷金の小切手を作りに、銀行の窓口に行った。銀行員が、小切手を用意しながら、笑顔でこう言ったのには驚いた。
「賃貸契約、おめでとう!」
新しいアパートを契約すると、友人だけでなく、話を聞いた郵便配達人やスターバックスの店員まで「おめでとう!」と口をそろえる。ブローカーにその話を伝えると、こう言った。
「この街で、自分が気に入ったアパートを借りられるというのは、実はすごくラッキーなことなんです」
とはいえ、1年もすれば契約更新がやってくる。1年後の景気がどうなるか、そして賃貸市場がどういう状況にあるのか、一抹の不安がある。1年たって、路頭に迷うことになっていなければいいが・・・。
*****************
津山恵子(つやま・けいこ) フリージャーナリスト
tsuyama_300.jpg_image_Col3wide_image_Col3wide
東京生まれ。共同通信社経済部記者として、通信、ハイテク、メディア業界を中心に取材。2003年、ビジネスニュース特派員として、ニューヨーク勤務。 06年、ニューヨークを拠点にフリーランスに転向。08年米大統領選挙で、オバマ大統領候補を予備選挙から大統領就任まで取材し、AERAに執筆した。米国の経済、政治について「AERA」「週刊ダイヤモンド」「文藝春秋」などに執筆。著書に「カナダ・デジタル不思議大国の秘密」(現代書館、カナダ首相出版賞審査員特別賞受賞)など。
米国一覧へ
関連記事
【津山恵子のアメリカ最新事情】2012年大統領選挙に向け始まった「政治的空白」
2011年 8月 17日
【津山恵子のアメリカ最新事情】格下げで混乱の週末、沈黙を続けたホワイトハウス
2011年 8月 10日
【津山恵子のアメリカ最新事情】著名エコノミストが憂う政策担当者の近視眼
2011年 8月 3日
津山恵子のアメリカ最新事情 一覧
2011年 8月 24日
WSJ日本版コラム一覧
2011年 8月 26日
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。