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弾けなかったバブルは、ほとんどないが
例外的に軟着陸できると信じている人々は、いつの場合でも常にいる
中国の場合、日本同様、対外債務は小さいので、世界金融恐慌型ではなく、内需急減と失業増大、そして地方財政・国有銀行破綻タイプの不況になる可能性が高い
そして日本や資源国など国外からの輸入が大幅に減少するパスを通して世界景気を減速させるのだろう
http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/china-research/topics/2011/no-149.html
主席研究員 柯 隆
中国経済は年率10%前後の成長を続けている。インフレが高騰しているが、政府は適度な金融緩和の維持(胡錦濤国家主席)と政策の姿勢を変えていない。インフレを抑制するために、金融引締は必要だが、中国経済を取り巻く外部環境が急速に悪化しているため、思い切った引き締めができない。そのなかで、中国の地方債務問題は急浮上している。
中国債務の現状
中国の債務問題について、まず、対外債務をみると、危険な状況にない。中国政府が発表している対外債務統計によると、2010年末現在、対外債務残高は5,489億ドルであり、GDP比の債務比率は9.3%程度である。そのうえ、中国政府が保有する外貨準備は3兆ドル2,000億ドルに上るため、対外債務のデフォルトの可能性がほとんどない。
中国経済は確かに10%前後の成長を続けており、その成長の原動力は主に設備投資とインフラ関連の投資である。しかし、毎年の巨額の投資資金は主に中国国内でファイナンスされている。というのは、家計の貯蓄率は30%に上り、政府部門と企業セクターの留保分を算入すれば、国全体の貯蓄率は50%に達する。
一方、中国政府はここ数年、景気を下支えするために、毎年多額の国債を発行している。ただし、中国のGDPは約40兆元(約500兆円)であるのに対して、国債残高は6兆元未満であり、債務比率は2割未満である(参考:日本の債務比率は220%、アメリカは90%)。中国の国債の引き受けをみると、国内の金融機関と一般家計がほとんどであり、外国の金融機関や投資家による引き受けはほとんどない。右肩上がりの中国経済のトレンドを考えても、国債償還が難しくなり債務危機に発展することはほとんど考えられない。
地方債務膨らむ制度的背景
ここで心配されているのは、地方政府債務のデフォルトの可能性である。しかし、制度的に、中国では地方政府が起債することができないことになっているが、地方債務危機はまったくの杞憂ではないはずだ。
今年、国家審計署(会計検査院)は地方債務の調査結果を発表したが、その金額は10兆7,000億元に上る。しかし、それを地方債務のすべてとみる者はほとんどいない。
振り返れば、1995年広東省国際信託投資公司(GITIC)の倒産を受けて、中国政府は地方政府による起債および地方政府帰属の企業の借り入れの保証をすべて禁止した。今回の調査で地方政府が中央政府の規定に違反して直接借り入れた債務は6兆7,000億元に上るほか、保証責任のある債務は2兆3,370億元もあった。
なぜ地方政府はこれほどまで債務を積み上げたのだろうか。
地方政府の財源をみると、94年の分税制改革以降、地方税と定められている「営業税」、「都市建設税」と「個人所得税」などが大きなウェイトを占めている。そして、中央政府から地方政府への交付税も地方政府にとって重要な財源になっている。問題は、制度上地方政府の起債が禁止されているため、多くの地方政府にとり都市再開発の財源の確保が難しくなっていることである。
地方政府は地下鉄を整備したり、空港ターミナルを建設したりする必要がある。大規模の都市再開発を推し進めるために、中央政府は都市部の土地使用権(定期借地権)の払い下げの売り上げを地方政府に帰属させた。本来ならば、地方政府の建設予算需要と土地使用権の払い下げの売り上げは概ね均衡するものと思われるが、どこの地方も実力以上の都市再開発を進めるために、より大きなインフラ施設を整備しようとする。
その結果、多くの大都市では、地下鉄を整備し運用するための地下鉄会社が設立された。日本の営団地下鉄のようなものである。また、空港ターミナルを建設し運営するための会社も設立されている。これら地方政府に帰属している国有企業は地方政府が直接・間接資本参加して運営され、国有銀行から大量の資金を借り入れている。
今回の債務調査で明らかになっている地方債務残高は10兆7,000億元だが、金融機関の融資残高の76兆元に比べれば、それほど大きなウェイトではない。既存の地方債務は全部デフォルトするとは考えにくいので、債務危機が直ちに勃発するという心配はないと思われる。問題は、地方債務のうち、80%以上は国有銀行からの借り入れであり、地方債務がデフォルトになれば、金融システムの安定性が脅かされる恐れがある。さらに、地方政府は起債する権限がないが、すでに判明している債務のほかに、隠れ債務が増える可能性が高い。
結論的に地方債務はすぐに債務危機に発展しないかもしれないが、デフォルトの潜在リスクが常に存在している。今後、経済政策の動向により地方政府債務のデフォルト問題が急浮上してくる可能性がある。債務問題が危機に発展するのを未然に防ぐために、その内容を明らかにして、地方政府として債務のスリム化に取り組むことが求められている。
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