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財政政策なしの量的緩和だけでは、一時的な円安や株高を演出して投機家を喜ばせ
輸出系の中小企業の延命(雇用維持)には多少貢献することはできるが、
持続的な景気(国内投資・雇用)拡大効果はほとんどない
ただ円預金や国債を保有している長期投資家にとっては、財政拡大よりも、その方がまだ害は少ないか
http://jp.reuters.com/articlePrint?articleId=JPJAPAN-22889420110826
インタビュー:円高対策で金融政策に工夫余地=武藤・大和総研理事長
2011年 08月 26日 19:05 JST
[東京 26日 ロイター] 財務事務次官と日銀副総裁を務めた武藤敏郎・大和総研理事長は26日、ロイターのインタビューに応じ、現在の円高は日本のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に基づいておらず、さらに円高が進行すれば「断固たる介入が正当化される」と述べた。
円高の一因である日米金利差の縮小を食い止めるため、日銀には資産買い入れ基金の拡大や、リスク性資産への傾斜、資産の年限長期化による長期金利引き下げなど、金融政策面でさまざまな工夫の余地がある、と強調した。
インタビューの詳細は以下のとおり。
──現状の日本経済の見通しは。
「われわれ(大和総研)としては、東日本大震災直後マイナス成長と予測していた2011年度の日本経済成長を、現在ゼロ成長、横ばいとみている。一方2012年度については、3%台中ごろ程度とみていた震災直後の予想を、このたび2.6%成長に下方修正した」
──2011年度上方修正と12年度下方修正の理由は。
「サプライチェーン寸断で、2011年度の自動車生産台数は、震災直後は100万台減少するとみていたが、20万台程度の減少にとどまりそうだ。一方、原子力発電所の全面停止リスクがある。今年6月の浜岡原発停止後、原発に対する政府の姿勢が厳しくなり、来年5月には全54基のうち1基も動かない状態が懸念されている。欧米経済がここに来て予想した以上に停滞感が強くなっており、日本の輸出が伸び悩む可能性がある。欧米経済が停滞している間に円高基調が続くと、日本経済に悪影響を及ぼす」
「震災による消費者マインドの悪化も懸念される。4─6月国内総生産(GDP)も、消費に停滞感があり、全体を押し下げている。風評被害など原発がらみの消費者マインドへの影響や、電力不足による節約、旅行の手控えなど、震災そのものによる影響がある可能性もある」
──震災からの復興需要の見通しは。
「震災直後は、阪神淡路大震災の経験から、復興需要が秋口から順調に立ち上がり、11年度に何らかのプラスの影響を与え、12年度は復興需要でかなり上振れする可能性が高いとみた。しかし、被災地の復興計画の立案そのものが遅れており、11年度第3次補正予算の執行時期も不透明。復興需要の本格的なスタートは来年1─3月ぐらいになる可能性がある。12年度には復興需要の本格化がスタートするだろうが、想定よりも盛り上がらないかもしれないことが心配の種。被災地の復興計画そのものが、なかなか現地で進ちょくしていない実態がある。海岸線の防潮堤については、まだ現地の結論が出ていない。10メートル以上の高い防潮堤を作り、あらゆる津波に対応するのか、津波から逃げ高台に家を作るのか、どちらの思想を取るかという状況がある」
──海外経済のリスク要因は。
「しばらく前の米国ではバーナンキFRB(連邦準備理事会)議長などが、経済減速はガソリン価格上昇やサプライチェーン寸断による一時的減速で、秋口には回復軌道に回帰するとの見方だった。最近の経済データは若干の長期低迷を示唆するようなものが出てきている。雇用状況も改善しておらず、消費者マインドも決して活発ではない。裏には家計のバランスシート調整問題がある。バランスシート調整は、リーマン・ショックが発生した2008年から2─3年で済む問題ではない。10年かかるとは断言できないが、かなりまだ時間がかかる」
「欧州は金融システムそのものの透明性が、日米と比べ高くない。中国も、先週末北京に行ってきたが、インフレが心配。当局発表では6%以上、食料は14%以上。実態はもっと高いとのうわさもある。インフレをコントロールできないリスクがある」
──円高の要因は。
「現在の円高の原因が、日本経済のファンダメンタルズが強いことによるものでないのは明らか。もっぱらマーケットでグローバルな資金が相対的に安全な資産を求める投資行動から来る円高で、オーバーシュートするリスクがかなり高い。このような場合は断固たる介入が正統化される。前回の介入は単独介入になったが、欧米が単独介入を非難することは全くないと思う。協調介入はしてくれなかったが、単独介入は認められている」
──考えられる対応策は。
「介入でいったん押し戻すことには成功したが、介入の効果は一時的なものにとどまる。介入で円安に誘導していくことはできない。対応策のひとつは金融政策。今、内外金利差が円高とパラレルに動くという事実があるので、内外金利差の縮小を食い止める必要がある。日米の金利差は縮小しており、FRBが2013年半ばまで緩和する時間軸を設定したので、簡単に米国の金利が上昇するとは考えられない。日本の金利はゼロバウンドにあるので非常に厳しい状態。残された手段は量的緩和」
──金融政策で何が可能か。
「金融政策に負荷がかかっているのは日本だけではなく、米国でも同様。金融政策をもう少し活用できないかという視点が必要だと思う。もはや限界、という姿勢を見せるのは市場に失望を与える。日銀は8月の金融政策決定会合で資産買い入れ基金を10兆円拡大したとおり、まだ政策対応の余地がある。金額だけでなく、中身についても対応余地がある。リスク性資産により傾斜するとか、保有資産の長期化で長期金利に直接影響を及ぼし、ポートフォリオ・リバランスによる長期金利への働きかけで日米金利差に影響を与えることはできると思う」
──復興財源をめぐり日銀に国債引き受けを求める声が政界などにある。
「国債引き受けは論外。かえって信認を失う。しかし、市場からの国債買いオペレーションを拡充することは可能。長期国債の保有残高を日銀券(お札)の発行残高以下にとどめる日銀券ルールは、長期的にはそれでよいが、少しでも上回ってはいけないというのはいかがなものか。何年かでならしてその範囲に入っていればよいのではないか」
「民主党の代表戦候補者で、全面的に復興税を否定する方はいないのではないか。風邪をひいているのに水浴びしては肺炎になるということで、(増税は)時期を見計らおうということではないか」
「万が一財政規律を軽んじる対応をすると、今すぐでなくても債券安、国債金利高という市場のアタックを受ける恐れがかなりある」
(ロイターニュース 竹本能文、木原麗花;編集 山川薫)
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