http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/861.html
Tweet |
http://www.nikkei.com/news/print-article/g=96958A9C9F819499E0E7E2E29A8DE0E7E2EAE0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;bf=0;R_FLG=1
ジム・ロジャーズ氏「待ちに待った金価格調整局面到来」
上海の取引所における証拠金引き上げに端を発した金投機マネーの手じまい売りだ。ドカ雪の如く積もった先物買い残高が表層雪崩を起こし、金価格は1750ドル台まで急落した。更に、日本時間今朝にNYの取引所も証拠金引き上げ第2弾を発表した。5000ドルから7000ドルへ22%の引き上げである。
シンガポール滞在中の日経商品面記事で、ニューヨーク商品取引所(COMEX)は11日の取引終了後、金の証拠金を22%引き上げた。過熱感の強まりで一段の引き上げに動くとの見方がある。「値が飛びやすい状況にあるため、調整が入れば下落幅も大きくなる可能性がある」という筆者のコメントが引用されたが、まさに、その状況が生じつつある。
今回の下げは、ドカ雪の如く積もった金先物投機買い残高の表層雪崩だろう。これで金のバブルっぽい部分が一掃されよう。その意味で表題のように「金バブル崩壊の引き金を引いた」わけだ。
今朝、ジム・ロジャーズ氏からメールが届いた。
A much needed correction for gold is now underway as I suggested yesterday so this will be good for all of us who own gold.
必要とされる調整局面が進行中だ。昨日話したように、金保有者には良いことだ。(筆者注、一本調子で上げ続けるより、調整を繰り返しつつ下値を切り上げる展開が望ましいという意味)
さて、ここが大事なことなのだが、金市場には、とてもバブルとは言えない長期保有型のマネーも流入している。単なる「リスク回避の逃避マネー」ではない。
例を挙げよう。
1、中央銀行による外貨準備としての金購入。中国、インド、ロシア、韓国、タイ、メキシコ、ボリビアなど新興国中心にドルから金への分散が進行中だ。90年代は欧州各国の中央銀行が大量に外貨準備の金を売却してドルにシフトした。その結果、1999年には金価格が250ドルまで沈んでいる。その公的部門が今や買い手に転じた意味は重い。これをバブルとはとても言えない。
2、新興国の個人投資家による金現物買い。いまやインド、中国の2カ国で世界の年間金生産量の6割以上を買い占める。インドの需要の中核はブライダル。文字通り、持参「金」としての金宝飾品だ。中国では金地金の上に“福”の文字が刻まれ、金貨のパッケージには“財神”と印刷されている。要は“金運の神様”。めったなことで売るはずもない。これも非バブル的部分である。ただし、上海には金先物取引所もあり、ここではバブルっぽい売買が繰り返されている。今回、証拠金引き上げが実施された所である。
3、欧米年金や大学基金などの金ETF金現物買い。テキサス大学基金が20トン相当の金を先物で買い現受けした例が典型だが、ミズーリ州などの州職員の年金基金も金ETF購入を増やしている。これらも長期運用なのでバブルとは言えない。
これら長期保有のための買いには共通の特徴がある。モメンタム(上昇の勢い)に乗って買ってはこない。まずは静観する。そしてファンド筋が売り手じまいに入った頃合いを見計らって、粛々と買いを入れるのだ。リーマン・ショック直後、大量解約に迫られたヘッジファンドが換金売りに走り金価格が急落した時も、一巡したところで買い始めたのが長期保有者たちであった。今回も下がったところで中国から大量の金現物買いが入るのは必至。下値は新興国が支える構図だ。
金はバブルかの議論が盛んだが、バブルと非バブルが共存している市場なのだ。筆者はスキーフリークなので雪の例えが多いのだが、バブルの買いは新雪で、雪崩を起こしやすい。しかし非バブルの買いは根雪のごとく積もる。その境界線が需給均衡点ともいえるのだが、市場はオーバーシュート、アンダーシュートを繰り返しつつ徐々に均衡点に収束してゆく。今はまさにその過程なのだ。
そもそも長期価格上昇トレンドが10年以上続いている。これは市場に上記のような構造的変化が生じ、経済学的にいえば、需要曲線が右上にシフトして、新たな供給曲線との接点を模索しているケースである。
筆者のツイッターアカウントjefftoshimaには6000人ほどの若手中心のフォロアーがいるのだが、上がればそれゆけ、下がればパニックというつぶやきが多い。金はバブルなのか、これで終わりか、との質問には「構造的要因が複合的に作用し、長期上昇トレンドにいささかの変化もない」と答えている。
なお、構造的要因の詳細については本欄アーカイブに保存されている8月3日付「金1650ドル突破 7つの理由と下げのシナリオ」を参照されたい。
豊島逸夫(としま・いつお)
ワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて貴金属ディーラーとなる。同行で南アフリカやロシアなどから金を買い、アジアや中近東の実需家に金を売る仲介業務に従事。さらにニューヨーク金市場にフロアトレーダーとして派遣され、金取引の現場経験を積む。その後東京金市場の創設期に参画。ディーラー引退後、WGCに移り、非営利法人の立場から金の調査研究、啓蒙活動に従事。金の第一人者であり、素人にもわかりやすく金相場の話を説く。
日経BP社から6月21日、ムック本『豊島逸夫が読み解く金&世界経済』が発売されました。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。