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韓国を羨む人はあまりいないとは思うが
通貨安、高学歴でも失業、過酷な競争、超少子高齢化と老後破綻など
日本の未来を既に先取りしつつある
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110823/222211/?ST=print
日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>日本と韓国の交差点
頼る貯金も年金も子供もないまま、不安な老後を過ごす不安
「100歳まで生きるなんて生き地獄でしかない」
2011年8月24日 水曜日
趙 章恩
韓国独自の不動産制度に「チョンセ」がある。毎月家賃を払うのではなく、まとまった金額の保証金を大家さんに渡し2年間その家に住む。家を出るときには保証金をそのまま返してもらえる。大家さんは保証金を銀行に預けその利子が家賃代わりになる。チョンセの保証金は不動産価格の2分の1から3分の2ほどである。
新婚夫婦は銀行から融資を受け、それを保証金にしてチョンセで家を借りる。2年間共働きして貯金を増やし、借金を返し、もっと広い家をチョンセで借りる。チョンセを繰り返すのと併行して貯金をため、マイホームを購入する。不動産価格が値上がりすれば売却し、不動産価格のさらなる値上がりが見込める地域にまた家を買う。これを繰り返すことで中流層は家を持ち、財産を増やすことができた。
ソウルの不動産価格は高い。その要因はいろいろ――駅から近い、漢江が見える、緑が多い――が、何よりも重要なのは教育環境である。ソウル大学への進学率が高い高校の周辺のマンション、風水で子供が出世するとされているソウル中心部のカンナム、ハンナムといった地域のマンションやビラほど高い。
中学と高校は、自宅から遠い学校でも申し込めるので、必ずしも進学校の周辺に住む必要はない。だが、学校の近くに住めば子供の移動時間を短縮でき、その間も勉強できることから、進学校の周辺はいつでも不動産価格が高く、チョンセの保証金も高い。
金利の低下が家賃負担の増加をもたらす
不動産価格が暴落していることから、韓国の人々は家を買うことを恐れ、マイホームを購入するより負担の少ないチョンセで住み続けようとする傾向が強くなった。
しかし大家さんは、ウォルセでしか家を貸さない、もしくは、チョンセの保証金を大幅に上げるようになった。金利が低下し、利子で家賃を賄うことが難しくなってきたからである。20年前まで、銀行の定期預金の金利は20%近くあった。だが、10年ほど前から6〜8%に落ち込み、ここ数年は3〜4%にまで落ち込んでいる。
毎日経済新聞の8月19日付け記事によると、光州市の場合、2011年4月時点でウォルセがチョンセを逆転し、それぞれ69%、31%になった。一方、銀行から借金をして高いチョンセ保証金を準備する家庭もよくみかけるようになった。高校生の子供がいると、「引っ越しで転校し環境が変わると、受験勉強に身が入らないのではないか」と心配になるからだ。
一方で「チョンセ大乱」も始まった。会社はソウルなのに、地下鉄で1時間30分以上離れた京畿道や仁川市に引っ越すのだ。借りる人からすると、ウォルセは毎月まとまったお金が家賃として出ていくので、貯金をするのが難しくなる。このため家賃の高いソウルを離れる決断を下す。
住む家が見つからないことほど惨めなことはない。筆者はまだマイホームを持たずチョンセで家を借りている。なので、契約期間が終わる11月が来るのが怖い。ただでさえ物価が高騰しているのに、これに家賃の負担まで重くなると、生活は苦しくなるばかりだ。老後のことを考えると背筋がぞっとする。
韓国の生活の質は39カ国中27位
国の予算を担当する企画財政部は2011年8月、政府系シンクタンクである韓国開発研究院に依頼して、国連や世界銀行が発表しているデータを分析した「韓国国家競争力分析体系開発報告書」を作成させた。これによると、韓国人の生活の質は2008年、39ヵ国の中で27位(2000年も同位)であった。生活の質は、保健医療費の多寡や病院の接近性、犯罪率や自殺率、失業率、老齢雇用率、貧困率などを総合して評価した。
この報告書によると、2008年生活の質が最も高い国はフランス。2位がデンマーク、3位がオーストリア、4位がチェコ、5位がスウェーデン。日本は19位、米は26位であった。
韓国は2008年、失業率や老齢雇用率などで評価する経済的安全指標において、39ヵ国中で29位であった(2000年も同位)。貧困率の高さは39ヵ国の中で24位(順位が高いほど、貧しい人が多い2000年は19位)。寿命だけは2000の年25位から2008年の20位に上昇した。
韓国の人々の幸せに関する感覚を示す調査はほかにもある。韓国保健社会研究院が2011年8月に実施した「平均寿命100歳時代を迎える国民意識」だ。対象は全国30〜69歳の男女1000人。このうち「100歳まで生きることは幸せな人生である」と答えた人は28.7%しかいなかった。
100歳まで生きるのが幸せな人生ではないと答えた理由は、「老年期が長すぎるから」が38.3%で最多。以下に「病気・貧困・疎外などが怖い」(30.6%)、「子供の荷物になりたくない」(24.1%)が続く。「希望する寿命」は「80〜89歳」が59.3%、「70〜79歳」が20.9%だった。年齢に関係なく「健康な限り働き続けたい」と答えた人は32.0%、「65〜69歳まで働きたい」という人は32.5%だった。
この調査結果を報道したニュースに対して、こんなコメントをする人がとても多かった。「就職するのも大変。就職したとしても老後のための貯蓄をする余裕がない。老後の年金も期待できないのに寿命ばかり延びることに恐怖を感じる」「よほどの金持ちでもない限り100歳まで生きるなんて生き地獄でしかない」。
また、OECDが2011年5月発表した調査結果では、青少年の主観的幸福指数を調べたところ、韓国の青少年の幸福指数が23カ国の中で最も低かった。2009年から3年連続で最下位を記録している。主観的幸福指数は個人が主観的に感じる「健康」「学校生活満足度」「生活の満足度」「所属感」「周辺状況適応」「寂しさ」の6つの項目を数値化したものである。韓国青少年は幸せになるために必要なものとして、低学年ほど「家族」、高学年になるほど「お金」と答えている。
子供たちは海外を目指し、韓国には戻らない
子供の頃から幸せを感じられないと、韓国ではなく他の国に住みたくなるのだろうか。2009年に海外留学した学生の数は、OECD30カ国の中で韓国が最も多い。
韓国の文部省である教育科学技術部や科学技術企画評価院の調査によると、大学・修士・博士課程で海外に留学する学生の数は、2004年には15万人だったものが2009年には18万人に増えている。米国で博士号を取ったあと韓国に帰国する人は、1998年には44.1%だったが2007年には26.3%に減った。科学技術企画評価院の調査によると、2010年末時点で韓国内で働いている理工系の博士9万7000人のうち、8.4%に当たる8100人が国外に移住する可能性が高い、というデータもある。英才教育院や科学高校といった理工学部の人材を養成する教育機関の学生80%が海外留学を希望しているというデータもあった。
韓国は教育熱心な国である。教育が不動産価格を左右する。子供の教育にお金をかける余り、自分の老後資金を準備する余裕がない。それでも、子供は大学を出ても就職できない。海外留学に行っては韓国に戻らない。韓国に残っている親は、頼る貯金も年金も子供もないまま、不安な老後を過ごすことになる。以前にも書いたが、韓国の高齢者の貧困問題は、儒教の考えではどうにもならないほど深刻である。
韓国銀行によると、韓国の家計負債は2011年4〜6月の間867兆ウォン(約65兆円)と史上最高を記録している。年末には900兆ウォン(約70兆円)を超えると見込まれている。負債の増加は、チョンセ保証金が高くなったり、ウォルセが増えたりしたせいだ、との分析がある。867兆ウォンを人口5000万人で割ると、国民1人当たり、約1734万ウォンの借金を背負っている計算になる。国民1人当たりの所得(GNI)は2010年時点で2200万ウォンなので、家計負債の規模が相当大きいことが分かる。
韓国は米国EUとFTAを進め、ビジネスしやすい環境をつくろうとしている。サムスンやLGといった企業が世界市場で活躍している。海外から見ると韓国はとても勢いよく成長を続けている国と見られることが多い。ところが、筆者からすると、自分の国だからか、直してほしいところ、ここを変えれば韓国はもっと良い国になれるのに、といったことばかり目につく。
韓国人の生活の質を高めるには、そして、韓国に住むのが幸せと思えるようになるためには何が必要なのだろうか。子供の教育にかけるお金を、老後のために貯蓄できるようにすれば生活の質は高まるだろうか。長生きしないで早く死ぬ方が幸せだろうか。中流層から下に落ちないように生きるためには、どうすればいいのか。悩みは深まるばかりである。
このコラムについて
日本と韓国の交差点
韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?
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著者プロフィール
趙 章恩(チョウ・チャンウン)
研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。現在は東京大学社会情報学修士。ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)がある。
「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送っています。日韓両国で生活した経験を生かし、日韓の社会事情を比較解説する講師として、また韓国のさまざまな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです」。
「韓国はいつも活気に溢れ、競争が激しい社会。なので変化も速く、2〜3カ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をすると『なんだかきつそうな国〜』と思われがちですが、世話好きな人が多い。電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多いのです。マンションに住んでいても、おいしいものが手に入れば『おすそ分けするのが当たり前』の人情の国です。みなさん、遊びに来てください!」。
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